月別アーカイブ: 2015年10月

エスケープ 2014年全日本選手権ロードレース: 佐藤 喬

Amazon.co.jp: エスケープ 2014年全日本選手権ロードレース: 佐藤 喬: 本.

ふだん、グランツールなどのレース中継を観る機会が多いので、それなりに「こういうとき選手は何を考えているのか」という理解はあるので、そこまで新鮮味は感じなかったものの、レース中、個々の選手が何を考えていたのか、ここまで丹念に追った記録というのは類を見ないのではないか。

Amazonのレビューにもあるのだが、肝心要の一人の選手には取材が及んでいない(たぶん海外で活動する選手なので、著者の方針である「直接対面してじっくり話を聞く」取材ができなかったのだろう)のが惜しまれる。

しかしやはり、無線が使えない方がこういう波乱が起きるのだろうなぁ。

 

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた: ルイス ダートネル, 東郷 えりか

Amazon.co.jp: この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた: ルイス ダートネル, 東郷 えりか: 本.

何らかの原因によって世界の大半が滅び、わずかな人間だけが生き延びた場合、どうすれば文明を復興することができるだろうか。

サバイバル本のような設定だが、実際のところ、これまでの科学・技術の発展をたどる、文明史的な内容になっている。世界史の流れは(西洋に偏っているとはいえ)いちおう勉強したけど、今の文明を支えている諸々の要素をいかに自分が知らないかということを痛感する。

それこそ「農耕の開始」みたいなところから話は始まるのだけど、蓄積された知識や破壊を免れた文明の遺産をある程度は利用できるというヘッドスタート分はあるが(その能力を持つ人が生き残ることが前提だけど)、一方で、これまでの人類の歩みをそのまま辿り直すこともできない。なぜなら、採掘しやすい場所の石炭や石油はすでに掘り尽くされてしまっているから……みたいな部分に暗然たる気分になる。

民主主義ってなんだ?: 高橋 源一郎, SEALDs

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先の『憲法と平和を問いなおす』の感想で、

裏を返せば、SEALDs他の国会前抗議行動で「これが民主主義だ」と主張するのも、あの問題に関しては的外れなのではないか、とも思える。ただし前者と違うのは、SEALDsの連中(の少なくとも一部)はそういうこともしっかり意識しているだろう、という点なのだけど。

と書いたのだけど、案の定というか、そんなことはしっかり考えているのだということがよく分かる。彼らが中心となっている抗議行動では「民主主義ってなんだ」(Tell me what democracy looks like?)に対して「民主主義ってこれだ!」(This is what democracy looks like!)と返すのが定番になっているが、これって一段階メタな話で、「なんだ?」と問い続けることが民主主義の本質であるということがこの対談本で語られているように思う。

しっかし、ほんと、変な奴らだなぁ(笑) そして面白い。よく勉強していて、頭がいい。ニーチェはともかく、ルジャンドルなんて知らないよ、不勉強で申し訳ない。いろいろ本を読みたくなる本。

 

 

憲法と平和を問いなおす (ちくま新書) eBook: 長谷部恭男

Amazon.co.jp: 憲法と平和を問いなおす (ちくま新書) eBook: 長谷部恭男: Kindleストア.

これは良い本。以前、図書館で借りたのをkindleで再読したのだけど、これだと家人に読んでもらえないから、やはり紙で買うべきだった。

安保法制をめぐって、安倍政権支持者からは「国会で多数決で決めるのが民主主義だろ」という声があったけど、あの問題に関してはそういう主張が的外れであることが、この本を読めば分かる。

裏を返せば、SEALDs他の国会前抗議行動で「これが民主主義だ」と主張するのも、あの問題に関しては的外れなのではないか、とも思える。ただし前者と違うのは、SEALDsの連中(の少なくとも一部)はそういうこともしっかり意識しているだろう、という点なのだけど。

立場の如何を問わず、基本的なところから考えるために必要な本であるような気がする。ま、私自身がそういう「基本的なところ」を分かっていなかったから感心しているだけなのだけど(笑)

ペスト (新潮文庫): カミュ, 宮崎 嶺雄

Amazon.co.jp: ペスト (新潮文庫): カミュ, 宮崎 嶺雄: 本.

少し読書記録をサボっていたのだけど、記憶を掘り起こしつつ。

8月中旬に読んだのが、これ。恥ずかしながらカミュの作品は『異邦人』しか読んでいなかった(『シシュフォスの神話』も読んだ気がするけど記憶が定かではない)。義父とのあいだでこの作品が話題になったので、気になって、読む。

で、これは傑作だと思います。バックグラウンドになっている思想とか哲学はもちろんなのだけど、しちめんどくさい話は置いといても、単に小説として、そのドラマチックな展開という点で、「面白い」のです。

再読必至の一冊になりました。