月別アーカイブ: 2023年10月

唐沢孝一『都会の鳥の生態学-カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』(中公新書)

近所の緑道で何年か前からオオタカが営巣するようになり、バードウォッチャーが集まるようになったこと。今春、恐らく近所の公園でカラスのつがいが営巣し(ワイヤーハンガーを咥えて飛ぶ姿も見た)、子育てをしている様子が窺えたこと。

そんなことが誘因になって、身近な野鳥に関心が向き、この記事で紹介されていた本書を読むことになった。

いや、実に面白い。上記のような事情があるので、カラスの章と猛禽類の章が特に興味深かったのだけど、もちろん、それ以外の章も。超高層ビルの存在が、都心にハヤブサの生息環境を生み出しているというのが、特に印象に残った(ハヤブサを目撃した経験はないのだけど)。

生態学というのは社会学なのだろうなぁ。

見坊行徳・三省堂編修所『三省堂国語辞典から消えたことば辞典』(三省堂)

話題になっていた本。頭から通読するというよりは、拾い読みでいいかもしれない。時代もジャンルも、あるいはメディアの種類も、かなり雑食で摂取している方だと自覚しているが、それでもさすがに見たことも聞いたこともないような単語も、中にはある。

 

寺尾紗穂 『日本人が移民だった頃』(河出書房新社)

基本的に、戦前にパラオに移民した日本人の「その後」を追ったドキュメンタリー。帰国して国内の他地域に改めて「入植」した人もいれば、国内に居所を見つけられず、改めて南米(本書ではパラグアイ)に移住した人もいる。いずれも苦労を重ねている印象が強いが、どこか、郷里や母国を離れた、ある意味で根無し草であってもしっかりと人生を続けていく人たちの、たくましさと言ってしまうとあまりにも陳腐に思えるような強靱さを感じる。

これから「移民」を受け入れていかなければ回っていかないであろう日本社会についての言及・考察は、期待していた分、やや物足りないのだけど、それを補って余りある「厚み」のある労作。

 

カル・フリン『人間がいなくなった後の自然』(木高恵子・訳、草思社)

産業の衰退や戦禍、事故などの理由で「人間がいなくなった」地域で自然がどのようによみがえっているか(あるいは、よみがえっていないか)、という視点での大部なルポルタージュ。

自然はあっけないほど易々と回復していくものだな、という希望もあれば、人間はここまで取り返しのつかない打撃を与えてしまっているのか、という絶望もある。どちらかといえば…希望の方が大きいかもしれない。

農業が放棄された土地における二酸化炭素吸収量の大きさといった話は、春から夏にかけてオママゴト程度の農作業にいそしんでいる我々としては、実に興味深い。確かに、我々が活動している小さな畑に隣接するエリアの雑草(?)のものすごい繁殖力ときたら…。