過去の読書記録」カテゴリーアーカイブ

2014年に読んだ本

2014年の読書メーター
読んだ本の数:68冊
読んだページ数:19699ページ
ナイス数:238ナイス

これが沖縄の生きる道これが沖縄の生きる道感想
随所に興味深い論点がある良い本だとは思うけど、少なくとも(と言うにはあまりにも大きすぎるのだが)在沖米軍基地の問題に関しては、この本は全然ダメだと思う。というのも、問題は「なぜ沖縄に米軍基地が集中しているのか」、あるいは「沖縄の米軍基地を減らしていくためにはどうすればいいのか」というところにあるのではなく、「なぜ本土にはもっと米軍基地がないのか」、ひいては「なぜ本土は日米安保をまっとうに担えないのか」という点にあるからだと思うからだ。在沖米軍基地の問題は沖縄の問題ではなく、本土の問題である。
読了日:12月28日 著者:宮台真司,仲村清司
タンゴ・冬の終わりにタンゴ・冬の終わりに感想
鴻上尚史さんのツイートを契機に、懐かしい戯曲を読む。期待どおり、懐かしかった(^^) 結論としては、鴻上さんが探していた台詞はこの戯曲に出てくるものではなかったのだけど。
読了日:12月14日 著者:清水邦夫
黄金の服 (小学館文庫)黄金の服 (小学館文庫)
読了日:12月11日 著者:佐藤泰志
そこのみにて光輝く (河出文庫)そこのみにて光輝く (河出文庫)感想
この作家の小説なら大外しはなかろうという信頼感のようなものが生まれてきている。文体が好きなんだろうな。
読了日:12月4日 著者:佐藤泰志
きみの鳥はうたえる (河出文庫)きみの鳥はうたえる (河出文庫)感想
しばらく前に『海炭市叙景』を読んでなかなか悪くないと思ったのだが、ふとしたキッカケから、他の作品も読もうと思い、まずはこれを。村上春樹・村上龍より後の作家かと思っていたが、完全に同世代だった。収録2作は本格派青春小説とでも言うべきか。嫌いじゃない。引き続き、『そこのみにて光輝く』(1989年)へ。
読了日:11月28日 著者:佐藤泰志
ユダヤとイスラエルのあいだ―民族/国民のアポリアユダヤとイスラエルのあいだ―民族/国民のアポリア感想
いやぁ、面白かったです。やや現代思想系なので誰にでもお勧めというわけにはいかないけど、国家/国民/民族ってのは考えれば考えるほど難しい問題なのだなぁということがよく分かる。世界を代表するような知性が「ユダヤ人」のなかから輩出するという伝統は、イスラエル建国によって終わるのかもしれない、とも思える。著者が序章でのみ触れている、「日本/日本人」をめぐる問題意識という点でももちろん面白い。
読了日:11月19日 著者:早尾貴紀
NOヘイト!  出版の製造者責任を考えるNOヘイト! 出版の製造者責任を考える感想
「統計的な意味はない」と主催者は断っているが、第2章「書店員は『ヘイト本』をどう見ているか」に並ぶ書店関係者からの回答はじっくり読むに値する。神原元氏の「表現の自由と出版関係者の責任」はやや期待外れだった。「表現の自由」とヘイトスピーチ規制の関係については、むしろ、「あとがきにかえて」の「おわりに」の一節(表現の自由は何のためなのかという問いかけ)の方が参考になるように思う。いずれにせよ、ボリューム的にはあっというまに読める本ではあるものの、必読と言ってよさそう。
読了日:11月6日 著者:加藤直樹,明戸隆浩,神原元
陰謀史観 (新潮新書)陰謀史観 (新潮新書)感想
ややまとまりに欠ける印象はあるが、面白かった。「陰謀史観」のほとんどは、一般的に語られる歴史よりもはるかにシンプルであることが分かる。でも陰謀論者はそれを自覚してはいないのだろうなぁ。陰謀史観の方が、シンプルな分だけ知的負荷が少ない。要するにバカっぽいってことなんだけど。
読了日:10月22日 著者:秦郁彦
熱狂なきファシズム: ニッポンの無関心を観察する熱狂なきファシズム: ニッポンの無関心を観察する感想
著者が抱いている危機感はすべて私自身も共有するものなのだが、それはさておき(?)、「観察映画」に関する部分がとにかく面白い。と言いつつ、その時間の長さに恐れをなして、まだ著者の作品は一本も観ていないのだけど。「反演劇的演劇」に関する考察については、ほぼ逆の観点(従来の演劇においては観客こそが「拘束された不自由なもの」だったのではないか)から卒論を書いた四半世紀前を思い出す。
読了日:10月16日 著者:想田和弘
地球最後の日 (創元SF文庫)地球最後の日 (創元SF文庫)感想
というわけで、こちらが原作。子ども向けにない男女の恋愛/葛藤も、血なまぐさい戦闘もあり。自然科学的にも技術的にも「そりゃないよ」と思わせるところが、執筆当時(1930年代初頭?)に何が分かっていて何が分かっていなかったのか、という点を感じさせて興味深い。たとえば、原子力発電はもちろん原子爆弾さえまだ存在しない時期の作品だが、地球脱出のためのロケットの原動力が「原子力」になっている。もちろん放射能の問題は意識さえされておらず、多分に「夢のエネルギー」でしかないのだけど。
読了日:10月13日 著者:フィリップワイリー,エドウィンバーマー
地球さいごの日 (講談社青い鳥文庫 (74‐1))地球さいごの日 (講談社青い鳥文庫 (74‐1))感想
子ども向け版の『海底二万里』(ジュール・ヴェルヌ)などを除けば、たぶん最初に読んだ本格的(?)なSFがこの作品だと思う。もちろん読んだのはこのバージョン。図書館で借りて再読してみたら、え~、これはかなり子ども向けに翻案してあるんじゃないの、と思い、同時に借りた原作の翻訳を読んでみたら…破滅の状況だけは同じだけど、主人公は少年少女になっているし、「設定は同じだけどかなり違う話」だった(笑)
読了日:10月13日 著者:フィリップ=ワイリー
近くて遠いこの身体近くて遠いこの身体感想
体育が嫌いだったけど、今はなぜかよく身体を動かすようになり、しかも日本のラグビーファンである自分のために書かれたような本。巻を措く能わず。パワーアップをかなり重視している今の日本代表の強化方針に対して著者がたぶん批判的な意見を持っているのは本書の内容から明らかだけど、そういう話は直接には出てこない。読了して「ああ、結局のところ、これは『日本代表がNZ代表に勝つにはどうすればいいのか』という本なのかなぁ」と感じてしまい、胸が熱くなる。あ、といっても必ずしも「ラグビーの本」ではありません。
読了日:10月12日 著者:平尾剛
佐藤優の沖縄評論 (光文社知恵の森文庫)佐藤優の沖縄評論 (光文社知恵の森文庫)感想
鳩山政権期の「辺野古移設」を巡るせめぎ合いのなかで、本書にまとめられた連載コラムの緊張感が増していくようすが、結果の分かっている今日読むと痛切。「沖縄は地域エゴに徹すればいい」というのはまさしく正論。著者の言うとおり、基地移設先の対案など出す必要は皆無なのだ。
読了日:10月9日 著者:佐藤優
二十三の戦争短編集 (文春文庫)二十三の戦争短編集 (文春文庫)感想
最初の数編が戦場・戦犯収容刑務所を舞台とした短編小説で、後は帰国後~今日(最新で20世紀末)の時期に、かつての「戦友」「ムショ友」との交際記的なエッセイ(私小説と言えば言えるかもしれないが)という構成。「弱兵」として1人も殺さず、大きな負傷もなく帰還した著者は大きな悲劇を描くわけではない。しかしそこには重く苦い不条理がある。「同じ話ばかり書いている」という批判もあるようだが、なぜ著者がそのようにしているかは収録の「退散じゃ」というエッセイに明示されているので注意したい。
読了日:10月6日 著者:古山高麗雄
鉄道で広がる自転車の旅 「輪行」のススメ (平凡社新書)鉄道で広がる自転車の旅 「輪行」のススメ (平凡社新書)感想
「乗り鉄」でも「撮り鉄」でもないしなぁ…とあまり期待せずに読み始めたのだけど、かなり面白かった&影響されそう。魅力を感じたのは寝台特急「サンライズ瀬戸」で東京を夜に発って高松に朝到着し、しまなみ海道を80kmだか自走して本州に戻り、新幹線など乗り継いで帰ってくる「夜行日帰り」、それと調布空港発着での大島日帰り。まぁどちらもせめて1泊した方が美味しいもの&お酒を楽しめるのだけど、日帰りできてしまうんだぁというのが新鮮。紙の時刻表を久しぶりに開きたくなった。
読了日:9月24日 著者:田村浩
天空の蜂 (講談社文庫)天空の蜂 (講談社文庫)感想
恐らく発表された当時は、最後の数頁の「犯人からの最後のメッセージ」に書かれていることは「はぁ? 何それ?」と唐突な印象を与えたのではないか。しかし「3.11後」を生きる者にとっては、「あ、やはり『それ』が重要なのね」と痛切に思い知らされる。地震とか津波とかそういう話ではなくて、原発で盲点になりやすい脆弱な部分は何か、という点。もちろん筆者は専門家などに取材してそれを知ったのだろうけど、それを作品に活かしたのは見事。ただし繰り返しておくが、発表当時はその点はよく理解されなかったのではないかと思う。
読了日:9月22日 著者:東野圭吾
海炭市叙景 (小学館文庫)海炭市叙景 (小学館文庫)感想
私が長編小説を好むのは、小説の世界がだんだん自分に馴染んできて、少し登場頻度の落ちた誰かについて、電車の車中などでふと「そういえば彼は今どうしているんだっけ」などと現実と区別なく思い出してしまうようになる感覚が好きだからなのだけど、短編連作の形を取った本作でも、それと似たような感覚を味わえる。未完の遺作となってしまったのは残念だが、妙な話だけど、「それでもいい」作品と言えるかもしれない。
読了日:9月11日 著者:佐藤泰志
自転車で1日500km走る技術自転車で1日500km走る技術感想
前半は、まず100kmを目標に、自転車の選び方やコース設定、GPSや輪行のノウハウなど。後半はブルベの話。著者の編集する雑誌やブログを読んでいるので、すでに知っている話もけっこう多いという印象。200kmのブルベは辛うじてとはいえ一度完走したので、未知の世界は最終章のみ。しかしこうなると(?)、やはり来年は300に挑戦かなぁという気になってくる……。
読了日:9月9日 著者:田村浩
肉体の悪魔・失われた男 (講談社文芸文庫)肉体の悪魔・失われた男 (講談社文芸文庫)感想
従軍慰安婦問題に関連して高橋源一郎がこの作家に触れていたので読んでみた。これらの作品に描かれた兵士や慰安婦が置かれた状況は酷いとしか言えないのだが、かといって、そうした状況を告発するという作風でもない。印象深い。古山高麗雄も読んでみよう。http://www.asahi.com/articles/DA3S11320312.html
読了日:9月4日 著者:田村泰次郎
一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書)一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書)感想
先日の『中東から世界が見える』と合わせて読むとなかなか面白い。
読了日:9月2日 著者:内田樹,中田考
ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)感想
さまざまな読み・解釈を許す作品なのだろうけど、読後、まず感じた印象は悲劇性ということだった。とても悲しい話である。
読了日:8月30日 著者:サミュエルベケット
女子マネージャーの誕生とメディア―スポーツ文化におけるジェンダー形成女子マネージャーの誕生とメディア―スポーツ文化におけるジェンダー形成感想
これはお勧めです。扱っている資料が少なすぎてちょっと危うい感じもあるけど、面白い。女子マネージャー増加の背景に受験戦争の激化がある、とかいうのも目から鱗でした。真面目な論考だけど、特に難解な概念が出てくるわけでもないし、非常に読みやすいです。女子マネージャーという存在がジェンダー意識「から」生じているわけではないが、無意識的にせよ、結果としてジェンダー意識を強化している、という分析はけっこう的を射ているように思います。
読了日:8月29日 著者:高井昌吏
指数・対数のはなし指数・対数のはなし感想
雑談的な部分だけすごい勢いで読んで、一応読了したことにしておきます。数式とか出てくるちゃんとしたお勉強部分は、かなりトバして書いているようなので理解できず。たぶん、「指数・対数はいちおう高校でやって公式とかは理解しているんだけど、何が面白いのか分からない」という人が対象なのだと思う。もとが数学専門誌がベースのようだし。後書き的な部分を読むと、まぁ私のような読み方でもいいのかもしれない。最初の部分の、対数を手計算でおおざっぱに把握してみる、という部分は良かった。
読了日:8月25日 著者:森毅
素数の音楽 (新潮文庫)素数の音楽 (新潮文庫)感想
ようやく読了。調和級数が無限に拡散する、の部分で引っかかったけど、ネットで調べてその証明に納得してからは、わりとスムーズに進んだ。しかし結局のところ、リーマン予想なるものが何を意味しているのかは理解していない。まぁそれでも数学者の苦労や活躍は伝わってくるから、十分に楽しめる本だった。それにしても、数論の最先端と量子物理学の最先端が一致してくるというのは不思議なようにも思えるが、結局のところ、人間が鏡を覗き込んでいるのだから当然かも、という気がするのは私が哲学科出身だからなのだろう。
読了日:8月24日 著者:マーカスデュ・ソートイ
日本女子大学生の世の中ウオッチ日本女子大学生の世の中ウオッチ感想
著者と同じくらいの年代に自分がこれほどモノを考えていたかというと……いや考えていたには違いないのだが、やはりブログどころかインターネットさえ普及していなかった時代ゆえか、こうして文章で表現するということはなかったよなぁと思う。それにしても、あちこちで軋轢を生み敬遠されるであろう著者の姿勢は、さぞかし生きづらいだろうなと思うのだけど、それでも「この人は大丈夫」(?)と思えるのは、彼女のベースが、揺るがない「正しさ」ではなく、むしろ、主流とは異なる考え方を面白がる「好奇心」にあるように見えるからだろう。
読了日:8月12日 著者:是恒香琳
ハンドブック 集団的自衛権 (岩波ブックレット)ハンドブック 集団的自衛権 (岩波ブックレット)感想
まぁ基本的な文献ではあるけど、今の時代意識からするとちょっと淡々としすぎている感がある。いや、まぁもっと煽れとかそういう意味ではないですが。
読了日:8月11日 著者:浦田一郎,前田哲男,半田滋
101年目の孤独――希望の場所を求めて101年目の孤独――希望の場所を求めて感想
これは良書。軽い内容ではないけどぐいぐい読めた。確かに今の日本は滅びつつあるのかもしれないけど(現状は維持できないという意味で)、それでも副題にあるような「希望の場所」は残せるのかなぁと救われる気持ちになる。もっともそういうのは、過去に栄えて衰えていった国ならば、すでに当たり前の現実なのかもしれないけど。
