月別アーカイブ: 2018年5月

サマセット・モーム『英国諜報員アシェンデン』(金原瑞人訳、新潮文庫)

大学時代の友人が誉めていたので気になって読む。

短編連作というか、1章1エピソードのものも、2~3章で1エピソードのものもあるのだけど、形のうえでつながっていても、それぞれの章に独立した味わいがあるように思う。

で、だいたいにおいて、オチがあるようでオチきっていないというか、割り切れなさや苦さ、不条理感が残る。そこがいい。

永田和宏他『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書)

山中伸弥・羽生善治の対談本が面白かったので、この2人が登場する企画モノであるこの本を図書館で予約してみた。人気があるようでだいぶ待たされたのだが、順番が回ってきて借り出してみたら、先日カンヌでパルムドールを受賞した是枝裕和さんも入っているではないか。もう一人は京大総長の山極壽一さん。

やっぱり山中さんの話が面白かったかな。ラグビーをやっていなかったらiPS細胞の開発もなかったのだ、というのは「風が吹けば桶屋が儲かる」よりは因果関係が濃いと思うよ(笑) 『友情』も読んでみようかな。

で、やはり以前から馴染みがある分、羽生さんの話は別に刺激がないなぁという読後感だったのだが、フレーズとしていちばん印象に残っているのは「様々な種類の物差しを持つ」という奴だなぁと思って、これ言っていたの誰だっけとページを繰ったら、羽生だった(笑)

続編も出ているようなので、いずれ、機会があったら。

 

かこさとし『未来のだるまちゃんへ』(文春文庫)

追悼。

『だるまちゃんとてんぐちゃん』あたりは私も幼い頃に読んだはずで、もう一度読み返してもいいなと思ったのだけど、この、大人向けの自叙伝的エッセイがあるのを知って、図書館で借りて読んでみた。

子どもと真剣に接する機会の多い人、つまり子育て中の人や教師はぜひ読んでおくべき本かもしれない。真摯で誠実なのだけど、どこか森毅さん的な「ええかげんさ」があって良い。こういう大人に接することのできた子どもは幸せだと思うのだけど、実はその分、自分の子どもをけっこうほったらかしにしてしまったことを悔いているところが、世の常という感じで面白い。

そしてやっぱり、彼の絵本作品を読みたくなるなぁ。

 

J. K. Rowling, Harry Potter and the Goblet of Fire (Kindle version)

確か先週土曜日に読了。

前作よりさらに180ページ長くなっているのか……。

以下、ネタバレ。

これはDumbledore先生、ダメでしょう。自分のミス(なりすましを見抜けなかった)で生徒1人死なせちゃったようなものなのだから……。

他国の魔法学校の生徒も英語で話していることになっているのだけど、たぶんイギリス人から見たフランス訛りや東欧訛りのステレオタイプなのだろうなぁと思えるところが興味深い。

次作も読むと思うけど、ちょっと他にも読むべきものが溜ってきてしまっているので、しばらくお休み。次はさらに長くなるのか……。

 

 

平川克美『21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学』(ミシマ社)

確か5月2日に読了。

近所の書店でパラパラとめくったら、借金を返すために全財産を手放したような話になっているから、以前から何冊か著書を買っている身としては、こりゃ応援しないと、と購入。

そういう状況で書かれていることもあって、人間存在にとって何が負債であるのか、といったテーマが非常に面白かった。あとはもちろん、等価交換は関係のリセットであるとか、ITによって貨幣を介さない等価交換を実現する試みの紹介とか……(いま手許にないので言葉づかいが不正確なのはご容赦)。

これまで読んだこの著者の作品のなかでいちばん面白かったかもしれない。たぶん再読する。