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平尾剛『スポーツ3.0』(ミシマ社)

「根性(レジリエンス)と科学(サイエンス)の融合が新時代を開く」という帯文がとても刺激的(まぁそれが無くてもこの著者の本は買うと思うのだが)。

ウェブメディアでの連載をまとめた書籍のようなので、ややまとまりというか流れに欠ける印象はある。東京オリンピックをめぐる考察は(趣旨そのものにはほぼ完全に同意するものの)、ちょっと浮いているように思う(パラリンピックに関する考察は非常によかったが)。

とはいえ、著者の考察じたいはとにかくとても面白く考えさせられるので、通読ではないにせよ再読必至の項がいくつもある。

「根性」については、フルマラソンを走っていた頃の思いをベースに、私もいろいろ考えるところはあるのだが、それは本書の感想には収まらないので、また改めて。

井上正幸『もっともわかりやすいラグビーの戦術入門ガイド』(カンゼン)

ワールドカップ期間中に読了。

同じ著者の前々著(かな?)『これまでになかった ラグビー戦術の教科書』は購入済みで、ちょっとまとまりに欠ける印象を受けたので、新著が出たとのことで手を出してみた。

う~ん、前々著よりは分かりやすくなっているけど、それでも今ひとつ。かなりラグビーを観ている人でないと、いきなり知らない概念が出てきたりして戸惑うのではないか。言葉遣いで気になる点(※)や誤変換が残っている(脅威とあるべきところが驚異になっていたり)ことも含めて、校正が甘いというか、編集者はいったい何をやっているのだ、と…。

で、やはりこういう内容は動画で観る方が優るような気がする。著者が林大成(セブンズ日本代表)と一緒にやっているYouTubeチャンネル「らぐびーくえすと」が優れている。

※ 言葉遣いというか文法なのだが、キックを「蹴る」の可能形が「蹴られる」になっているのがどうにも気になった。「蹴られる」は受け身である(尊敬や自発はあまりないだろう)。いわゆる「ら抜き表現」はダメ、という意識があるのかもしれないが、「蹴る」は「蹴れる」でよいはず。しかし理屈で説明しろと言われるとあまり自信がないので、現代日本語の文法も少し勉強してみたいなぁという気になったのが、思わぬ収穫。

 

 

斉藤健仁『ラグビー日本代表1301日間の回顧録』(カンゼン)

ラグビー関連の執筆者の中で以前からわりと好印象だった著者なのだけど、あるファンがこの人の著作で良かったものの一冊としてこれを挙げていたので、読んでみた。

RWC2015までの軌跡を追ったものなので、RWC2023を来年に控えた今となっては昔話の感もあるのだけど、個人的には一番熱心に代表を追っていた時期とも言えるので、「そうそう、そんな試合もあった」と懐かしく思い出したり、「あの試合、全然ダメだと思っていたけど、そうでもなかったのか…」みたいな今さらの発見もあり。

廣瀬俊朗『ラグビー知的観戦のすすめ』(角川新書)

2019年ラグビーワールドカップ(RWC2019)の直前に出版された本。

2012年~2015年のエディー・ジャパンでキャプテンを務めたこともある中核的な選手。RWC2015では出場機会を得られなかったにも関わらず、裏方としてチームを支え続けた2人のうちの1人。RWC2015後のシーズンをプレーした後、現役を引退。

というポジションだった廣瀬らしい、ワールドカップの主催者側でもなく、直接のチーム関係者ではないが、極めて現場に近い立場でワールドカップを盛り上げるために、どうやって楽しんでもらおうかという情熱が感じられる本。その情熱は、私は結局観なかったがドラマ『ノーサイド・ゲーム』への出演にも、そしてこの本でも熱く語られている、各国のラグビー・アンセムを歌って歓迎しようという「スクラム・ユニゾン」の立ち上げにも現われている。非伝統国・非強豪国での開催だからこそ「スクラム・ユニゾン」が可能なのだ、という思いは廣瀬自身も抱いていたようだ。

RWC2019がどういう結果に終ったか(勝敗だけではなく)を知っている今でも、というか今だからこそ、面白く読める本かもしれない。廣瀬の情熱は、十分に報われたのだ。