読了日:8月6日 著者:高橋源一郎
ショージ君の「さあ!なにを食おうかな」 (文春文庫 177-7)ショージ君の「さあ!なにを食おうかな」 (文春文庫 177-7)感想
「駒形どぜう」の回が読みたくて図書館で借りたのけど、その回はもちろんたいへん懐かしく面白かったのだが、それ以外の回は今ひとつ。面白くはあるのだけど、あまり「美味しそう」に書かれていないのだよね。食べることを楽しむという感じが実はあまりない。その意味で「どぜう」の回は例外的と言ってもいいくらい「美味しさ」が強調されているように思う。
読了日:8月4日 著者:東海林さだお
FUKUSHIMA nuclear village〜原発村の一年半FUKUSHIMA nuclear village〜原発村の一年半
読了日:8月1日 著者:稲葉孝之
中東から世界が見える――イラク戦争から「アラブの春」へ (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)中東から世界が見える――イラク戦争から「アラブの春」へ (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)感想
岩波「ジュニア」新書だが、たいていの「大人」にとっては読む意味があるだろう。平易に書かれているし、ニュースをそれなりに追っている人なら知っている内容が多いが、それでもなるほどと唸らされる洞察がある。いろいろ社会的な「動き」を思う場合、中東の話というだけでなく、日本の「今」を考えるうえでも他人事ではない部分が多いのだよね。
読了日:7月30日 著者:酒井啓子
検証 官邸のイラク戦争――元防衛官僚による批判と自省検証 官邸のイラク戦争――元防衛官僚による批判と自省感想
実に地味な検証。これまで公開されていなかったような内幕が暴露されるのではないかという期待は裏切られる。でもこういう地味だけど丁寧な回顧が必要なのだろうな、という気がする。それにしても、あの当時の「歯止め」に比べて、今の安倍政権の集団的自衛権の論理がどれほど危ないものかを痛感する。
読了日:7月26日 著者:柳澤協二
大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)感想
本書のなかで指摘されている(米国による指摘への言及も含め)大日本帝国陸・海軍の情報体制の諸々の欠陥が、もし克服されていたとしたら…負けるにしてももう少しマシな負け方になったろうし、人命の損失もはるかに少なくて済んだだろうが、しかしそれ以前に、そもそも戦争になど踏み切れなかっただろう。「これまでとは違う動きをする奇妙なB29部隊」の部分は結論が分かっているだけに読んでいて辛い……。
読了日:7月16日 著者:堀栄三
英文翻訳術 (ちくま学芸文庫)英文翻訳術 (ちくま学芸文庫)感想
ほぼどの項目も、これまでの翻訳の実務のなかで自分で使ってきたような技術ではあるので特に新たな発見はなかったのだけど、改めて体系的に見直せたのは有益だった。これから翻訳をやりたいという人は是非読んでおくべき一冊だと思う。あとがきの、演劇に触れた部分もなかなか面白かった。
読了日:7月12日 著者:安西徹雄
敗北のない競技:僕の見たサイクルロードレース敗北のない競技:僕の見たサイクルロードレース感想
なんとも生々しい……。直接体験してきた、あるいはそれに近い人にしか書けない内容であることはもちろんなのだけど、同じように本場のレースを体験している日本人選手ならば同じように書くかというと、それはまた違う気がする。到達した高みは同じでも、そこに至るまでの土井雪広ならではの過程が、この内容に反映されているような気がする。
読了日:6月26日 著者:土井雪広
ヤマザキパンはなぜカビないか―誰も書かない食品&添加物の秘密ヤマザキパンはなぜカビないか―誰も書かない食品&添加物の秘密感想
家人は「コンビニ弁当を食べると特に塩辛いわけでもないのにやたらに喉が渇く」と言う。「添加物とかいろいろ入っているから、身体としても薄めて排出したくて水を求めるんじゃないの」などと言い合っていた。もちろんこれは、少しも科学的ではない、個人的な印象にすぎない。そうした印象を、ではこの本が裏付けてくれるかというと、残念ながら期待外れ。というか、我々と五十歩百歩の印象論にすぎず、かえってマイナスが大きいのではないかという気がする。食品添加物の危険性について考えるならば、たぶんもう少しいい本がありそうだ。
読了日:6月25日 著者:渡辺雄二
誰も戦争を教えてくれなかった誰も戦争を教えてくれなかった感想
全体としてとても面白いのだけど、あいかわらずの饒舌で、読んでいるうちにだんだん疲れてくる……。あと、『絶望の国の幸福な若者たち』にも感じたことなのだけど、基本的に現状を越えていくベクトルがなく、傍観者として「生暖かく見守る」スタンスに落ち着いてしまうのが残念。自分たちは「いま、ここ」にいるという意識が鮮明なわりには当事者意識が薄いように思えてしまう。
読了日:6月23日 著者:古市憲寿
非武装国民抵抗の思想 (岩波新書)非武装国民抵抗の思想 (岩波新書)感想
『平和主義とは何か』で言及されていて気になったので読んでみた。40年くらい前の本で、東西冷戦&人類滅亡的な核戦争が問題意識の背後にあるので、今日とは少しズレているのだけど、それでもなお「これ今の問題じゃないか!」と思うところが多々あった。いま私たちがやっている行動は「非武装国民抵抗」のトレーニングでもあるのだなというのが印象的。この本は買っておきたいが絶版か……。
読了日:6月15日 著者:宮田光雄
ロボット・カミイ (福音館創作童話シリーズ)ロボット・カミイ (福音館創作童話シリーズ)感想
古田足日さんが亡くなられて、いくつか作品を読んだはずだなぁと調べたところ、これをよく覚えているので図書館で借りて読んでみた。傑作。
読了日:6月10日 著者:古田足日
クリスマスに少女は還る (創元推理文庫)クリスマスに少女は還る (創元推理文庫)感想
「スゴ本」ブログで激賞されていたので読んでみたのだけど落胆。これはひどい。真犯人を知っている者が職業上の守秘特権ゆえに何も言わない、という設定はまぁいいとして、単に捜査陣の連携のまずさゆえに事件の解決が遅れているだけなのに、そこにフォーカスしているわけでもない。鍵となりそうな少年から得られる情報も読者にとっては既知のものだけで肩透かし。そもそも、主要登場人物の一人が亡霊(というか、別の主要登場人物の妄想の産物)って、陳腐な蛇足にすぎない。ミステリだと思って読んではダメで、お涙頂戴のファンタジーなのか。
読了日:6月5日 著者:キャロルオコンネル
これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
大学教養課程くらいを対象に良くまとめられた本、という印象。著者としてはすでに結論を出していて大所高所から俯瞰した構成なので、葛藤や切迫感を伴う知的興奮はあまり感じられない。
読了日:5月28日 著者:マイケルサンデル
キアズマキアズマ感想
この著者ならではのサイクルロードレース小説なのだけど、ちょっといろいろ設定に無理を感じる……。車重50kgのTOMOSに乗っていたって、それで自走で登坂するわけではあるまいし、別に脚力つかないだろう、とか(笑)
読了日:5月24日 著者:近藤史恵
街場のマンガ論 (小学館文庫)街場のマンガ論 (小学館文庫)感想
少年マンガと少女マンガを両刀遣いで読める読者は、ウチダ先生が想定しているよりもけっこう多いのではないかと思う。私もその一人だが。しかしウチダ先生の本はわりとよく文庫になるので、文庫になってから買った方が「おまけ」が付いていてよいなぁ。
読了日:5月17日 著者:内田樹
平和主義とは何か - 政治哲学で考える戦争と平和 (中公新書)平和主義とは何か – 政治哲学で考える戦争と平和 (中公新書)感想
平和主義の二つの原理(義務論、帰結主義)×非平和主義の三つの類型(正戦論、現実主義、人道介入主義)、という構成でよく整理された本。ただし緻密なだけに、先を急がずに順を追って読んでいかないとかえって混乱するかもしれない。改憲/護憲や集団的自衛権について賛否いずれの立場で論じるにせよ、「相手の論点を知る」という意味で読んでおいて損はないと思う。ところで、戦争と平和という本書のテーマとはかなりズレるのだけど、本書を読みながら、「矛盾している」と「正しくない」はイコールなのか、という問いが頭から離れなくなった。
読了日:5月13日 著者:松元雅和
再生可能エネルギーの真実再生可能エネルギーの真実感想
読むのに時間はかかったが大変面白かった(ただしFITの水準設定あたりの話は退屈。大切なんだろうけど)。原子力というのは20世紀的・昭和的なエネルギーだなぁとつくづく思う。いろいろな意味で筋が悪すぎる。しかしこの本の執筆の時点で日本はすでに周回遅れなのに、安倍政権になってさらに2周くらい抜かされそうだ。再生可能エネルギー=太陽光=コストが高くてダメとか、ドイツの脱原発=再エネシフトは失敗しつつあるとか思っている人はこの本を読むと少しは蒙が啓かれるのではないかと思う。
読了日:5月8日 著者:山家公雄
月食の日月食の日感想
表題作『月食の日』は、丁寧な取材に裏付けられた作品なのだろうなぁと感じさせられる。切り口も雰囲気も嫌いでないだけに、もう少したっぷり書いてほしかった。物足りない。同じことは『たそがれ刻はにぎやかに』についても言える。この「読書メーター」のユーザー評を見ると「読みにくい」というものが目につくけど、これくらいの趣向についていけないようでは、という気もするのだが……。
読了日:4月28日 著者:木村紅美
冷泉家 八〇〇年の「守る力」 (集英社新書)冷泉家 八〇〇年の「守る力」 (集英社新書)感想
よい機会を得たので、前回からさほど間隔を置かずに再読。「紅旗征戎はわがことにあらず」という言葉を、つい時勢に引きつけて考えてしまいたくなる今日この頃。
読了日:4月28日 著者:冷泉貴実子
サヴァイヴサヴァイヴ感想
『サクリファイス』で脇役だった伊庭(彼は準主役か)、赤城といった選手が主人公になっている短編が読めるのはなかなか楽しい。外伝みたいな感じ。しかし、ギアをインナーに入れるのが「足に余裕がある」兆候なのだろうか、アタックをかけるときに「インナーに入れて、ペダルに力を込める」のか、という疑問は残ったけど、そういうものなの?
読了日:4月24日 著者:近藤史恵
世界ラグビー基礎知識世界ラグビー基礎知識感想
刊行当初に読んだと思うのだが、義父からラグビー関係の質問を受けたのを機に再読。2003年の本なので情報自体は古いものもあるのだけど、以前より日本代表戦や海外ラグビーの試合を観る機会が増えているので、かえって面白く読めた。まぁJ Sportsのラグビー中継でも著者の解説には昔話が混ざることも多いし。著者自身が力点を置いていない、さらっと触れているだけの記述が妙に気になったりする。香港のラグビーの端緒はスコットランドだ、とか。
読了日:4月21日 著者:小林深緑郎
「伝統・文化」のタネあかし「伝統・文化」のタネあかし感想
保守的な向きの言う日本の「伝統・文化」が、実際のところは政治的な思惑で構築された物語であって……という流れは、もともとリベラルを志向する身としては特に新鮮でもない。とはいえ、白菜が日本に根付いたのは意外に新しく明治以降とか、「喪服は黒」はいつからか、みたいなちょっとした話が面白い。あとがきでも自省されているようにもっと充実させてもらいたい分野もあるし、1項目見開きで収めるために各項目で活字の大きさが違うという編集には疑問があるのだけど。
読了日:4月15日 著者:千本秀樹,林公一,田中恵,長谷川孝
42.195kmの科学  マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」 (角川oneテーマ21)42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」 (角川oneテーマ21)感想
ブルベの後遺症でまだマラソンに向けた練習ができないので、代わりにマラソンの本を読む(笑) ここで紹介されているケニアやエチオピアのトップランナーたちはいずれも素晴らしい身体能力の持ち主であって、しかも類を見ない努力を重ねているわけだが、その裏に何か肉体的にも精神的にも(というか社会的にも、か)痛々しいものを感じてしまうのは、単にいま私の脚が痛んでいるからではないと思う…。
読了日:4月9日 著者:NHKスペシャル取材班
島の夜島の夜感想
沖縄(宮古・八重山)を舞台にした作品には、時として、その土地を単に「消費」(「搾取」と言ってもいいかもしれない)しているだけとしか思えないものもあるのだけど、これにはそういうものを感じなかった。終盤、短い場面だが父親との会話がよい。しかし、やはり「月ぬ真昼間」なのかぁ。まぁあの唄にインスパイアされない書き手の方が珍しいのかもしれないが。凄い歌詞だからね……。
読了日:4月8日 著者:木村紅美
風化する女風化する女感想
以前の三線仲間のデビュー作。家人の親戚つながりでまたご縁ができそうだったので読んでみたのだけど、標題の新人賞受賞作はそういえば受賞当時に読んでいたのを途中で思いだした。やや登場人物が類型的な感じがなくはないけど、こういう文体は嫌いではない。
読了日:4月2日 著者:木村紅美
空の拳空の拳感想
新聞で続編の連載が始まったのでこちらも読んでみた。サイクルロードレースにおける『サクリファイス』同様、ボクシング観戦の入口として優れているのかもしれない。かもしれない、というのはボクシングの生観戦経験が一回しかないから私にはよく分からないからなのだけど。昔やはり新聞小説で読んだ沢木耕太郎『一瞬の夏』を再読したくなったな。再読と言っても、連載当時は途中から読んだだけだったかもしれない……。
読了日:3月29日 著者:角田光代
日本軍と日本兵 米軍報告書は語る (講談社現代新書)日本軍と日本兵 米軍報告書は語る (講談社現代新書)感想
「敵」から見た自国という視点そのものが良い。日本陸軍は言われているほど狂信的だったわけではなく、学習も重ねていたし、それなりに「合理的」だったのではないか、という検証。ただしその限定的な範囲での合理性はおぞましいものではあったのだが。なお些細なことだが、本文中で、収録されている図版などに言及する際にページ番号が2ページずれている(「p185の図を参照」と書いてあるときは実際にはp187など)。増刷の段階で修正できるのかな?
