第三作。
引き続き面白いのだけど、やや物足りないのは、こちらにもあちらにも内通者がいるわけでもなく、敵味方がはっきり分かれすぎていて、向こうの剣客を一人ずつ倒していくだけの展開になっているせいかもしれない。
ところで、第一作で面白い役どころを演じて、きっと続編でも意外な登場を見せてくれるに違いないと思っていた「おりん」さんはどうしてしまったのだろう。
と、復活を期待しつつ、最終編へ。
Twitter(現X)で著者の投稿を見かけて手に取った。
大学受験で身につけた「英文解釈」から、実践的な英語の読みにつなげていく感じの本、と言えるだろうか。「to不定詞」とか「分詞構文」とか、そういう40年くらい前に目にしていた文法用語も頻出する。
例文の量がそれほどあるわけではないので、これ一冊読めば英語が読めるようになるとかいうわけではないけど、取っかかりとしては良い本だと思う。
まぁもちろん私にとっては易々と読める文章ばかりだし、「翻訳」の手引きではないので、添えられている参考訳文は、もう少し良くなるのではないかと思うことも一度ならずあったけど。
私としては、「読み方」それ自体よりも、それをリスニングにつなげていく展望が示されている点がよかったかもしれない。私は翻訳はできても、会話方面はさっぱりなので…。
『一神教と国家』で対談した内田、中田に加えて、トルコの大学で東アジア文化論を教える山本直輝を加えた鼎談。
前作に比べて「一神教」という視点は弱く、もっぱらイスラームの話で、偏りが気になると言えなくもない。
まぁ何よりも、脱線に近い部分が面白くて、特に、ムスリムのあいだでも日本のアニメやマンガが人気で、それを通じて日本語を覚えているので…といったあたり。私はアニメは苦手なのでそのへんの話には疎いのだけど、『ゴールデンカムイ』は読もうかなぁとか、『乙嫁語り』は気になるなぁとか、そっちを印象づけられてしまった。『ゴールデンカムイ』は家人が電子書籍で買ってしまったというが、重複するけど私も買おうかな…。
あとは、大学受験のときに少しは勉強した漢文を学び直してみようかなぁ、とか。
というわけで、続編も読む。
幕府直属の「公儀隠密」に比べて、小藩に属する特殊部隊にすぎない「嗅足組」(の女性たち)が強すぎるのに違和感を抱くが、まぁ主人公サイドなので(笑)
前作から引き続き、用心棒仲間の細谷源大夫や口利き屋の相模屋吉蔵といった脇役が良い味を出している。
そういえば以前、琉球民謡関係のライブのお手伝いをしたことがあり、依頼を受けたときに「ティマを出せなくて申し訳ないのだけど」と言われた。「ティマ」=「手間賃」で、要するにノーギャラでよろしくということだなと理解したのだけど、その後ウチナーグチ辞典みたいなサイトで調べたところ、それで正解であった。
この『用心棒日月抄』シリーズを読んでいると、用心棒稼業で稼ぐ報酬が「手間」と呼ばれている。内地でも、ギャラのことを「手間」と呼んでいたわけで、ひょっとすると、元は内地から琉球に伝わった言葉が今も残っているのかもしれない、などと想像する。
先日『世界史の中のパレスチナ問題』を読んで、
たぶん、国民国家という枠組が有力なままであるあいだは解決できない
という感想を抱いたのだけど、そういえばウチダ先生がこんな本を書いていたなと思い、読んでみた。
対談形式ということもあって、いつものやや乱暴な、というか粗い展開に拍車がかかっている印象もあるけど、とはいえ、まじめに受け止めるべき内容もけっこうあるように思う。タイトルにある「国家」は、ほぼ「国民国家」を指しているのだけど、国民国家という擬制が何が何でもダメで全廃しろ、という話ではない。国民国家がうまくハマる地域や時代、状況もあるし、それがほとんどすべての災厄の原因になってしまうこともある、ということである。人権や自由や平等といった西欧近代的な価値観はかなりの程度普遍的なものだと個人的には思うけど、それを実現していくための体制はいろいろであっていいはずなのだ。
それにしても、国民国家の成立の過程では、ラテン語ではなく各国語による聖書の成立とか宗教改革とかが背景として大きかったと思うのだけど、ラテン語を域内共通言語とするローマカトリックの影響力が十分に維持されていたら、世界はどうなっていたのだろう、という気がする。この本では、キリスト教とイスラーム、ユダヤ教がそれぞれどのように違うのかという点は語られるのだけど、キリスト教に生じたことが、その是非はともかくとして、なぜイスラームでは生じなかったのか、それともこれから生じる可能性があるのか、という点については、残念ながら触れられていない。
『たそがれ清兵衛』『蝉しぐれ』に続き、藤沢周平作品。
これも面白かった。
数年前にまとめて読んだ葉室麟の連作も赤穂浪士の討ち入りが背景になっていたのを思い出す。こういう、たいてい誰でも知っている事件のサイドストーリーを描くのは、まず間違いなく面白くなるような気がする。『忠臣蔵』は昔、子ども向けのバージョンで読んだきりだと思うのだが、吉良邸の隣、土屋家の高張り提灯が塀際に掲げられている、という本作でも描かれる情景はよく覚えている。
そういえば、たとえば「宮本武蔵なら吉川英治」みたいに、現代の時代小説(という言い方も変だけど)における『忠臣蔵』の定番というのはあるのだろうか。
本作末尾にかけていろいろ伏線が張られているので、続編も読むことになりそう。
しかし主人公、本作では最終的に美しい許嫁と結ばれるのに、伏線的には他にも複数の魅力的な女性と関わりがあって、困ったことになりそうな予感がある。