実際には高学歴・高所得層もそれなりにトランプを支持していたというデータはあるようなのだけど、やはりこれまで民主党の安定した地盤だった州をトランプが取ったのは大きい。ということで、いわゆる「ラストベルト」と呼ばれる一帯やアパラチア山脈地方を中心に、トランプ支持者の話を聞き歩いたルポルタージュ。
基本的には、ここで登場するトランプ支持者の多くは、没落した、あるいは没落の予感に脅えるミドルクラスという位置付けなのだけど、う~ん、「しょうもないことを言ってやがるなぁ」というのが正直な感想。
というのは、彼らが懐かしむ「良かった頃のアメリカ」の話を読むと、おいおいふざけんなよ、と思うわけです。
その頃、他の世界はどうだったのか。その繁栄は、他の誰かを搾取していたからこそ、実現できていたものではないのか。世界の数十億人が、当時のアメリカの何分の一かでも豊かになりたいと思ったら、アメリカがそれまでのような繁栄を享受できなくなるのは当然ではないのか(まぁ実際には配分が偏っているだけでアメリカ自体は繁栄を続けているはずなのだが)。中国やメキシコが彼らの仕事を奪ったと言うが、では、同じような仕事をしている中国やメキシコの労働者と立場を入れ替えてみる気になるか(彼らの方が今でもはるかに不利な環境に置かれている)。
……みたいな考えは、彼らの頭には(たぶん)浮かばない。
とはいえ、それを理由に彼らを責めるわけにもいかない。
この本を読んでいて暗澹とした気分になるのは、彼らが期待を寄せるトランプがその期待に応えられないときに(具体策がないだけに、応えるのはたぶん無理だろう)、では誰が(あるいは何が)彼らの希望になるだろうか、という問いに答えが見つからないからだ。