読了日:3月26日 著者:一ノ瀬俊也
偽原始人 (新潮文庫)偽原始人 (新潮文庫)感想
たぶん小学生の頃に朝日新聞で連載していた。生まれて初めて読んだ新聞小説だったと思う。小学生(たち)が主人公なので取っつきやすかったというのが大きいのだけど、40年近くを経て読み直すと、けっこう深刻な設定の小説であることに気づく。
読了日:3月21日 著者:井上ひさし
パンデミックとたたかう (岩波新書)パンデミックとたたかう (岩波新書)感想
想像力、というのはいかにも市場原理には馴染まない言葉だよなぁ、と思う。
読了日:3月19日 著者:押谷仁,瀬名秀明
魔の山〈下〉 (岩波文庫)魔の山〈下〉 (岩波文庫)感想
ようやく読了。『戦争と平和』などよりはるかに長く感じた。「喜劇的・風刺的」に描いているという受け止め方は正しかったようだ。終わり方はいくぶん唐突で(何しろ最後の節のの標題が「青天の霹靂」なのだから)、「そういう結末しかなかったのか?」と思わざるをえないという意味で、切ない。う~ん、名作だとは思うけど、無駄に長い気がする。そして何しろ翻訳がよくない。あえて読むなら新潮文庫版なのか。
読了日:3月14日 著者:トーマス・マン
魔の山〈上〉 (岩波文庫)魔の山〈上〉 (岩波文庫)感想
登場人物の言動やお互いの観念的(と思える)内容の対話を、著者が「滑稽なもの」として描写しているのだとつい思ってしまうのだけど、いや、実はそんなことはないのだと気づいて複雑な思いに囚われる。大学生までくらいの時期に読んでいれば、印象も変わったのかもしれないが……。それにしても、翻訳が良くない。新潮文庫版の方が良かったのかな(時期はそれほど変わらないはずなのだが)。
読了日:2月25日 著者:トーマスマン
ホビットの冒険 オリジナル版ホビットの冒険 オリジナル版感想
『指輪物語』は高校生の頃から何度か繰り返して通読しているが、本作はたぶん一回しか読んでいなかったと思う。映画の第二部公開を前に再読。「子供向け」ゆえ、内容はだいたい覚えていると思っていたけど、全然そんなことなかった。さすがにその後の『指輪物語』『シルマリルの物語』に比べると深みに欠けるが、後二作との関連を強調しつつ「大人版」を映像で作ってくれているのがピーター・ジャクソン、ということなのだろう。
読了日:2月13日 著者:J.R.R.トールキン
自転車ツーキニストの憂鬱自転車ツーキニストの憂鬱感想
『中央線の秋』を読みたくなって、図書館で借り出し(まぁ←はウェブでも読めるのだけど)。10年前の本だが、けっこう時代は流れているのだなぁと痛感。自転車テーマの話はもちろん良いのだけど(まだLEDライトは一般的ではなかったのか、とか)、テレビ業界の実情に触れた部分が興味深い。これまた、だいぶ時代は変わっているのかもしれないが。それにしても著者プロフィールの写真が歩道走行中なのはちょっといただけないなぁ。
読了日:2月8日 著者:疋田智
希望社会の実現希望社会の実現感想
確固たる信念というか、社会観とでもいうべきものを持った人という印象。象徴的なのは「世の中の八割、九割の人が幸福であっても、残り二割、一割の不幸な人がいるのでは、健全な社会とはいえない。」(P57)という断定。これに賛同できない人も多いのではないかと思う。「八割九割幸福ならいいではないか」という人もいれば「五割幸福なら五割不幸が健全」というゼロサム思考の人もいるだろう。しかし、こういう社会観がなければ、著者のような行動を取る人は恐らくいなくなる。そして、著者のような人は社会にどうしても必要だろうと私は思う。
読了日:2月6日 著者:宇都宮健児
素粒子論はなぜわかりにくいのか (知の扉)素粒子論はなぜわかりにくいのか (知の扉)感想
いやぁ、これは分かりやすく大変面白かった。なぜ分かりやすいのだろうと考えるに、これまでいくつかこの分野の本を読んだ経験からすると、いずれも「途中から」分からなくなったのだけど、この本はその「分からなくなるところ」を出発点に据えているからではないかと思う。その分岐点を大前提としてしまって、そこから遡ったり前進したりする方が話は見えやすくなる、ということではないか。その基本となる出発点とは「素粒子は粒子ではない」という、ただそれだけのことなのだが。
読了日:2月3日 著者:吉田伸夫
虚数がよくわかる―“ありもしない”のに,難問解決に不可欠な数 (Newton別冊)虚数がよくわかる―“ありもしない”のに,難問解決に不可欠な数 (Newton別冊)感想
「こことここを関連づければ、もっと分かりやすいのに」と思うような部分もあったけど、基本的にはよい本のような気がする。しかしこれを読むと、ああ三角関数や対数なんかももう少しちゃんと勉強しないといかんなぁと言う気がしてくる。それと同時に、理系に進んだ人というのは、たとえばこういう虚数の概念なんかをきちんとつかんでいるのだろうか、というのも気になってくる。
読了日:1月29日 著者:
タウ・ゼロ (創元SF文庫)タウ・ゼロ (創元SF文庫)感想
一点を除いて絶賛したい。それにしても、ハードSF(科学理論や科学技術を主軸としたSF)の傑作というもっぱらの評価だが、そうなのか? むしろ社会派の傑作ではないかという気がする。慣れ親しんだ社会と隔絶され帰還の見込みが立たないなかで孤立した集団を維持していくという設定には、何だか『二年間の休暇』(十五少年漂流記)を想起してしまった。確かにこの作品を楽しむには宇宙論に対する理解も必要ではあるが、そのへんに自信のない人は、それこそ『気が遠くなる宇宙の話』を先に読んでおくといいかもしれない。
読了日:1月23日 著者:ポールアンダースン
夜来たる (ハヤカワ文庫SF)夜来たる (ハヤカワ文庫SF)感想
表題作「夜来たる」「緑の斑点」は面白かったが、他はさすがにちょっと古めかしいかなという印象を受ける。もっとも、それはそれで、古き良きSFを読むという楽しみはあるのだけど。
読了日:1月20日 著者:アイザックアシモフ
幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)感想
電車を乗り過ごしそうになる傑作。「この物語のなかで誰に(どのグループに)感情移入するか」というのは、小説の読み方としてはちょっと子供っぽい気がするのだけど、やはり捨てがたい楽しみの一つなのだと思う。この版では「まえがき」で著者がちょいと弁解めいたことを書いているが、その必要はないと思う。
読了日:1月15日 著者:クラーク
哲学の先生と人生の話をしよう哲学の先生と人生の話をしよう感想
読み進めていくなかで著者がこの相談にどのように答えるかが予想できるような気がしてくる一方で、半分くらいの頻度でその予想はみごとに裏切られるのが面白い。人は思ったほど(あるいは自分でそう思い込んでいるよりも)自由ではないけど、思ったほど不自由でもない、という印象。
読了日:1月12日 著者:國分功一郎
原子力発電 (岩波新書 青版 955)原子力発電 (岩波新書 青版 955)感想
第一刷が1976年というから、もう40年近く前の本。古いといえば古い。しかし、ここで指摘されている問題点はほとんど何も解決されていないのではないか。それもそのはず、何しろ事故を起こした福島の原発はこの本より古かったのだから。この本の記述には「何を甘いことを言っているんだか」と感じる部分もあるが、それはつまり、執筆の時点ではまだTMIもチェルノブイリも福島も起きていなかった、という一点によるのだと思う。過酷事故が起きる前でさえ、これだけのことが書けるのだ。
読了日:1月8日 著者:

読書メーター

2013年に読んだ本

2013年の読書メーター
読んだ本の数:91冊
読んだページ数:22854ページ
ナイス数:151ナイス

できることをしよう。―ぼくらが震災後に考えたことできることをしよう。―ぼくらが震災後に考えたこと感想
年をまたいでこの本を読了。「できること」はいろいろあるなぁ。
読了日:1月1日 著者:糸井重里&ほぼ日刊イトイ新聞
私の食物誌 (中公文庫)私の食物誌 (中公文庫)感想
初・吉田健一。面白かった。この独特の文体は実は外国語翻訳にだいぶ影響されているのではないかと感じた。「酒の味その他」が秀逸。再読したい。
読了日:1月8日 著者:吉田健一
右からの脱原発右からの脱原発感想
パンフレット程度の内容なのであっというまに読了。とはいえ、その主張は悪くない。すべての右翼に読んでもらいたい(私は左翼だけど)。
読了日:1月10日 著者:針谷大輔
世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ (NHK出版新書 392)世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ (NHK出版新書 392)感想
当たり前のことばかりと言ってしまえばそれまでなのだけど、こういうことをしっかり言える人が協会上層部に入ったというのは大きい。
読了日:1月12日 著者:岩渕健輔
原発危機の経済学原発危機の経済学感想
タイトルからして当然「命の話ではなく金の話」なのだけど、とはいえ有益な知見があれこれ得られる本。筋としては、収益事業として軽水炉事業は存続(再稼働容認)という方向なのだけど、ただ、著者がそのために必要と考えている前提条件(日本の投資文化のありようとか)を考慮すると、実質的には再稼働は無理(というか、その条件を満たすためにものすごく時間がかかる)という結論になってしまいそう。
読了日:1月17日 著者:齊藤誠
そして、人生はつづくそして、人生はつづく感想
いつもながらの佳書。とはいえ、杉並区立図書館に対する批判は「公正を欠く」と言ってもいいほど誤解を招く表現であると思う。
読了日:1月17日 著者:川本三郎
戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)感想
その特殊な状況にいろいろ感銘を受ける点が多い。直前に読んだ『原発危機の経済学』にあった一文をふと思い出したのだが、いま手許にないので正確を期して後日コメントで引用する。
読了日:1月20日 著者:吉田満
性格とはなんだったのか―心理学と日常概念性格とはなんだったのか―心理学と日常概念感想
特にこの分野に関心があったわけではないが、著者(@ynabe39)のふだんのツイートが面白いので、図書館で借りて読んでみた。きちんとした学術論文だが、期待した以上に面白かった。性格心理学だけでなく、一般的に学問についての批判的検討としても読むことができる。終盤の「自分がいま考えていることが、すべてすでに書かれている」という人文学的感覚にしみじみ感じ入るし、最後の「本書で分析してきたさまざまなことは、そうした位置づけのごく最初の一歩にすぎない」という結びが(決まり文句なのかもしれないけど)かっこいいのだ。
読了日:1月28日 著者:渡邊芳之
銃の科学 知られざるファイア・アームズの秘密 (サイエンス・アイ新書)銃の科学 知られざるファイア・アームズの秘密 (サイエンス・アイ新書)感想
「科学」と銘打たれてはいるけど、別に物理学や化学がばしばし出てくるわけではない。
読了日:2月1日 著者:かのよしのり
原発のコスト――エネルギー転換への視点 (岩波新書)原発のコスト――エネルギー転換への視点 (岩波新書)感想
既にいろいろ読んできたので特に新鮮な情報はなかったけど、類書に比べて原発災害の損害賠償関係の記述が充実しているように思った。『原発危機の経済学』の方が得るところは多いかも。
読了日:2月2日 著者:大島堅一
言語と貧困―負の連鎖の中で生きる世界の言語的マイノリティ―言語と貧困―負の連鎖の中で生きる世界の言語的マイノリティ―感想
翻訳という仕事柄、いろいろと考え込まざるをえないものを感じる。私の仕事などは、本来は「英語のできない人が、元々英語で書かれていた情報を享受できるように」する仕事なんだよな……。
読了日:2月9日 著者:松原好次,山本忠行
新編 酒に呑まれた頭 (ちくま文庫)新編 酒に呑まれた頭 (ちくま文庫)感想
いやはや、よく飲むなぁ(笑) 飲み歩く店も、旅行で訪れる先も、新しい所ばかり開拓するのではなく、いくつか巡回先を定めるのがよいという説に我が意を得た感じ。先に読んだ『私の食物誌』に比べればすいぶん自然な文体。こちらの方が若い頃に書いたものらしい。
読了日:2月20日 著者:吉田健一
学力と階層 (朝日文庫)学力と階層 (朝日文庫)
読了日:2月20日 著者:苅谷剛彦
帝都ウィーンと列国会議―会議は踊る、されど進まず (講談社学術文庫)帝都ウィーンと列国会議―会議は踊る、されど進まず (講談社学術文庫)感想
時代がかった雰囲気を出したいのだろうが、「取り潰し」「改易」「お国替え」など日本の時代物から流用したような言い回しが多く、ナポレオン=「エルバの流人」、ウィーン=「パイアケスの島」などと持って回った表現を多用するところも鼻につく。が、まぁそれは我慢できないでもないご愛敬。何より、これほど大きな意識の変化があったのが、今からたかだか200年ほど前でしかないというところに、分かっていたこととはいえ、改めて感銘を受ける。
読了日:3月3日 著者:幅健志
TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)感想
こういうのを読むと、処分する予定の棚板とかアルミパイプとかも何かに使えるんじゃないかと思えてくるのだけど、何しろ自分の大工仕事の工作精度がきわめて低いので期待薄かも(笑) この後『ぼくの住まい論』を読む予定なので、偶然「家」テーマが続くことになる。
読了日:3月6日 著者:坂口恭平
ぼくの住まい論ぼくの住まい論感想
日頃から著者のブログなどを読んでいる身にとってはだいたい「いつもの話」なのだけど、新築した道場兼住居を語りながら、ところどころで、裂け目から噴出してくるような思いが、よい。
読了日:3月9日 著者:内田樹
脱資本主義宣言: グローバル経済が蝕む暮らし脱資本主義宣言: グローバル経済が蝕む暮らし感想
グローバリズム/新自由主義がもたらす諸々の問題を指摘するという点では、よい啓蒙書。しかしそれに対置する価値観として、宇宙の成り立ちだの生命の進化だのを持ち出すのは、むろんそれが原点なのだとしても、あまりにも「そもそも論」すぎて実践性に乏しいのではないかと思う。
読了日:3月13日 著者:鶴見済
いま、憲法は「時代遅れ」か―〈主権〉と〈人権〉のための弁明(アポロギア)いま、憲法は「時代遅れ」か―〈主権〉と〈人権〉のための弁明(アポロギア)感想
冷静な論考という印象。
読了日:3月19日 著者:樋口陽一
息子へ。息子へ。感想
個人的なメッセージなので物足りない部分もあるけど、それを除けばしごく真っ当な内容。これくらいのことが「常識」になってほしいものです。
読了日:3月20日 著者:飯野賢治
和解のために-教科書・慰安婦・靖国・独島 (平凡社ライブラリー740)和解のために-教科書・慰安婦・靖国・独島 (平凡社ライブラリー740)感想
批判すべき相手は、韓国にとっての「日本」、日本にとっての「韓国」ではなく、双方の国家主義、排外的民族主義なのだ、というきわめて真っ当な姿勢。 >日本のいわゆる「良心的知識人」と韓国との連帯は、共通の価値をめざしているかのようにみえながら、韓国からの批判が民族主義に基づく本質主義的なものであり、日本の側はみずからの問題を問おうとする脱民族主義的批判であった点では、アイロニーに満ちた連帯であった。(本書p221~222)
読了日:3月28日 著者:朴裕河
ロードバイク進化論ロードバイク進化論感想
