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ジェフリー・ディーヴァー『コフィン・ダンサー(上)(下)』(池田真紀子・訳、文春文庫)

「リンカーン・ライム」シリーズ2作目。

前作『ボーン・コレクター』の感想で書いたように、殺害方法が陰惨で猟奇的なので、シリーズを読み進めるのはやめようかなぁと思っていたのだが、つい手を出してしまった。

軸になるのが鑑識というマニアックな分野なので、その分、前作を読んでいることは大きなアドバンテージになり、すいすい読み進められる感じ。登場人物もおなじみの顔ぶれが多いし。この作品ではそれに加えて航空関係の蘊蓄もけっこう出てきて、なかなか新しい世界が開けている。

が、肝心のプロットに関しては、矛盾とまでは言わないまでも、「ちょっとそれはさすがに無理なんじゃないの」という印象を受けた。容疑者から命を狙われる可能性がきわめて高く、しかもいったんは警察の保護下に入った重要な証人(と思われる人物)から警察が簡単に目を離してしまうことは考えにくいし、その人物が改めて警察の保護下に戻った経緯も描かれていない(どうせすぐ戻ってくるだろうという希望は語られるが)。その空白の時間のあいだに、それほどのことができたとも考えにくい。その意味で、この手の作品としてはちょっと欠陥があるのではないかと思う。

とはいえ、せっかくこの世界に馴染みができたので、これに続くシリーズ作品も読んでしまうような予感があるのだけど。

 

 

ジェフリー・ディーヴァー『ボーン・コレクター(上)(下)』(池田真紀子・訳、文春文庫)

この「リンカーン・ライム」シリーズを教えてくれたのは京都に行くたびに立ち寄っているバーの店主であるはずなのだが、どういう流れで教わったのかをすっかり忘れている。

今回、久しぶりに京都を訪れることになったのを機に、ふと思い出して、読んでみた。

「鑑識」という超絶マニアックな分野を軸に連続殺人犯を追い詰めていく話なのだけど、殺害方法がかなり陰惨というか猟奇的で、それに対応して鑑識の手法もかなり目を背けたくなるようなことになっているので、途中で受け入れられなくなる読者もけっこう多いのではないか。

それに耐えて(?)読み進めていくうちに、だんだんこちらも犯人の発想というかリンカーンの発想に共振していく部分が出てくるのが怖いところで、ネタバレになるので書けないのだけど、「あ、これは犯人によるトリックで、つまり誰かの○○を…」みたいなのは登場人物よりも先に看破できるようになる。

読み方が甘かったのか、最終盤では「ええと、それ誰だっけ」みたいに前のページを繰ることになってしまったのだが、まぁそのへんの謎解きというか犯人の正体は何者かみたいな部分は、この作品の面白さの核ではない、とも思える。

とはいえ、最後の最後のどんでん返しというか、「続く」的な展開には凄みがある。同シリーズ第2弾は、別にこの「続き」ではなさそうではあるが。