月別アーカイブ: 2015年3月

新版 荒れ野の40年 ヴァイツゼッカー大統領ドイツ終戦40周年記念演説 (岩波ブックレット): リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー, 永井 清彦

去る1月に亡くなった元ドイツ大統領の有名な演説。今の日本の政治家とは比べものにならないほど、言葉が重い。もっぱら「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります」という一節だけが取り沙汰されるけど、他にも唸らされる部分がたくさんある。

そして、当該の一節をはじめわりと手放しに称賛されるこの演説だけど、もちろん複雑な(苦い)背景を踏まえたものだし、ドイツ国内では賛否が分かれたという状況をうまく伝えている訳者解説も素晴らしい。

しかし「荒れ野の40年」というタイトルをつけたのはこの訳者なのか。ドイツでこのタイトルを言うときょとんとされるそうだが(笑)、それにしても良い部分をタイトルに選んだものだと思う。これもまた、(旧約)聖書から取られた言葉。

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ぼくたちが聖書について知りたかったこと (小学館文庫): 池澤 夏樹

3月14日読了。イスラームお勉強の続きで、つい、これも。対談形式で読みやすいのだけど、何だか双方が分かっていることを「これはこうですよね、ああですよね」みたいに確認しているだけという雰囲気があって(内容的には全然そんなことはないのだけど)、今ひとつわくわくしない。井筒本は「講演」であって、筆者の識見をひたすら伝える形なのに、知らないところにぐいぐい連れて行かれる高揚感があった。

とはいえ、「あ、やっぱり聖書を読みたいな」と思わせるのは確かなので、悪い本ではない。四福音書は何度か読んだけど、他はあんまり知らないしなぁ。

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「昔はよかった」と言うけれど: 戦前のマナー・モラルから考える: 大倉 幸宏

3月15日読了。公共空間でのマナー、子供のしつけ、職業的な倫理、児童虐待や高齢者虐待、などなど。モラル低下が言われるこの国の昨今だけど、実は今の方がだいぶマシ、という結論。結局のところ明治維新~戦前の日本は西洋文明を摂取しても文化までは輸入しなかったという点と、衣食足りて……的な点なのだろうなぁという印象なのだが、「今の方がだいぶマシ」という状態に至ったのはもっぱら後者の要因が大きいように思う。というわけで、いろいろ気持ちの余裕がなくなってきてまた地金が出てきているのではないかと。

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偽善のすすめ: 10代からの倫理学講座 (14歳の世渡り術): パオロ・マッツァリーノ

著者のブログの最近の記事にあった「以前から私は、偽善はべつに悪くないと主張し、偽善者になれと勧めてきました。偽善者は、動機がどんなに不純でも、結果的にだれかを救っているからです」という主張を、中学生くらいを対象に丁寧に展開した本。中学生向けということですらすら読めるし得るところは多いと思うので、お勧め。キリスト教の扱いがあっさりしすぎているのは物足りないけど、さすがにここに踏み込むと紙数がいくらあっても足りなくなるのだろう。

ちなみに区立図書館で「偽善のすすめ」で検索をかけたら、この本と丸山真男著作集の二冊がヒットしたので両方借りてみて、丸山真男の同タイトルのエッセイを先に読んでみたら、やはり本書でもそのエッセイは引用されていた。

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わたしたちに許された特別な時間の終わり (新潮文庫): 岡田 利規

う~ん、悪くはない。でも自分にとってこれが特別というほどの印象もない……。感想になっていないな(笑) 著者はある劇団の主宰者らしいのだけど、先に読んだ川上弘美の小説が何だかすごく自分のなかの演劇欲(?)をかきたてるのに対して(やらないけどね)、この小説を読んでも、この著者の芝居を観に行こうという気にはあまりならなかったなぁ。いや、小説としては悪くないと思うんだけど。

 

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真鶴 (文春文庫): 川上 弘美

静かだけどテンションの高い文体。なんだかすごく演劇的というか。静かでテンションが高いというと平田オリザとかそっち方面になるのだけど、ちょっと舞台にしてみたくなる小説。でもさすがに難しいか。

これも高橋源一郎の本で紹介されていて気になった本。『先生の鞄』とかも読んでみようかな。しかしこの後はやはり高橋源一郎つながりで岡田利規へ。

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