ちょいと他の本に寄り道していたので時間がかかったが、読了。フレームからコンポ、細かなパーツ、ボトルケージからウェアに至るまで、ロードバイクのありとあらゆる側面について歴史をたどった意欲的な本。ただし詰め込みすぎて個々の要素については表面的な記述に留まった感もある。イラストや写真はあるが、仕組みの詳しい説明はないので、興味を覚えたのに物足りない部分については、ウェブなど他の情報源で補うしかない。
読了日:4月1日 著者:仲沢隆
パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集 (ソフトバンク文庫)パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集 (ソフトバンク文庫)感想
ドイツ人の著者によるフィクション(この「酋長」は実在しない)という評価があるようだが、それも込みで読んでもなかなか興味深い。
読了日:4月2日 著者:エーリッヒ・ショイルマン,ErichScheurmann
辺境ラジオ辺境ラジオ感想
偶然のタイミングだけど「祈り」の意味についての話が出てきたのが興味深かった。ときどき暴走するのが面白いなぁ。西氏の結婚への展望をめぐる箇所とか。
読了日:4月5日 著者:内田樹,名越康文,西靖
電池の「なぜ?」がわかると未来が見える (じっぴコンパクト新書)電池の「なぜ?」がわかると未来が見える (じっぴコンパクト新書)感想
あまりにも網羅的で、う~ん、正直なところ得るものは少なかった…。
読了日:4月11日 著者:京極一樹
五〇〇億ドルでできること五〇〇億ドルでできること
読了日:4月21日 著者:ビョルン・ロンボルグ
宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー (114))宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー (114))感想
さすがに情報量が少ない(笑) あっというまに読めるけど。やはり自分にはもう少し「手を動かす」本の方がいいかな。でも続編も読もうかと。しまりす君はあまり可愛くないけど先生が可愛い。
読了日:4月25日 著者:佐藤俊哉
憲法九条の軍事戦略 (平凡社新書)憲法九条の軍事戦略 (平凡社新書)感想
決して空論ではなく現実的な話だとは思うのだけど、何というか、斜度20%が何キロも続くような感じ。本書に書かれているような「九条の軍事戦略」を実現するために、ではまず何から着手するのか。とりあえず2013年5月の時点では、正反対の方向をめざしている安倍政権にお引き取り願うしかない。それでも、ほんの第一歩にすぎない。
読了日:4月30日 著者:松竹伸幸
自転車の教科書自転車の教科書感想
賛否両論ある主張なのだろうとは容易に想像できるけど、ロードに乗り始めたばかりの私にはこの本を評価するような資格はなさそう。でも面白かった。8の字乗りはいずれにせよ有益だろうからマンションの前の私道で練習してみよう。
読了日:4月30日 著者:堂城賢
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)感想
まだ上巻だが、それでも現代文明というか、今の自分の生活を省察するうえでの有益な手がかりはいくつもあるように思う。「崩壊」を単一の要因に帰すことをできるだけ自制しようとする著者の姿勢には好感が持てる。
読了日:5月7日 著者:ジャレド・ダイアモンド
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)感想
原発をめぐる論議の際にも思ったのだが、「今の生活水準を維持するためには」ということを前提としてはいけないのだ、とこの本を読んで改めて思う。だって生活水準を下げなければ「もたない」のだから。自家用車は使わず公共交通機関を利用する(あるいは「自転車」!)、エアコンは極力使わない、24時間365日営業のコンビニも極力使わない、というのは「生活水準の低下」と解されるかもしれないが、文明の後退では全然ないし、いわんや幸福の減少ではまったくないのだから。
読了日:5月13日 著者:ジャレド・ダイアモンド
父・こんなこと (新潮文庫)父・こんなこと (新潮文庫)感想
老親の看取りとか親との葛藤/愛情とか、この本の眼目とされるテーマはいろいろあるのだろうけど、読後いちばん印象に残っているのは「水を甘く見るな」だったりする。読み終わって本棚に収めようとしたら、同じ本がすでにあるのを発見。並べておく。
読了日:5月22日 著者:幸田文
児童労働撤廃に向けて―今、私たちにできること (アジ研選書)児童労働撤廃に向けて―今、私たちにできること (アジ研選書)感想
ちょっとご縁ができた方が執筆陣に名を連ねているので、総論である1章、その方が書いている章、それに日本のこれまでの状況をまとめた最終章のみ読了。倫理的消費という考え方。
読了日:5月28日 著者:
原発事故の理科・社会原発事故の理科・社会
読了日:6月8日 著者:安斎育郎
氷川清話 夢酔独言 (中公クラシックス)氷川清話 夢酔独言 (中公クラシックス)
読了日:6月10日 著者:勝海舟/勝小吉
知っておきたい太陽電池の基礎知識 シリコンの次にくるのは化合物太陽電池? 有機太陽電池でみんなが買える価格に? (サイエンス・アイ新書)知っておきたい太陽電池の基礎知識 シリコンの次にくるのは化合物太陽電池? 有機太陽電池でみんなが買える価格に? (サイエンス・アイ新書)感想
震災・福島第一原発の事故の前に書かれた本。もう少し、製造に要するエネルギー量も含めたコスト面について触れてほしかった気もする。コストの話が、わりとエンドユーザーにとってのコストに偏っているような。
読了日:6月10日 著者:齋藤勝裕
明日からつかえるシンプル統計学 ~身近な事例でするする身につく最低限の知識とコツ (現場の統計学)明日からつかえるシンプル統計学 ~身近な事例でするする身につく最低限の知識とコツ (現場の統計学)感想
私のニーズからすると、さすがにこれはシンプルすぎた。「明日からつかえる」「現場の」という標題に嘘はないと思うが、わりと常識的な内容に終始しているような気がする。計算とかはすべてExcel任せという方針なので、数学的な知識はほとんどまったく必要ない。
読了日:6月14日 著者:柏木吉基
いまから始める心拍トレーニングBOOKいまから始める心拍トレーニングBOOK感想
編者が親戚筋なので読んでみた。面白かったけど、一定の心拍ゾーンをターゲットとして維持できるトレーニング環境が、そもそもあまり多くないよなぁ、という気がする。ふだんの、たとえば自転車通勤とかがどれくらいの負荷なのか、という目安にはなっても。
読了日:6月17日 著者:山と溪谷社
倒れるな倒れるな感想
ラグビーファンなら読むべき本。ウチダ先生や平尾さんなら恐らく否定的に捉えるだろうウェイトトレーニングに熱心に取り組んでいる選手だが、それが実は単に「パワーを付ける」とか「大きな重量を挙げる」ということではなく、自分の身体を理解する、「割っていく」話につながっていくところが面白い。ゴーストライターの力をたぶんほとんど借りていないのか、分かりにくい部分がないわけではないけど、その分かりにくさがいかにも小野澤、という感じの文章。
読了日:6月23日 著者:小野澤宏時
ラグビーに生きるラグビーに生きる感想
小野澤の本とは対照的に、しみじみと泣かせる感じ。双方の人柄を上手く出せているのは編集部の功績かな。もう一冊の坂田さんはあまり馴染みがないのでまだ買っていないのだけど、やはり読んでみるか。
読了日:6月23日 著者:大野均
ノンちゃん雲に乗る (角川文庫 緑 342-1)ノンちゃん雲に乗る (角川文庫 緑 342-1)感想
川本三郎『郊外の文学誌』の「はじめに」で取り上げられていて、再読したくなった。再読とは言っても、読んだのはたぶん小学生の頃。少しも悲しい話ではないのに随所で泣けるのは、懐かしさというよりも、年を取ったからなのだろうなぁ。主人公の年代はだいぶ違うけど、『君たちはどう生きるか』の女子版という気がしなくもない。『君たちは…』も手許にあるので、これもまた読んでみたい。
読了日:6月24日 著者:石井桃子
憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)感想
あとあと言及したくなる論点がいろいろ盛り込まれた、面白い本。図書館で借りたけど、これは買ってもいいな。
読了日:7月2日 著者:長谷部恭男
若者を見殺しにする国 (朝日文庫)若者を見殺しにする国 (朝日文庫)感想
問題提起それ自体は、意義深いものだと思う。が、本書がかなり依拠している堀井憲一郎の著作(だいぶ前に読んだ)もそうなのだけど、「意志のある敵」を想定してしまっている部分で、状況を見誤り、解決への道を見失っているのではないかという気がする。
読了日:7月10日 著者:赤木智弘
構造的暴力と平和 (中央大学現代政治学双書)構造的暴力と平和 (中央大学現代政治学双書)感想
すでに「歴史」となった事象に関する理論的な文献であっても、「いま、ここ」に関する手掛かりがたくさん含まれているのだなぁと感じさせる。それにしても、最後の最後でなにやら神秘主義的な主張が唐突に出てくるのはなぜなんだ……。
読了日:7月24日 著者:ヨハン・ガルトゥング,高柳先男,塩屋保,酒井由美子
もりのへなそうる (福音館創作童話シリーズ)もりのへなそうる (福音館創作童話シリーズ)感想
話はすっかり忘れていたのだけど、自分が「子ども返り」するときの原点はここなのだということを発見(笑)
読了日:7月28日 著者:わたなべしげお
いやいやえん―童話 (福音館創作童話シリーズ)いやいやえん―童話 (福音館創作童話シリーズ)感想
ものすごく教育的なお話かと思っていたのだけど、そうでもなかった(笑) 「いやいやえん」のエピソードは最後の一章だけだったというのが意外。それ以外の、鯨や熊や狼が出てくるところはまったく覚えていなかった。
読了日:7月28日 著者:中川李枝子
発送電分離は切り札か: 電力システムの構造改革発送電分離は切り札か: 電力システムの構造改革感想
日本のような地域独占・垂直統合型の電力体制は、高度成長期にはふさわしかったが、現代のような安定・低成長の時代には不適切であるという分かりやすい話。反/脱原発を主張する本ではなく、原発についてはほんの数ページでさらっと触れられているだけで、もっぱら経済性という観点からすでに「終わっている」扱いであるのが興味深い。上述の経済成長のステージに基づく構造分離が実現していれば、別に原発などなくても電力の安定供給やコストという点でも問題はないのだ。
読了日:7月30日 著者:山田光
原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―感想
読み終わったのに記録していなかった。基本的には悪くないんだけど、何だか水増し感を感じるのはなぜ。
読了日:8月5日 著者:安冨歩
メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故感想
前半は、だいたいにおいて知っている経緯ながら、ここまで危なかったのかと改めて肝を冷やす迫真の叙述。一転、後半はひたすらウンザリ。といっても著者が悪いのではなく、こんな連中が原発を、そして国を動かそうとしているのかという現実にウンザリさせられる。この本では描かれていない部分での「動き」に、もちろん期待を寄せざるをえないわけだが。
読了日:8月6日 著者:大鹿靖明
風立ちぬ風立ちぬ感想
言うまでもなく、映画を観た勢いで30年ぶりくらいに再読。全体としてどうのこうのという以前に心に残る場面がいくつもある、という点では、宮崎駿が作ったアニメと共通しているのかもしれない。こういうのを読むと主人公や主な登場人物に共感できるかどうかなどというのは作品の評価にはほとんどまったく関係ないのだということを改めて実感する。
読了日:8月13日 著者:堀辰雄
ヒルクライマー宣言 自転車で山に登る人 (小学館101新書)ヒルクライマー宣言 自転車で山に登る人 (小学館101新書)感想
と、ちょうど3年前にはこんな感想を書いていたのか、としみじみ思う。初読の日付を見ると、BD-1を買った直後。その後結局、今年3月にはロードレーサーを買い、ヒルクライムレースに出る予定は今のところないものの、峠を走る必要から、何かの参考になるかと本書を読み返すことになった。それも、初読のときは図書館で借りたのに、今回は買ってしまった。
読了日:8月21日 著者:高千穂遙
踊ってはいけない国、日本 ---風営法問題と過剰規制される社会踊ってはいけない国、日本 —風営法問題と過剰規制される社会感想
この種の編集本にありがちだけど、玉石混淆という印象。クラブカルチャーの現場に近い人の文章/言葉は、リアルなわりに説得力に乏しく、宮台・千葉・開沼といったあたりの言葉には、何というか生身の身体がまるで感じられない。佐々木・津田・坂口あたりがしっくり来る。特に佐々木。彼の本は確か1冊買っただけで読んでいないのだけど、面白いのかも。
読了日:8月21日 著者:磯部涼
銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)感想
家人につられて読んでみた。スペースオペラという印象。用兵や戦闘の展開なんかは、妙な言い方だけど史実をベースにしている感じ。ナポレオンのロシア遠征やトロイの木馬。
読了日:8月25日 著者:田中芳樹
君たちはどう生きるか (岩波文庫)君たちはどう生きるか (岩波文庫)感想
小中学生の頃に読んだのだと思う。確かに子ども向けの本ではあるのだが、この本の価値は大人になってから読み返さないと分からないのではないか。名著としか言いようがない。
読了日:8月25日 著者:吉野源三郎
銀河英雄伝説〈2〉野望篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈2〉野望篇 (創元SF文庫)感想
せっかく読み始めたのだから全部読む(笑)
読了日:8月30日 著者:田中芳樹
銀河英雄伝説〈3〉雌伏篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈3〉雌伏篇 (創元SF文庫)感想
査問会のあたりが好き、とかいうのはやはり変な奴なんだろうな(笑)
読了日:8月31日 著者:田中芳樹
銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)感想
「伝説を語り継ぐ者としてのユリアン」という位置付けが見えてきた気がする。http://blog.tatsuru.com/2010/11/22_1626.php
読了日:9月2日 著者:田中芳樹
勝てないアメリカ――「対テロ戦争」の日常 (岩波新書)勝てないアメリカ――「対テロ戦争」の日常 (岩波新書)感想
結局こういう戦争をやっていると、相手としては米国本土での破壊工作しか手段がなくなってくるわけで……あまり分のいい話ではないな。「テロリスト」の拠点としてソマリアやイエメンなどの名前が挙がっているけど、米国国内の破綻した地域(最近話題になったデトロイトとか)も危ないんじゃないかという気がする。
読了日:9月2日 著者:大治朋子
銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)感想
ライトノベル的な薄さや粗さはあるけど、いまや現実の方が薄っぺらな感じで、その分、この本で説かれる民主制/独裁制みたいなテーマが痛切に感じられるようになっている皮肉な状況。本巻は「決戦」ではあるが、どうせ(?)痛み分けみたいな感じで幕引きだろうと思っていたら、全体の状況が思わぬ展開に。
