月別アーカイブ: 2015年8月

釜石の夢 被災地でワールドカップを (講談社文庫): 大友 信彦

Amazon.co.jp: 釜石の夢 被災地でワールドカップを (講談社文庫): 大友 信彦: 本.

何より、「電車のなかでは読めない」話である。今の季節なら、汗を拭くふりで誤魔化すしかない。

「ラグビーのファンで本当に良かった」と思える本だが、必ずしもラグビーの本ではない。前に投げたらダメ程度の話すら出てこない。「ラグビーは好きだけど、昔のラグビーは知らないし」という最近のファンにも、むしろお勧めしたい。

「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」というコピーが、その空虚さを批判された。

まだ仮設住宅から出られない被災者もいるのに、膨大な金を使ってスタジアムを作るなんて論外だ、という意見があった。

巨大なスタジアムを作っても、イベント終了後は赤字が積み上がっていくだけだ、という指摘もあった。

いずれも真っ当な批判だと思う。しかし、それも「時と場合によって」なのだ。

批判に対してきちんと答えを出した例が、これだ。新国立競技場をめぐる迷走に欠けていた要素の、すべてとは言わないまでも、その多くがここにある。そしてこの本は、「コミュニティ/文化にとってスポーツとは何か」という問いへの一つの答えにもなっているように思う。

 

 

 

オフサイドはなぜ反則か (平凡社ライブラリー): 中村 敏雄

Amazon.co.jp: オフサイドはなぜ反則か (平凡社ライブラリー): 中村 敏雄: 本.

面白かった。この本を読んだ後、ラグビーの試合の録画を観ていると、この本で描写されている19世紀以前の「フットボール」の様相がダブってきて、何だか微笑ましく思えてくる。

しかしこの本の主張は、ラグビーについては、「オフサイド」ではなく「スローフォワード」に読み替えたほうが説得力が増すような気がする。というのも、少なくとも現代のラグビーでは、オフサイドはアタック側よりもむしろディフェンス側が取られることの多い反則のように思えるからだ(そうでもないかな、半々くらいかな?)

……などと書くと、サッカーファンは「なんでディフェンス側がオフサイド取られるのよ?」と面食らうかもしれない。同じルーツから同じ時期に分岐したスポーツなのに、それほどの違いが生じているのだ。