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飯野賢治『息子へ。』(幻冬舎)

以前、bookmeterというサイトでこの本の感想を書いたことがあったようで、どなたかが何の弾みで発見したのかツイートしてくれたので、「こんな本読んだっけ?」と。

せっかくなのでkindleで購入して再読。著者はゲームクリエイターとのこと。息子に宛てた手紙という形で、福島第一原発の事故と、原発の是非について語っている。

かつて読んだのは2013年だったようだが、そのとき私は「しごく真っ当な内容。これくらいのことが『常識』になってほしいものです」という感想を書いている。今回も本書の感想としてはそれに変わりはないのだけど、それから10年が経って、「これくらいのことが常識にはならなかったのだなぁ」という苦い感慨がある。もしかしたら、2012年7月にこの社会は後戻りのできない道を選び、未来を捨てたのかもしれないなぁ。

 

 

小松左京『日本沈没(上)(下)』(角川文庫、kindle版)

映画も両方観たし(2006年版は俳優が幼すぎて観るに堪えないが)、一色登希彦による『日本沈没』が好きなのだが、そういえば原作は読んでいなかったので、藤岡換太郎の著書を2冊読んだのをキッカケに手に取った。

漫画や映画に比べてスペクタクル性には乏しく、淡々として理屈っぽくなるのは当然だが、それでもさすがに読ませる。難民救出のための空港・港湾施設が軒並み使えなくなるという経緯は真に迫っている。日本難民の海外移住をめぐるあれこれ、特にナミビア関連の状況などが丁寧に描かれているのも印象的。一方で、映画はともかく、一色版に比べて女性の登場人物の比重がゼロに等しいのは、やはり時代かなぁ。また、「沈没」を防ぐための科学技術による抵抗がほとんど描かれないのも大きな違いか。

「世の中」が、どこかでうまくいかなくなりはじめているのではないか、何か、決定的に具合の悪いことが起こりはじめているのではないか、という不吉な予感(第五章「沈み行く国」)

という表現は、今の状況に照らすと、示唆的という以上のものがあるように思う。

そして、この作品も「第一部 完」という形で終っていることを初めて知った。第二部を読むかどうかは思案中。

藤岡換太郎『天変地異の地球学 巨大地震、異常気象から大量絶滅まで』(講談社ブルーバックス)

というわけで、本来気になっていたこちらも読む。

これも面白いのだけど、ちょっと手を広げすぎて散漫になっている印象がある。前著『見えない絶景』の方がテーマが絞られていて分かりやすかった。もっとも、入り口としては話題が多彩なこちらの方が入りやすいかな?

藤岡換太郎『見えない絶景 深海底巨大地形』(講談社ブルーバックス)

図書館の新着図書のところに同じ著者の『天変地異の地球学』があって面白そうだったのだが、その前著が本書であるとのこと。図書館の書棚でこちらを見つけて、パラパラとめくっていたところ、日本海溝で人間の生首(実際にはマネキンの頭部)が目撃されるという、一色登希彦の『日本沈没』(小松左京原作によるコミック)に出てくるエピソードが実話であることが分かり、ビックリ。というわけで、こちらを先に読むことにした。

前半は岩手県宮古を出航したヴァーチャル潜航艇が、深海(ときどき空中)を辿って地球を一周する過程で遭遇する海底の巨大地形を観察し、後半はその巨大地形が生まれた謎を想像を交えて考えていく、という構成。当然、話は人類どころか生物さえ存在していない時期にまで遡り、ビッグバンから太陽系の生成にまで及んでいく。

「想像を交えて」というところがけっこうポイントで、その意味ではこの本に書かれている内容の一部は著者独自の仮説にすぎないのだが、そもそもこの分野では想像力を駆使するしかない領域がたくさんあるのだ。それでもコンピューターによるシミュレーションを頼りにできるようになって、かなり変わってきたようではあるけど。

ブルーバックスの常で図版はけっこうあるのだけど、こういう時代なのだから、内容に即したCG動画をYouTubeで観られたりすると面白いのだけどなぁ。

引き続き、『天変地異の地球学』へ。

 

アマンダ・リプリー『生き残る判断 生き残れない行動』(岡真知子・訳、ちくま文庫)

いつ頃からかTwitterで神戸大学の田畑暁生教授をフォローしているのだが、彼が紹介する本に興味を惹かれることはたびたびあって、この本もその一冊。

ああ、こりゃダメだなぁ…と思う。いや、「この本が」ということではなくて、災害や事件・事故に遭遇した場合の、私自身の見通しである。自分はダメな思考や行動をすべてやってしまいそうな気がする。たぶん助からない。

かといって、それを克服できるような訓練を重ねられるような状況にもない。

この本から得られる教訓や心得で実践できることがあるとすれば、呼吸法くらいかな。あと、次はいつになるか何の予定も立たないけど、飛行機に乗るときは、ほとんど誰も読まない「安全のしおり」をしっかり読もう。そして非常時の脱出口もしっかり(複数)確認しておこう。初めてのビルに入るときは(非常)階段の位置に常に注意しよう。

うむ、個人の資質や条件の点でパッとしなくても、できることはそれなりにあるのだ。

三浦英之『白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺』(集英社クリエイティブ)

この著者の本では『南三陸日記』に好印象を抱いていたので、数ヶ月前に出たこの本も読んでみた。

生で観覧したことのある相馬野馬追絡みの第二章も、そして記者みずから新聞配達を経験する第四章も良いのだが、やはり終盤に示される、東京電力にとっても日本政府にとっても、もはや福島第一原発の廃炉や被災地の復興は、別に順調に進めたからといって特にメリットのある案件ではなく、急いでやろうとするモチベーションもないのだ、という暗澹たる認識が重い。

新型コロナ云々は関係なく、そして準備してきたアスリートたちの気持ち云々は関係なく、東京オリンピックの招致・開催はすでに犯罪なのだ、ということを強く思う。