読了日:9月3日 著者:田中芳樹
銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇 (創元SF文庫)
読了日:9月7日 著者:田中芳樹
銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇 (創元SF文庫)
読了日:9月8日 著者:田中芳樹
銀河英雄伝説 〈8〉 乱離篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説 〈8〉 乱離篇 (創元SF文庫)
読了日:9月9日 著者:田中芳樹
銀河英雄伝説〈9〉回天篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈9〉回天篇 (創元SF文庫)
読了日:9月10日 著者:田中芳樹
銀河英雄伝説 〈10〉 落日篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説 〈10〉 落日篇 (創元SF文庫)感想
読了。落としどころはやはり立憲君主制なのか……。
読了日:9月11日 著者:田中芳樹
秩序の夢: 政治思想論集秩序の夢: 政治思想論集感想
丸山真男や和辻哲郎といった名前ならまだしも馴染みがあるが、北畠親房だの熊沢蕃山だのになると、もはや「そういえば受験の日本史でそんな名前が出てきたなぁ」くらいの認識しかない。西洋哲学なら少しは読んでいても朱子学となると「はぁ?」となってしまう自分の偏り具合が情けない。しかしそんなアウェイな世界でもしみじみと読み耽ってしまう。装幀だけでなく、本としての佇まいが美しい本。もっと本を読みたくなる本。いや、褒めすぎだな。
読了日:9月17日 著者:苅部直
哲学の自然 (atプラス叢書03)哲学の自然 (atプラス叢書03)感想
以前は、ソクラテス以前の哲学者への関心というのはよく理解できなくて、いかにも哲学「業界」の衒学趣味のように感じていたのだけど、最近少しずつ、そうでもないのかなという気がしてきた……。などと、この本の直接の内容にはあまり関係のない感想。
読了日:9月22日 著者:中沢新一,國分功一郎
菜穂子菜穂子感想
思うこと・感じることをほとんど表に出すことのないまま、内省的に煩悶する主人公たち。日本のある程度知的な部類に属する「近代人」の一つのあり方だったのだろうなぁという感じ。
読了日:9月25日 著者:堀辰雄
オリンピックの身代金(上) (角川文庫)オリンピックの身代金(上) (角川文庫)感想
1964年の東京五輪直前の時期を舞台として、格差拡大のなかで犠牲を下層に押しつけつつ、五輪の恵沢を受けて繁栄する東京…という構図を「2008年の時点」で描くのは、もちろん2020年(それ以前に2016年)東京五輪招致を(批判的に)念頭に置いているのだろうけど、震災・原発事故以前の時点で「その一方で置き去りにされる東北」という設定が選ばれていたことに、的中してしまった不幸な予言を感じつつ、別にそれは予言でも何でもなくてこの国の構造的なものだ、とも思う。引き続き下巻へ。
読了日:9月29日 著者:奥田英朗
オリンピックの身代金(下) (角川文庫)オリンピックの身代金(下) (角川文庫)感想
通常「クライマックス」と称されるであろう場面が終わった後、「その翌日」の描き方に何とも言えない凄みを感じる。ある意味、この作品で本当に壮絶で戦慄を覚えるのはラストの数ページなのだ。この小説の「2013年版」を出すとすれば、すべてこのままで、最後に一行、「それから、50年が経った」とだけ付け加えたい。
読了日:10月1日 著者:奥田英朗
修業論 (光文社新書)修業論 (光文社新書)感想
ウチダ先生の本はこれまでたくさん読んでいるので、「どこかで読んだ話」が繰り返し出てくるのは事実なのだけど、前に読んだ本を読み返さなくても、同じ話から新たな意味を引き出す機会が得られるとも言える(笑) この本のなかでは、一番短い第3部「現代における信仰と修業」が一番よかったかも。最後の司馬遼太郎論はこれまでの著作やブログではほとんど読んだ覚えのない話。
読了日:10月2日 著者:内田樹
シリア アサド政権の40年史 (平凡社新書)シリア アサド政権の40年史 (平凡社新書)感想
わけわからん、というのが読後の感想。著者が悪いわけではなく、状況が複雑すぎるのだ。基本的にアサド政権に同情的な視点から書かれているので、昨今の報道を相対化するにはいい本だと思う。
読了日:10月11日 著者:国枝昌樹
気仙沼に消えた姉を追って気仙沼に消えた姉を追って感想
故郷=気仙沼とのつながりを取り戻す(故郷にしがみつく)ために、気仙沼という街と、その震災被害について話を聞き、記述しよう……という著者の個人的=職業的な選択に感じ入る。次に読んだ本についてもそうなのだけど、個人的な問題意識と職業的な「やるべきこと」が重なる人/状況への羨望もあり、重なっていないことの気楽さもあり。 そういえば、『駅伝がマラソンをダメにした』で有名(?)な著者だが、同い年だったんだなぁ。この本に出てくる芝居関連の話が、どんぴしゃで共通体験。
読了日:10月18日 著者:生島淳
フタバから遠く離れて――避難所からみた原発と日本社会フタバから遠く離れて――避難所からみた原発と日本社会感想
今週末に、この本で語られている旧騎西高校=双葉町の避難所で歌う予定があるので、読んでみた。避難所という一つの切り口から、さまざまな論点に展開させていく良書。結局は、この社会において民主主義はどうあるべきなのか、という話につながっていく。そこで次に読む本が決まった。
読了日:10月21日 著者:舩橋淳
来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書)来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書)感想
これだけ憂鬱で厄介な主題について、明快かつ楽しげに語れるのが、「知性のもたらす明るさ」を感じさせて素敵だ。きっかけは都道建設問題だけど、そこから入って「根源的に考える」という哲学者の本領が発揮されるので、それ以外の、たとえばもっと国政レベル(脱原発とか)の問題についても十分に援用可能なパラダイムが提示されている。そしてこの本を読んだことで、次に読む本も決まった。スタンスとしては共通するものがあるが、住民側ではなく、行政側から書かれた本。
読了日:10月24日 著者:國分功一郎
やさしいライオン (フレーベルのえほん 2)やさしいライオン (フレーベルのえほん 2)
読了日:10月25日 著者:やなせたかし
闘う区長 (集英社新書)闘う区長 (集英社新書)感想
國分功一郎『来るべき民主主義』と合わせて読むと興味深い。当たり前のことだが、こういう首長/議員を選ぶというのも、大切な(そして最も手軽な)一つの手段。
読了日:10月27日 著者:保坂展人
シークレット・レース (小学館文庫)シークレット・レース (小学館文庫)感想
ドーピングという陰鬱な問題に正面から切り込む内容であるにもかかわらず、それでも読んでいてサイクルロードレースが愛おしく思えてくるのが不思議。このスポーツやスター選手に対する幻滅というのを意外なほどに感じなかった。「当時、ドーピングをしないで勝てたのか」という疑問に対するハミルトンの答えが、ロードレース観戦のポイントでもあるようで興味深い。ドーピング問題に限らず、ロードレースを観戦するうえで貴重な情報がたくさん含まれている本。
読了日:10月30日 著者:タイラーハミルトン,ダニエルコイル
想像ラジオ想像ラジオ感想
“「聞こえていた言葉がしだいにか細くなってゆき、やがて聞こえなくなる」まで耳を澄まし続けるというのが服喪儀礼である。” (「声を聴くことについて」http://blog.tatsuru.com/2010/10/28_1334.php)
読了日:11月4日 著者:いとうせいこう
アラフォーからのロードバイク  初心者以上マニア未満の<マル秘>自転車講座 (ソフトバンク新書)アラフォーからのロードバイク 初心者以上マニア未満の<マル秘>自転車講座 (ソフトバンク新書)感想
ふだんよく買い物をしているY’s Roadの別店舗の方が書いた本。「帰ってきたらすぐにチェーンを乾拭きする」「曲がるときは膝を使う」というのが参考になった。ホイールを替えるのは興味あるけど、別に自分のは、性能を追求する自転車ではないからなぁ……。
読了日:11月4日 著者:野澤伸吾
終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))感想
読んでいてひたすらウンザリする本。というのも、冒頭の「日本語版への序文」で著者が明らかにしているように、この作品はベトナム戦争の暗喩となることを想定して書き始められたものだからだ。つまり、従軍経験者にとってベトナム戦争はこのようにひたすらウンザリするものだったのだろう。作品が完結したときにはまだベトナム戦争は終わっていなかったということなので、作品がこういう幕切れを迎えるのは思わぬ予言的中ということなのかもしれないが。
読了日:11月8日 著者:ジョー・ホールドマン
イワナの夏 (ちくま文庫)イワナの夏 (ちくま文庫)感想
私自身に釣りの趣味はないのだけど、味わい深く読める。本書解説では「美しい文学作品」と評しているけど、そのとおりだ。フィクションだけが文学作品ではないのだから。この本は脱/反原発のデモ仲間が貸してくれたのだけど、なんというか、ありがたいことに、いま付き合いのあるデモ仲間には、金銭的な意味ではない「豊かさ」を下地に持っている人が多い気がしていて、そういう「豊かさ」を渓流釣りというジャンルで表現している作品だと思う。
読了日:11月13日 著者:湯川豊
時間と自由 (岩波文庫)時間と自由 (岩波文庫)感想
むむむ、難しい! しかし大学生の頃はこれを「ふんふん、なるほど」とすらすら(ってほどではないかもしれないけど)読めていたのだ。まぁカントも含めて、そういう流れのなかで読んでいたから、頭のなかがそれに馴染んでいるっていうのが大きかったんだろうなぁ。難しいとは言っても、この本の基本的な考え方は理解しているので、「あ~、もう分かっているから七面倒くさい説明はもう止めて!」という感じなのだけど。
読了日:12月5日 著者:ベルクソン
なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか (小学館101新書)なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか (小学館101新書)感想
う~ん、よくまとまってはいるけど、ビジネス本の書き手という著者の立ち位置がそうさせるのか、どうも男性・女性の位置付けがステレオタイプに過ぎるように思う(まぁある意味それもタカラヅカの魅力とオーバーラップしているのかもしれないけど)。この本を先に読んでいたら宝塚歌劇を観に行こうという気にはならなかったかもしれない。入口としては「ZUCCA×ZUCA」の方が優れている気がする。
読了日:12月8日 著者:中本千晶
私の百人一首 (新潮文庫)私の百人一首 (新潮文庫)感想
著者の、和歌への愛情だけではなく、(小倉百人一首撰者である藤原定家をはじめとして)昔の「和歌を愛していた人たち」への愛情も感じられるところが良い。「たいして良い歌とも思えないが、とはいえ、こういうところが評価されていたのだろう」といった趣旨の表現にそれを感じる。百人一首以外に同じ作者の歌が紹介されていることも多く、そちらにむしろいい歌を見出すことがあるのも楽しい。一例を挙げれば、在原業平の「月やあらぬ……」の歌など。
読了日:12月10日 著者:白洲正子
離島の本屋 22の島で「本屋」の灯りをともす人たち離島の本屋 22の島で「本屋」の灯りをともす人たち感想
「離島」+「本屋」というどう考えても魅力的なテーマ。とりあえず、近場とも言える伊豆諸島や、サイクリングロードとして有名な「しまなみ海道」が経由している島々あたりを訪れたくなった。どの章も終わり方がちょっと感傷的に過ぎるのが気になるけど、寛容に捉えれば、そうならざるをえないテーマとも言える。取材の後、この本にまとめるに当たって改めて連絡を取ってみた様子も付記されているのだが、その後閉店してしまったという例が一つならずあるのが寂しく、離島に限らず書店が置かれている厳しい状況を思わざるをえない。
読了日:12月12日 著者:朴順梨
かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)感想
基本的にはこの問題についての論点はすでにほぼ出尽くしているのだろうと推測される。この本で取上げられていないのは、「どちらを変数と見るかによって、どちらを後ろに置くかは変ってくる」という点であり、その意味ではかけ算の「正しい」、あるいは「自然な」順序が語りうるとしても、それは多分に文脈依存であるような気がする。
読了日:12月16日 著者:高橋誠
福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと感想
「私たちは古来、人類が有していた自然にたいする畏れの感覚をもう一度とりもどすべきであろう」という結論はあまりにも陳腐と言えば陳腐だが、科学技術史を踏まえてその結論に至る過程は論理的で説得力がある。脱/反原発の立場をとる者として読めば当たり前のことしか書いていないとも言えるが、それでも読む価値はある。ちょっと孫引きが多い印象を与えるのが残念だが、福島第一原発事故を受けた緊急出版という趣ゆえ、そのへんはしかたがないのかもしれない。
読了日:12月17日 著者:山本義隆
ラグビー「観戦力」が高まるラグビー「観戦力」が高まる感想
う~ん、中途半端という印象が強いかなぁ。観戦初心者には不親切な一方で(必要な情報は網羅されているのだけど整理が今ひとつ)、長年観てきた者にとっては、面白いと思う部分があちこちあるのに突っ込みが足りない、という感じ。
読了日:12月19日 著者:斉藤健仁
冷泉家 八〇〇年の「守る力」 (集英社新書)冷泉家 八〇〇年の「守る力」 (集英社新書)
読了日:12月25日 著者:冷泉貴実子
眠れなくなる宇宙のはなし眠れなくなる宇宙のはなし感想
手をつけていなかった同シリーズの残り2冊を読むべく、まずこれを再読。おお、最初に読んだのはもう4年前か。というか、4年前にはもう読書メーター使っていたのか。それはさておき、これほど易しく書かれている本なのに、それでも再読の方が理解が深まる気がする。最近聴くことが多くなったBump of Chickenの歌詞が引用されているのにはビックリ。
読了日:12月26日 著者:佐藤勝彦
ますます眠れなくなる宇宙のはなし〜「地球外生命」は存在するのかますます眠れなくなる宇宙のはなし〜「地球外生命」は存在するのか感想
「生命」スケールにまで話が近づいているせいか、前作よりもさらに取っつきやすい印象。そういえば一時期SETI@Homeに参加していたなぁ。『幼年期の終わり』を図書館で予約してしまった。引き続き、第三作へ。
読了日:12月29日 著者:佐藤勝彦
気が遠くなる未来の宇宙のはなし気が遠くなる未来の宇宙のはなし感想
タイムスケールということについて考えさせられる。たとえば読売新聞の社説だかで「放射能は1000年ほどで無害なレベルになる」などと書かれていると、それ自体の事実誤認もさることながら、そもそも1000年=30世代以上という時間(現代から遡れば平安後期くらいか)を軽々しく扱ってしまう歴史感覚の貧困に呆れかえるわけだが、その一方で本書のような話では10億の34乗(だったかな?)といった時間が扱われるわけで、そうすると10万年後など些細な時間のような倒錯的な感覚が生じてくる。
