月別アーカイブ: 2021年2月

西内啓『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)

ちょいと統計について考えることがあって、一時期たいそう話題になった本ではあるが、すでに図書館でも予約待ちが1人も入っていない状態なので、借りてみた。

冒頭に「1903年、H・G・ウェルズは将来、統計的思考が読み書きと同じようによき社会人として必須の能力になる日が来ると予言した」という一文が孫引きの形で引用されている。

…まぁ、この一文で「なるほど!」と膝を打って統計の入門書に進んでもいいかな、という印象。表題はどう考えても羊頭狗肉というか、よい意味でも悪い意味でもこの本の内容を表わしていない。この本を読んでも、統計が(場合によっては)非常に有益なツール=何かを知るための手段になることは理解できても、統計学は最強の学問であるという結論には至らないからだ。

 

 

 

イ・ヨンスク『「国語」という思想』(岩波現代文庫)

『女ことばと日本語』からの流れというか、いわゆる「国語」への関心が続いているのは、半ば仕事柄と言ってもよさそうである。

明治維新以降の、国民国家を構築する過程での「国語」成立をめぐるスッタモンダから、「大東亜共栄圏」の共通語化をめざす「国語」につきまとった問題に至る、上田万年・保科孝一という2人の国語学者を軸にした通史的な考察。

取り上げられる「国語」をめぐるあれこれの主張を見ていると、私自身はけっこう「国語」に関しては保守的かもしれない、と思う。

ラグビーでは、日本代表を筆頭に日本のチームでプレーする他国出身の選手も増えているし、そういう他国出身者、非日本語ネイティブスピーカーへの日本語教育という点も含めて、本書の末尾でちらりと触れられている「非日本的日本語」というのも非常に気になるテーマである。著者が参加している『「やさしい日本語」は何を目指すか: 多文化共生社会を実現するために』もいずれ読んでみたい。