読了日:12月30日 著者:佐藤勝彦

読書メーター

2012年に読んだ本

2012年の読書メーター
読んだ本の数:93冊
読んだページ数:26937ページ
ナイス:204ナイス
感想・レビュー:91件
月間平均冊数:7.8冊
月間平均ページ:2245ページ

蕎麦打蕎麦打感想
心弾む本。蕎麦打ちの修業時代に入ってからよりも、むしろ八ヶ岳での生活を始めるあたりが印象に残っている。子どもの頃から模型制作に始まり、物作りが好きだったというあたりに、「光るマーブルチョコおむすび」を思い出してニヤリ。
読了日:12月26日 著者:加藤 晴之
金曜官邸前抗議 ---デモの声が政治を変える金曜官邸前抗議 —デモの声が政治を変える感想
参加者の一人として、興味深く読む。あの抗議行動が、いかに微妙なバランスの上に成り立っているのか、よく分かる。
読了日:12月23日 著者:野間 易通
それでも自転車に乗り続ける7つの理由それでも自転車に乗り続ける7つの理由感想
5年前の本ということで、それ以降の著書を読んでいる者にとっては、やや古さを感じさせる部分もある。しかし、後半の道路交通法改悪阻止の動きを綴った部分はなかなか読ませる……。
読了日:12月19日 著者:疋田 智
原発ゼロ社会へ! 新エネルギー論 (集英社新書)原発ゼロ社会へ! 新エネルギー論 (集英社新書)感想
有用な知見はいくつか得られる本。しかし基本的に「(原発推進派はもちろん、脱原発派も)自分と同じ立場以外の者はダメ」という論調なので、説得力は大幅に低下している。伝統的左翼のセクト主義かな。そのわりに「あとがき」では、そういうダメな脱原発派も大勢含んでいるはずの官邸前抗議行動の参加者への連帯が表明されているのが、むしろ意外なくらい。しかし「あとがき」に書かれている、その官邸前抗議行動での著者の行動からも、いかにも古い活動家だなぁという印象が…。こういう人のパワーをどうやって有益無害に活かしていくか。
読了日:12月11日 著者:広瀬 隆
原発大国フランスからの警告 (ワニブックスPLUS新書)原発大国フランスからの警告 (ワニブックスPLUS新書)感想
電力の75%を原発に依存するフランスが、福島第一原発の事故に大きな衝撃を受けながらも、なお原発維持の姿勢を崩さない理由が、この本を読むと分かる。そして、その条件のすべてが日本には適用できない、ということも。好著だが、あえて注文を付けるなら、日本語の地の文はまともなのに、フランスの原子力関係者の発言など、フランス語から日本語への翻訳があまりよろしくない。
読了日:12月7日 著者:山口 昌子
東京をどうするか――福祉と環境の都市構想東京をどうするか――福祉と環境の都市構想感想
前回の都知事選の前に読もうと思って買ったのに手を着けられていなかったのだが、今回読んでも得るところの多い本。ただし、生真面目な論文集で、一般の読者を想定しているとは言いがたい。研究者・学生・政策担当者向けか。読んで良かったとは思うけど、どこまで自分の中で咀嚼・消化できているか、と言われると厳しいなぁ。
読了日:12月4日 著者:
サイクリング・ブルースサイクリング・ブルース感想
確かに旅に出たくなる。
読了日:11月27日 著者:忌野 清志郎
日本人の9割に英語はいらない日本人の9割に英語はいらない感想
最終的な主張のほとんどには賛同できるのだが、そこに至る論旨が乱暴すぎる。表題の「9割」を導き出す計算(統計データに基づいていると著者は主張するが)もいいかげん。短時間で読めるけど、あまり読む意味はないかも。
読了日:11月25日 著者:成毛眞
原発から見えたこの国のかたち (-)原発から見えたこの国のかたち (-)感想
「いま読むと少し感情的に過ぎる気もするなぁ」と思いつつ読んでいたのだけど、途中で気がついた。自分が鈍感になっているのだ、と。
読了日:11月14日 著者:鈴木 耕
独裁体制から民主主義へ: 権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫)独裁体制から民主主義へ: 権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫)感想
形式的には民主的な制度が整っている日本でこの本に書かれている知見を活かしていくには相当の応用力が必要になるとは思うが、それでもいろいろ得るところの多い本。図書館で借りたのでさらっと読んだだけだが、これは手元に置いておく価値があるかも。
読了日:11月12日 著者:ジーン シャープ
人間そっくり (新潮文庫)人間そっくり (新潮文庫)感想
虚構の劇団「イントレランスの祭」を観て、ふとこれを連想したのだけど、読んでみたらあまり関係なかった(関連しているかなというフレーズが少しだけあったくらい)。しかし、ずーっと一室で展開される対話はすごく演劇的。春先に安部公房の作品を続けて読んでいたせいか、この文章をすらすらっと読めてしまう自分が怖い(笑)
読了日:11月5日 著者:安部 公房
脱原発とデモ: そして、民主主義脱原発とデモ: そして、民主主義感想
初心忘るべからず。
読了日:10月30日 著者:瀬戸内 寂聴,鎌田 慧,飯田 哲也,宮台 真司,いとう せいこう,小熊 英二,毛利 嘉孝,鶴見 済,稲葉 剛,松本 哉,山本 太郎,雨宮 処凛,柄谷 行人,山下 陽光,二木 信,中村 瑠南,原発いらない福島の女たち,落合 恵子,小出 裕章,平井 玄
レヴィナスと愛の現象学 (文春文庫)レヴィナスと愛の現象学 (文春文庫)感想
読み進むにつれて難解な話になっていくし、こちらの理解度もそれに合わせて落ちて行っているはずなのだが、なぜか読む勢いは増していくという不思議な本。
読了日:10月30日 著者:内田 樹
夏への扉[新訳版]夏への扉[新訳版]感想
超有名作品なのに実は未読だった。ねこ大活躍。なーう。内容については、タイムトラベルのパラドックス解消についての部分にちょっと強引な感じはあるが、まぁ許容範囲かな。「どこかで会ったことがあるとよく言われる」の伏線が面白い。
読了日:10月21日 著者:ロバート・A・ハインライン
政治学 (ヒューマニティーズ)政治学 (ヒューマニティーズ)感想
100頁ちょっと、パンフレットと言ってもいいほどの規模だが、内容は濃い。滋味溢れる、という感じ。体系的な構成ではないが、周囲からじわじわと包み込むように寄せていくうちに「政治」の輪郭が浮かび上がる。「偽善」の考察は素敵。この本を読んですぐにどうこうということはないだろうけど、折に触れて繰り返し読みたい本。
読了日:10月18日 著者:苅部 直
「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書)「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書)感想
著者自身も認めているように、これという正解にたどり着けない、敢えて言うなら歯がゆい本。しかし著者の根っこにあるのは、「『主人から正解を与えられる奴隷』でいるくらいなら、間違える自由市民でいるべきです」(172頁)という明朗快活な民主主義への信念と、著作権をめぐる問題においては「(権利者か利用者という立場ではなく)いつでも『文化の側』に立ちたいと思っています」(192頁)という宣言である。学生時代に芝居仲間として少しばかり付き合いのあった人がこういう姿勢でいるというのはとても嬉しい。
読了日:10月16日 著者:福井 健策
自転車ぎこぎこ自転車ぎこぎこ感想
就寝前に少しずつ読み進めて読了。前作同様、愉快な文体。
読了日:10月14日 著者:伊藤 礼
巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))感想
時空をあっさり飛び越えちゃうスケールの大きさと平行して、地球上のちまちました政治闘争が絡むのが面白い。構図として陰謀論になってしまっている点など、突っ込みどころはいろいろあるのだけど、それを補って余りある傑作だと思う。
読了日:10月13日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)感想
続編。やや詰め込みすぎの感がある。それにしても三作通じての本筋と離れた感想にはなるが、時空を超えた卓抜な想像力の一方で、もっと身近で日常的な部分については変化を想定していないところが、逆に興味深い。たとえば、欧州は統合が進んでいる様子が窺われるがソ連は相変わらずソ連だとか、公共の場でタバコを吸う習慣がそのまま残っていたりとか。
読了日:10月11日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
星を継ぐもの (創元SF文庫)星を継ぐもの (創元SF文庫)感想
ずいぶん前(10年以上?)に読んだのだが、家人に勧めた関係で再読。けっこうよく覚えていた。当時は気づかなかった作品中の矛盾(科学的に誤っているというだけの意味ではなくて、この作品のなかの設定としても矛盾している)に一点気づいてしまったというのは、読者としての進歩なのだろうか?(笑) とはいえ傑作であることには変わりないので、これまた既読の続編・続々篇へ。それにしても、この「読者メーター」だけ見ても、この作品が盛んに読み継がれていることが分かって、なんだか嬉しく、楽しい。
読了日:10月8日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
街場の読書論街場の読書論感想
ウチダ先生からたくさんの「パス」を受けた感じ。もちろん過去に読んだことのある文章も多いのだけど、それでも捌ききれない(笑)
読了日:10月4日 著者:内田樹
二年間の休暇(下) (岩波少年文庫)二年間の休暇(下) (岩波少年文庫)感想
あっというまに読了。小学生の頃に読んでいた本をこうして読み返せるというのはいいものだな。後半の後半の展開はちょっと急ぎすぎのような気がしてあっけなかった。やはり島での生活を何とか構築していく部分がいちばん面白いのかもしれない。
読了日:9月25日 著者:ジュール・ヴェルヌ
二年間の休暇(上) (岩波少年文庫)二年間の休暇(上) (岩波少年文庫)感想
子どもの頃、何度か繰り返して読んだ本。さすがに、印象的な場面はいくつかはっきり覚えている。ところが、最終的にどのような展開になるのかはまったく覚えていない。読み進めていくうちに思い出すかな。下巻も楽しみ。
読了日:9月24日 著者:ジュール・ヴェルヌ
エディー・ジョーンズの監督学 日本ラグビー再建を託される理由エディー・ジョーンズの監督学 日本ラグビー再建を託される理由感想
エディさん自身、あるいはエディ・ジャパンや彼が指揮したサンゴリアスについてというだけでなく、何というか、現代ラグビーのトレンドの推移についても知見が深められる本。冒頭いきなりの誤字に凹むなかれ。
読了日:9月23日 著者:大友 信彦
ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)感想
これはよい本。最近の、そしてより話題になっている『ネットと愛国』も面白かったが、痛切さという点ではこちらの方が上回る。性急な「悪者」糾弾ではなく、「こうすべきだ」という簡単な答えも提示しない。読者に考えることを迫る優れたルポルタージュだと思う。中国人研修・実習生とブラジル日系人労働者という二つの切り口が、好対照でありつつ、最後に微妙に絡んでくるという構成が巧みだ。
読了日:9月21日 著者:安田 浩一
白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)感想
うむ、名作(好き嫌いはかなり別れそうだけど)。白鯨との最初の遭遇での描写、その静謐さが本作のクライマックスという気がする。映画化するなら(されているだろうけど)、この場面は台詞も音楽もなく、ただ波と風と、ボートの軋みと、それだけで数分間引っ張りたい。むちゃくちゃ緊張感高まると思う。
読了日:9月19日 著者:ハーマン・メルヴィル
白鯨 中 (岩波文庫)白鯨 中 (岩波文庫)感想
違う文体で挿入される「別の船のエピソード」がけっこう面白い。しかしその一方で本筋(?)の航海はいよいよ佳境へ……。さて下巻だ。
読了日:9月13日 著者:ハーマン・メルヴィル
白鯨 上 (岩波文庫)白鯨 上 (岩波文庫)感想
「夏休みの読書」はコレ。訳文に、格調高い文章にしたいという「力み」が少しばかり感じられるが、面白い。引き続き中巻へ。
読了日:9月10日 著者:ハーマン・メルヴィル
将棋の子 (講談社文庫)将棋の子 (講談社文庫)感想
エッセイ、ドキュメンタリー、小説のどれとも言いかねる作品。やや感情に酔っていると思わせる部分もあって、読んでいてちょっと辟易することもあるが、それだけに、と言うべきか、気持ちはよく伝わってくる。この作品のいわば「結論」は、とてもよい。
読了日:9月8日 著者:大崎 善生
論語なう ~140文字でわかる孔子の教え~ (マイナビ新書)論語なう ~140文字でわかる孔子の教え~ (マイナビ新書)感想
論語は、前に注釈書(たぶん講談社学術文庫の宇野哲人『論語新釈』)を通読したのだけど、これもずいぶん前の話なので、なかなか新鮮な印象で読めた。苦労人としての、生身の人間としての孔子を紹介する部分も面白かったが、ひとまず、最初の定番フレーズのところだけ立ち読みしてもいいかもしれない。「なう」文体がどうか、という賛否はあろうが、まぁこれも「あり」だと私は思う。
読了日:8月29日 著者:牧野 武文
銀輪の巨人銀輪の巨人感想
趣味として自転車関係の本はいろいろ読んでいるし、翻訳屋という立場からは「低価格競争に巻き込まれず高付加価値の商品で利益率を上げる」みたいなビジネス戦略は珍しくもないのだけど、その両者がこうも見事に融合する分野があったとは。日本の自転車市場は規模がでかいだけに惰性が大きすぎて、低速ママチャリの歩道走行中心という文化はなかなか代わっていかないだろうなという気がする。この惰性の大きさというのは自転車市場/文化に限った話ではないけど。
読了日:8月27日 著者:野嶋 剛
戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)感想
面白かった。日本の戦後政治を対米従属/自主路線の二項対立で読み解いていく本。日本政治のさまざまな動きの裏に「米国の圧力」を見ていく態度は一見すると陰謀論のようだが、米国側の視点から「戦後の対日政策の推移」と捉えてみれば、十分に合理的だし、「揺れ」「ぶれ」が見られるところに現実味が感じられる。この著者の本は他に3冊読んでいるが(新書ばかりだが)、それらの著作では文章の拙さが目についたが、この本に限っては力の入れ方が違うのか、ほとんど気にならなかった。……というわけで本書はお勧めではあるが、
読了日:8月22日 著者:孫崎 享
脱原発を決めたドイツの挑戦  角川SSC新書  再生可能エネルギー大国への道脱原発を決めたドイツの挑戦 角川SSC新書 再生可能エネルギー大国への道感想
これは良書。脱原発・脱炭素・再生可能エネルギーへの転換がいかに困難か、そしていかに消費者・産業界にとって大きなコスト負担になるかを丁寧に説明している。もちろん、主眼は(そして私自身の関心も)「なぜ『それでもなお』なのか」という部分にあるのだが。
読了日:8月20日 著者:熊谷 徹
ドイツは脱原発を選んだ (岩波ブックレット)ドイツは脱原発を選んだ (岩波ブックレット)感想
本文は悪くないが、確かに解説は今ひとつだった。しかし本文は悪くないとは言っても、これを読むなら、熊谷徹が書いた新書を読む方がいいような気がする。
読了日:8月19日 著者:ミランダ・A・シュラーズ
日本人の心のゆくえ日本人の心のゆくえ感想
出版からやや日が経っているので、扱われているのは阪神淡路大震災やオウム真理教事件といったあたりだが、それでも十分に現実感を伴って読ませる内容。歯切れの悪さは、むしろこの本の美点だと思う。
読了日:8月18日 著者:河合 隼雄
それでも、日本人は「戦争」を選んだそれでも、日本人は「戦争」を選んだ感想
「ああそうか、だから日本人は戦争を選んだのね」という単純な答えが得られる本ではない。「ああ、この時点でこうしていればよかったのか」ということも分からない。むしろ歴史というのはそう単純なものではない、ということを教えられる本。
読了日:8月8日 著者:加藤 陽子
ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)感想
「スゴ本」ブログで興味を惹かれたのだけど、期待したほどではなかった。安部公房「笑う月」の方が現実が揺らぐ感じが強い。
読了日:8月1日 著者:ゾラン・ジフコヴィッチ
質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)感想
ブルーバックスの常だが、最初は面白く読み始めても、途中からちんぷんかんぷんになる。それでも最後まで興味深く読めた。何とか読ませようとする著者の力量は相当なのだと思う。そもそもこのジャンルがすんなり頭に入ってくることなんてありえないのだし(笑) 何というか、自分にはついて行けない世界なのだけど、人間の頭脳がこれだけのことを考えられるという、そのこと自体に感動を覚える。
読了日:8月1日 著者:橋本 省二
不愉快な現実  中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)不愉快な現実 中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)感想
果たしていつ頃の日本人であれば(といっても現代的な意味での「日本人」が誕生したのはたかだかここ150年くらいだと思うが)、「日本は世界においてたいして重要な国ではない」という認識を素直に受け入れられたのだろう、という気がする。そのような諦観のもとで、いかに幸福に暮らし、近隣諸国と仲良くやっていくか、が問われている……そう思わせる本。直前に読んだ『日本の国境問題』よりも文章が整っていて読みやすい印象を受けた(それでもところどころ気になる点はあるが)。
読了日:7月25日 著者:孫崎 享
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)感想
有益と思われる情報は多いし、全体としての論調は納得できるものなのだが、残念ながら文章が…。校正者・編集者の責任か。日々の職場での同僚の嘆きから察するに、官僚出身だとこういう文章を書くようになるのかなぁ。
読了日:7月18日 著者:孫崎 享
毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる! 月間たった80㎞で2時間46分! 超効率的トレーニング法 (ソフトバンク新書)毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる! 月間たった80㎞で2時間46分! 超効率的トレーニング法 (ソフトバンク新書)感想
「クロストレーニングかぁ。ランの距離は少なくていいと言っても、バイクで走る距離が半端じゃないんだろうなぁ」と思いつつ読み始めたのだが、提示されているトレーニングプランを見ると、むむ、これならけっこう現実的か? プランの対象が「目標サブ4」というのもまさに私向き。図書館で借りて読んだけど、自転車にも積極的に乗りたい自分としては、これは買ってもいいな。
読了日:7月13日 著者:吉岡 利貢
進化論の何が問題か―ドーキンスとグルードの論争進化論の何が問題か―ドーキンスとグルードの論争感想
グールドは『フルハウス』だけ、ドーキンスに至っては1冊も読んでいないのだけど、特に読みにくい感じがしなかったのは著者の力量か。それにしても、信頼できるライバルとの論争というのは素敵だ。
読了日:7月12日 著者:垂水 雄二
ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて (g2book)ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて (g2book)感想
苦い読後感の残る、しかし良書。「では、どうするのか」という、この先とりうる可能性については読者の思索に委ねられている。
読了日:7月10日 著者:安田 浩一
日本語と外国語 (岩波新書)日本語と外国語 (岩波新書)
読了日:7月9日 著者:鈴木 孝夫
日本は再生可能エネルギー大国になりうるか (ディスカヴァーサイエンス) (DISCOVER SCIENCE)日本は再生可能エネルギー大国になりうるか (ディスカヴァーサイエンス) (DISCOVER SCIENCE)感想
前半は表題に反して(帯文には書いてあるが)福島第一原発事故の総括(著者は民間事故調の座長)。しかし、この部分がよくまとまっていて良い。後半は本題に入る。電気をやたらに使う生活(文化と言ってもいいか)に対する問い直しが欠落しているけど、そういう哲学的な本ではないので、これは無い物ねだりか。再生可能エネルギーに切り替えつつも、現状どおりの「豊かな生活」は可能であると読める。その意味で、広く賛同を集めやすいと言えるかもしれない。
読了日:7月4日 著者:北澤 宏一
自転車依存症自転車依存症感想
面白かったけど、ランドナー志向は自分にはないなぁ。
読了日:7月2日 著者:白鳥 和也
日本語の古典 (岩波新書)日本語の古典 (岩波新書)感想
特に古代~中世については高校時代の古文の授業や大学受験の過程で接した作品も多い。当時も古典は好きだし得意ではあったのだが、あの頃にこの本を読んでいたら、ますます楽しめただろうと思う。中学生・高校生に読んで欲しい本。R指定的な要素もあるにはあるが、そういうのを読んでこそ(笑)
読了日:6月27日 著者:山口 仲美
人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)人種とスポーツ – 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)感想
面白かった。「『黒人』(アスリート)は先天的に速く、強い」という言説の検証。その言説そのものがどのような歴史的・社会的な文脈のなかで生成されてきたかという検証はもちろん面白いのだが、そもそも「黒人」(ひいては人種)というカテゴリーそのものが歴史的・社会的な産物である、という。アフリカ人とユーラシア人(欧州・アジア)の遺伝的差異よりアフリカ人内部での遺伝的差異の方が大きいという話はもう少し突っ込んで読みたいかも。
読了日:6月22日 著者:川島 浩平
共同研究 転向1 (東洋文庫)共同研究 転向1 (東洋文庫)感想
読み終わるのに時間がかかったが、実に面白かった。読んでいて常に持っていたのは、「いつか自分も歩むかもしれない道」という問題意識。いや~、拷問とか示唆されただけでも転向してしまいそうな臆病者なので…。それにしても、日本の近代史において最大の転向者は、共産主義者→ファシストの面々ではなくて、昭和天皇(神→人)なのだなぁ。さて、続巻に進むかな。
読了日:6月19日 著者:
仲間を信じて――ラグビーが教えてくれたもの (岩波ジュニア新書)仲間を信じて――ラグビーが教えてくれたもの (岩波ジュニア新書)感想
岩波ジュニア新書というのは、いちおう小学校高学年~中学生くらいを対象としているはずだが、たいていの場合、大人が読むに堪えるレベルの内容になっていると思う。「そのジャンルに詳しくない大人向けの入門書」として優れている、というべきか。この本も、ラグビーにちょっと関心はあるけどよく知らないという大人に読んでほしい本。
読了日:6月8日 著者:村上 晃一
テクテクノロジー革命―非電化とスロービジネスが未来をひらく (ゆっくりノートブック)テクテクノロジー革命―非電化とスロービジネスが未来をひらく (ゆっくりノートブック)感想
「『正しさ』をベースにしてやっていくことの怖さ」(引用は不正確)という言い方が印象に残った。まぁ何というかインターネットとかクラウドとか原発とか(と敢えて並べて書いてみるけど・笑)、そういうテクノロジーに比べて夢と楽しさに溢れているように思える。
読了日:6月6日 著者:藤村 靖之,辻 信一
新装版 聖職の碑 (講談社文庫)新装版 聖職の碑 (講談社文庫)感想
先日の遭難事件を機に読んでみた。悲惨な事件ではあるのだが、なぜか同じルートで登ってみたいという気にさせられるのが不思議。ところで、この作品について大きな疑問がある。登りはじめの頃にすれ違う3人の下山者。彼らが山小屋の状態について正確な情報を伝えていれば(明らかに隠している)、かなりの確率でこの登山は中止されていたのではないか。そして、以降の部分で、これについて一言も触れられていないのはなぜなのか。
読了日:6月2日 著者:新田 次郎
安部公房の都市安部公房の都市感想
良い本なのだが、作品の選択を欲張りすぎたかなぁという気もする。一つ一つの作品の比重がちょっと軽くなってしまったような。いずれにせよ、この本で取り上げられている作品をあらかじめすべて読んでおいたのは正解だった。
読了日:5月30日 著者:苅部 直
絶望の国の幸福な若者たち絶望の国の幸福な若者たち感想
序盤の従来の「若者論」通史から始まって、さまざまな事象の解析の手際が優れており、とても情報量の多い、示唆に富む本。とはいえ、著者自身も認めているように「自分語り」であり、恐らくそれゆえの「生温さ(なまぬるさ)」がつきまとっている気がする。面白いのに読後感が今ひとつ、という本。
読了日:5月24日 著者:古市 憲寿
「悪」と戦う「悪」と戦う感想
著者の作品は、たぶん、ごく初期の『ジョン・レノン対火星人』『さようなら、ギャングたち』以来だと思う。当時と違ってずいぶん読みやすい印象だが、当然のことながらたぶん一貫している要素はあるはずではないか、と思うと昔の作品も読み返したくなる。本作は、読んでいると、なんだかTwitterでフォローしている著者の日常とかぶる印象。
読了日:5月18日 著者:高橋 源一郎
暇と退屈の倫理学暇と退屈の倫理学感想
タイトルの意味は、結論に至れば分かる。この本は「暇と退屈」についてのみ語っているのではなく、「倫理(学)」、あるいは思索そのものはいかにして可能になるかということを語っているような気がする。「とらわれ」でも「決断」でもなく、「開かれていること」。ただしその面では出発点を提示したに過ぎないので、やや物足りない。著者の次作でそのあたりが本書と同じくらいの柔らかさで展開されるとありがたいのだけど。 それにしても、表紙の「自分らしく、自分だけの生き方のルールを見つけること」というコピーにはけっこう違和感があるの
読了日:5月16日 著者:國分 功一郎
それでも、読書をやめない理由それでも、読書をやめない理由感想
以前読んだ『ネット・バカ』と似たような趣旨で、実際に同書からの引用も多い。内容的には『ネット・バカ』の方が得るものが多いと思われるので、敢えてこちらを読む必要はないかもしれない。ただ、本書の方が執筆が新しく、Facebookでの『グレート・ギャツビー』談義の部分などには興味を惹かれる。あと、人によっては、理屈っぽい『ネット・バカ』よりも本書の方が詩的でよいかもしれない。
読了日:5月10日 著者:デヴィッド・L. ユーリン
語るに足る、ささやかな人生 (小学館文庫)語るに足る、ささやかな人生 (小学館文庫)感想
語るに足る、ささやかな佳品。「アメリカ」「スモールタウン」がキーワードではあるけど、そういう背景を超えて、心に留めたい文章がいくつかあった。
読了日:5月7日 著者:駒沢 敏器
砂の女 (新潮文庫)砂の女 (新潮文庫)感想
これまで読んだ安部公房作品のなかで、ラストでいちばん感動というか、じわっと来た作品。もちろん他の作品同様、現実と非現実の境目が曖昧だったり、不条理な部分はあるのだけど、何となく最後に(ハッピーエンドとは呼べないにせよ)落ち着くべきところに話が収斂していったようだ。
読了日:4月30日 著者:安部 公房
ロードバイクQ&A 今さらきけないソボクな疑問ロードバイクQ&A 今さらきけないソボクな疑問感想
「やまめの学校」など、一般的に言われている話からは逸脱する部分もあるようだが、オーソドックスな路線にもきちんと目配りしつつ話を進めているところが誠実だと思う。『栗村修の気楽に始める…』とテイストは違うが(本書の方が情報量は豊かである)、どちらも好著。
読了日:4月28日 著者:高千穂 遙
箱男 (新潮文庫)箱男 (新潮文庫)感想
かぶりたくなるね、これは。危険危険。
読了日:4月28日 著者:安部 公房
栗村修の気楽にはじめるスポーツバイクライフ栗村修の気楽にはじめるスポーツバイクライフ感想
#jspocycle J Sportsのサイクルロードレース中継の解説をしている著者に親しみを感じる人は是非読むべきだと思う。初心者がロードバイクに関する情報を得るというだけの目的なら、別にこの本でなくてもいいと思うが、著者のキャラクターが随所に表れていて(それが有益だとは言わないが)楽しく読める。
読了日:4月25日 著者:栗村 修
動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)動員の革命 – ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)感想
ソーシャルメディアの特性を過不足なくまとめていると思う。本書には出てこないが、効力感(または有能感、self-efficacy, sense of efficacy)という言葉を思い浮かべた。ソーシャルメディアが市井に生きる人間の、そういう感覚・意識を(空虚でない形で)高めると良いだろうなと思う。その一方で、本書を読んでいて一貫して抱き続けてきた違和感のようなものはあるのだが、それは今の社会に対する違和感であって、本書や著者だけに帰すべき責任ではないのだろうと思う。
読了日:4月24日 著者:津田 大介
君のいない食卓君のいない食卓
読了日:4月23日 著者:川本 三郎
復活の日 (ハルキ文庫)復活の日 (ハルキ文庫)感想
救世の英雄を登場させないところが作者の真骨頂か。「誰かがやらねばならず、誰もが指名を拒否しないならば、だれがとりたててえらばれたものの勇敢さをうたうだろう?」 ネタバレにはなるが、ある意味、この小説ではすべてが失敗するのだ。災厄の張本人でさえ、そのことを自覚していないし、その身が守られているわけではない。
読了日:4月20日 著者:小松 左京
安部公房全作品〈3〉 (1972年)安部公房全作品〈3〉 (1972年)感想
『飢餓同盟』『けものたちは故郷をめざす』『R62号の発明』収録。小説のタイプは実に多様だが、現実/非現実が揺らぐ感覚は共通しているように思う。
読了日:4月17日 著者:安部 公房
スプーンと元素周期表: 「最も簡潔な人類史」への手引きスプーンと元素周期表: 「最も簡潔な人類史」への手引き感想
良い意味で人間味あふれる化学史/科学史になっているので、元素名索引だけでなく人名索引も付けてほしかった。しかしこの本、ボリュームたっぷりで消化しきれないかも……。
読了日:4月13日 著者:サム キーン
第四間氷期 (新潮文庫)第四間氷期 (新潮文庫)感想
確か中学1年のときに「SFの名作」という位置づけで読んだはず。当時、何を理解していたのかなぁ。安定していると思い込んでいた日常が揺らぐ感覚は、SF的な設定ゆえに他の作品よりも鮮明に感じられる。それにしてももう一人の「私」はその後どうなったんだろう……。そういえば、冒頭がいきなり大津波の予兆で、ちょっとびびりました。
読了日:4月3日 著者:安部 公房
期間限定の思想  「おじさん」的思考2 (角川文庫)期間限定の思想 「おじさん」的思考2 (角川文庫)感想
これまた文庫版を買ったのを機に再読。単行本版のあとがき(文庫版にはこちらももちろん収録されている)には「この本は期間限定であって賞味期限は数年」とあり、文庫版のあとがきには「コンテンツの賞味期限が切れてもリーダブルである書物の条件とは何か」ということが書かれていて、時間の経緯が感じられて興味深い。もちろん、この本は「賞味期限が切れてもリーダブル」であると思う。第一部の「女子大生との会話」仕立てはちょっとわざとらしい感じがあって、あまり気に入らないのだけど。
読了日:3月31日 著者:内田 樹
榎本武揚 (中公文庫)榎本武揚 (中公文庫)感想
いちおう歴史小説ではあるのだけど、安部公房らしいわけのわからなさ。問いかけは茫漠と宙に浮き、答えはもちろん得られない。それが物足りないと感じるか心地よいと感じるかは読み手次第だろう。苅部直『安部公房の都市』を購入したのをキッカケに、同書を読む前に、そこで取り上げられている作品を読んでおこうと続けさまに安部公房の作品を読んでいるのだけど、しかしこの作品は「都市」という切り口とはさほど縁がなさそうにも思うのだが、どう扱われているのか今から興味深い。いちおう維新期の江戸は出てくるけど…。
読了日:3月30日 著者:安部 公房
未来への提言―福島みずほ対談集未来への提言―福島みずほ対談集感想
対談相手の一人がウチダ先生なので読んでみたが、その部分については彼のいつもの話なので新鮮味はなし。社民党の党機関誌に掲載されたものなので、党のプロパガンダという雰囲気はもちろんあるのだけど、それはさておき結構面白かった。この本自体は昨年秋の出版だが、確か最初の二編を除いて震災前の対談。鎌仲ひとみさんとの対談で、福島みずほが「別に原発を今すぐ全部止めろとは言いません」という趣旨の発言をしていて、「おお、この頃はまだ社民党でさえ切迫感がなかったんだなぁ」となんだか感慨深い(?)。
読了日:3月26日 著者:福島 みずほ
犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)感想
両方とも関心の高いテーマなのであっというまに読めた。「天罰/天恵論」の考察はちょっと脱線かなと思いつつ読み進めたのだけど、きちんと収束していくところが興味深い。原発の「四つの被害」、事故の責任の冷静な区分、後半の在沖米軍基地の問題とも絡めて、民主主義がはらむ危険など非常に参考になる部分が多い。
読了日:3月21日 著者:高橋 哲哉
燃えつきた地図 (新潮文庫)燃えつきた地図 (新潮文庫)感想
謎が解明されていくのではなく、どんどん深まっていくハードボイルドといった趣。読者もこの世界から戻ってこられない。
読了日:3月17日 著者:安部 公房
笑う月 (新潮文庫)笑う月 (新潮文庫)感想
安部公房は子どもの頃に「SF」という位置づけで『第四間氷期』『人間そっくり』あたりを読んで以来。この短編集は、食事どきや寝る前に読むには不向きだが、特に冒頭の『睡眠導入術』や『空飛ぶ男』など、夢と現実の境目が分からない作品はとても良い(というか怖い) 続いて『燃えつきた地図』に移りつつ、苅部直『安部公房の都市』を少しずつ読み進めようかと思う。
読了日:3月13日 著者:安部 公房
「おじさん」的思考 (角川文庫)「おじさん」的思考 (角川文庫)感想
文庫版を新たに入手したので、就寝前に少しずつ再読。単行本の方が出版されたのは10年前だが、内容はほとんど古びていないような気がする。もちろん、著者の主張は本書から少しずつ変化してきてはいるのだろうけど。出家の勧めが良かったなぁ。むろん、漱石論も。
読了日:3月13日 著者:内田 樹
図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)感想
「気温のしくみ」くらいまではすらすらと分かったが、「風のしくみ」から低気圧・高気圧などの話になるに従って難解に。気圧傾度力・コリオリ力・摩擦力のベクトル合成のあたりで躓いたのが原因か。それにしても、ミクロな分子規模の話からマクロな地球規模の話まで、視点がダイナミックに動くのがこの分野ならではという感じ。
読了日:3月10日 著者:古川 武彦,大木 勇人
自由貿易は、民主主義を滅ぼす自由貿易は、民主主義を滅ぼす感想
あまり話題に上らなくなってしまったTPPだが、「○○の弊害があるからTPP反対」というのも大事だけど、「今の局面では保護主義の方が優る」という論点は建設的でよいと思う(いわゆる「対案」ね・笑)。理由は本書などを読めば分かる。「協調的保護主義」という発想は新鮮だった(「互恵的」と呼ぶ方がより適切だろうか)。トッドの著書は『帝国以後』しか読んでいないが、他も読んでもいいかもしれないと感じた。
読了日:3月3日 著者:エマニュエル・トッド
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)感想
下巻も無事に読了。さすがに同じことの繰り返しもあるので少しダレたけど、見方を変えれば、それだけ一貫性があるということで。パプアニューギニアとかアフリカの話になるとさすがに地理的な知識も乏しいので、Google Mapなど見ながら読むといいかもしれない。視点のズームイン/アウトにも追従できるし。その意味ではこれも電子書籍としてタブレット端末で読むのに向いている本かもしれないなぁ。
読了日:2月29日 著者:ジャレド・ダイアモンド
銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎感想
これは面白いね。びっくりするようなことは特に書いてないんだけど、なるほどと納得する。そして、著者の分析に仮に間違いがあったとして(まぁあるんだろうけど)、しかしこれを鵜呑みにするとしても、それほど不都合な行動はもたらされないだろうという気がする。引き続き下巻へ。
読了日:2月23日 著者:ジャレド ダイアモンド
俺に似たひと俺に似たひと感想
著者もあとがきで軽く示唆しているように、もっと辛く長い介護の例はいくらでもあるだろう。この作品で語られているのは、たぶん客観的に見れば平凡な老衰による死に至る、比較的恵まれた状況での介護である。しかし、だからこそ、心に染みる物語になっているような気がする。ウェブでの連載はすべて読んでいたのだけど、小田嶋隆による帯文「ぜひとも通しで読みたいです。紙で。なぜだろう」に共感する。そして、著者自身も大いに気に入っているようだが、挿画がすばらしい。挿画で泣ける本は珍しいのではないか。
読了日:2月15日 著者:平川 克美
The Age of Diminished ExpectationsThe Age of Diminished Expectations感想
最初に邦訳を買って長年放置。ふと思い立って文庫版を図書館で借りて読み始めたのだけど訳がひどいので、これまた前に購入して放置してあった原書を読んだ。読みやすく明快なのだけど、さすがに古い感じがする。この本が書かれてから何が起きたかと言えば、経済中心に見ても、ユーロ誕生、9.11、アフガニスタン/イラク侵略、中国の台頭、リーマンショック……。このあたりを踏まえた続編が読みたい気がする。まぁ今も健筆をふるっている著者なのだから、いくらでも新しい著作はあるのだろうけど。
読了日:2月15日 著者:Paul Krugman
コザック ハジ・ムラートコザック ハジ・ムラート感想
この作品がトルストイの文学のなかでどういう位置づけにあるかなんてことは実のところそれほど重要ではなくて、何となく、靴の下で枯れ枝がぱきぱき折れる音が耳に残っているような気がする、というのが重要なのだ(いや、そんな場面があったかどうかさえ定かではないけど、何となくそういうイメージで)。それにしても、日常の些細な情景から、物語全体が想起される『ハジ・ムラート』の構成はかっこいいよな……。
読了日:2月13日 著者:辻原登
地下鉄のギタリスト―Busking in London地下鉄のギタリスト―Busking in London感想
ロンドンの地下鉄でbusker(街頭ミュージシャン)として活躍している日本人ギタリストの日常。今日はどこの駅で演奏し何ポンド稼いだか、そしてどんな出来事があり、何を思ったのか。それぞれのエピソードに筆者が「BGM」を指定しているのが面白い(必ずしもその日に筆者が演奏した曲とは限らない)。音楽(特にロック/ポップス)が好きな人なら読んで損はない本だし、それほど音楽に関心のない人にとっても、かの地の文化や雰囲気がしみじみと伝わってくる好著だと思う。
読了日:2月6日 著者:土門 秀明
困ってるひと困ってるひと感想
内容の大切さという点はもちろんあるのだけど、それ以前に(といっていいのか?)、たいへん頭のいい、しかも文章の上手い著者なのだ。文体は今どきの若者なのかもしれないけど、それほど抵抗なく読めるのは、バックボーンとして著者がしっかりした文章をたくさん読んでいることが窺えるからかもしれない(もちろん私はフランス文学出身者に点が甘い)。「共感する」にはあまりにもエクストリームな境遇だし(←影響が…)、「同情する」ことを著者が求めているわけでもない(たぶん)。でも私は読者としてこの本に「反応する」。
読了日:2月1日 著者:大野 更紗
小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ感想
著者の本はすべて読んでいるファンとしてこんなこと書きたくはないのだが、ちょっと期待外れ。内容としてはいちいち頷くことばかりだし、こういう本がよく売れているというのはとてもいいことだと思うのだが、なんだか、とても読みやすいのだけど「ゆるい」感じがしてしまう。ふだんはもっと骨太さと切れ味の両立した文章を書く人であるように思う。これまでとは違う「ですます」調の文体が、(少なくとも私という読者に対しては)むしろマイナスに作用してしまったか。いや、いい本なんですよ、すごく。でも物足りないな~。
読了日:1月28日 著者:平川克美
ベストセラー炎上ベストセラー炎上感想
6点の本/著者が取上げられているのだけど、私はベストセラーだからといって本を手に取るタイプではないので、自分が読んだことのある本2点のみ(村上春樹『1Q84』、内田樹『街場のメディア論』)の部分だけ読んだ。「飛ばし読みだからよく分らないけど」(西部)というスタンスで批評(?)している。その点に、この本のすべてが言い尽くされている。この本で批判されているということは、逆に、他の4点も良書ということなのかもしれない。
読了日:1月28日 著者:西部 邁,佐高 信
はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)感想
中盤まで(読んだ人にはどの時点までかすぐ分かるでしょう)かなり引き込まれて読んだけど、その後ちょっとダレた感じでペースが落ちた……。良い本だとは思うのだけど、いろいろ詰め込みすぎて散漫になった印象があるなぁ……。
読了日:1月22日 著者:ミヒャエル・エンデ
反哲学入門 (新潮文庫)反哲学入門 (新潮文庫)感想
哲学史の入門としてはよくまとまっていると思う。ただ、特に理性主義に対する反発の部分は、やや感情的というか、日本の哲学会に対する私怨のようなものがあるのではないかと感じてしまう。まぁそれも、名物教授の雑談混じりの講義を聴いているようで良い味とも思えるが。著者はニーチェ以降をそれまでの哲学と一括りにして哲学史のなかに位置づけることに否定的だが、「存在」をどのようなものと捉えるにせよ、「言葉」を介して「存在」を思索するという限りにおいて、(続く)
読了日:1月18日 著者:木田 元
最終講義-生き延びるための六講 (生きる技術!叢書)最終講義-生き延びるための六講 (生きる技術!叢書)感想
表題作(?)でもある「最終講義」は、雑誌「文学界」掲載時にすでに読んでいたのだが、読み返しても感動的だった。あとは、やはり教育関係の講演が良い。ユダヤ学会での講演は、『私家版・ユダヤ文化論』にはけっこう感銘を受けた覚えがあるわりには、今ひとつピンとこなかった。
読了日:1月14日 著者:内田 樹
いちばんやさしいネットワークの本 (技評SE選書)いちばんやさしいネットワークの本 (技評SE選書)感想
このレベルの話ならだいたいは分っているので、主として「社内なんちゃってシステム管理者」の後継者養成に向けて「どう説明するか」を模索するために読んだが、それでも「あ、そうだったのか」と気づかされる点もあった(笑)(←このへんが「なんちゃって」の悲しさ)。先日読んだ『小悪魔女子大生の……』よりはるかに読みやすく、しかも情報量は多い。「おわりに」の「IT業界で働くエンジニアが幸せになったとき、本当の意味で、ITが人を幸せにする世界が実現すると信じています」という言明は、良い意味で文系出身者っぽくていいな。
読了日:1月12日 著者:五十嵐 順子
ゴーストタウン チェルノブイリを走る (集英社新書)ゴーストタウン チェルノブイリを走る (集英社新書)感想
人間がこれまでに生み出したもののうち、最も長く残るのはプルトニウムなのだ。残念ながら。
読了日:1月10日 著者:エレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワ
なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (岩波現代文庫)なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記 (岩波現代文庫)感想
もう少し癒やし系の本かと想像していたら、実にエキサイティングで知的刺激に富む本だった。もちろん、癒やしや感動の要素もあるのだけど。石原慎太郎は昨年の震災・津波について「天罰」発言をしたが、この本の著者はこう書く。「保険会社は地震やハリケーン、その他の自然の災害を『神の行為(Act of God )』と表現しています。(中略)私にとって、地震は『神の行為』ではありません。神の行為というのは、地震が去った後で生活を立て直そうとする人びとの勇気のことであり、被災者を助けるために自分にできることをしようと(続く)
読了日:1月8日 著者:H.S. クシュナー
民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)感想
明快な結論や展望が提示されるでもなく、著者自身も認めているように雑駁な印象は拭えないけど、そのこと自体が、問題そのものが簡単にまとめられない性質であることを物語っている。問題に対する解答を与える本ではなく、問題がどこにあるのかを説明するような本。勉強になる。
読了日:1月3日 著者:塩川 伸明

2012年に読んだ本まとめ
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