ラグビー観戦をどう楽しむかという入門書としては、まったく試合を観たことがない人には向かないかもしれない。RWC2019を機に何試合かラグビーの試合を観て、意味は正確に分からないまでも実況解説が使うラグビー用語にぼんやりと耳が馴染んできた、くらいの人がちょうどいいかもしれない。

 

斉藤健仁『ラグビーは頭脳が9割』(東邦出版)

引き続き、ラグビー本を読む。

2015年5月に刊行されたものだから、RWC2015での対南ア戦勝利以前に書かれたものである。

エディージャパンをはじめ高校・大学・トップリーグと国内各カテゴリーのチームをピックアップしたケーススタディ的な構成。

タイトルはもちろん『人は見た目が9割』(2005年)のパクりなので、あまり内容を的確に表しているとは言いがたい。この本では、戦略・戦術のスマートさに重点が置かれているとはいえ、9連覇中の帝京大学やトップリーグ2連覇の頃のパナソニック・ワイルドナイツが、「頭脳が9割」で勝ち続けたチームであるとは誰も思わないだろう。

とはいえ、何しろラグビーの話、それも自分が熱心に観ている時期のラグビーの話なんだから、つまらないということはありえない。そもそもこの著者が書くものは、ターゲットが自分に合わないと感じることはあっても、基本的に信頼できるし面白い。

 

 

徳増浩司『君たちは何をめざすのか《ラグビーワールドカップ2019が教えてくれたもの》』(ベースボール・マガジン社)

『源氏物語』をゆっくり読み進める一方で、1年前のラグビーワールドカップを振り返る。

著者のように招致・開催の中枢にいた人にとっても、私のように(それなりにディープだとはいえ)観戦だけの一介のファンと同じように、やはりミクニスタジアムのウェールズ公開練習と、9月20日の開会式(これは当然だが)、そして釜石でのカナダチームの活躍(と言ってしまってよかろう)は、あの大会をめぐる大きな出来事だったのだなぁ。

郡上市の少年、名護市辺野古区の少女のエピソードは、2人の健気な言葉と、周りの人々の厚意と奔走によるハッピーエンドに胸を打たれる。もっとも、こうしたハッピーエンドの一方で、残念なこともいろいろあったのは、今後のためにも(「今後」があればの話だが)きちんと記憶しておくべきだろうとは思うけど。

とはいえ、開催前にはものすごく心配していたことを思えば、大成功でしょ、去年のワールドカップは。

昨年のワールドカップとは直接には関係のない、著者の若い頃の体験を含む第5章、招致過程を綴った終章も、構成という点でやや付け足し感はあるが、内容的にはとても興味深い。時系列的には5章(の一部)~終章~1章以降という流れなのだが、それだといかにもありきたりで退屈な本になってしまったかもしれない。

 

井上正幸『これまでになかったラグビー戦術の教科書』(カンゼン)

生で観戦する機会が途絶えているあいだに、こういう本を読んでみる。

率直に言って、出来のよい本とは言いがたい。

昨年のワールドカップで初めてラグビーを観るようになった新人ファンに向かない(※)のは本書の性質上しかたがないのだが、まず、全体の構成がなっていないというか、きちんと考えられていない。

(※ 恐らくそういう人には斎藤健仁『ラグビー「観戦力」が高まる』の方が優る。ただし2013年の本なので古さは感じる)

現代ラグビーの重要なキーワードである「ポッド」は、まず16頁にいきなり登場し、そのまま使われ続けるが、きちんとした説明は第2章「戦術の変遷」の「ポッドの誕生」(69頁)まで待たなければならない。ここを読めば、ポッドについてそれなりに分かるようになるのだけど、実はその後に、「シェイプ、ポッドとは何か」と題した第3章が来る(ところがポッドの説明は第2章の方が詳しいので、屋上屋を架す感が否めない…)。

他にも誤変換(「短調な攻撃」とか・笑)や脱字もめだつ。総じて、上述のような構成の点も含めて、総合的・俯瞰的に見る編集者が不在だったのかな、という印象。

と、ボロクソに貶しているようだけど…読んでいて実に面白かった!(笑)

2019年ワールドカップの日本代表の全試合と、いくつかの注目すべき試合を分析した第4章「2019年ワールドカップ分析」を読み返しつつ、試合の録画を見直したくなるし、それ以上に生観戦、それもゴール裏かスタンド最上方など背番号の良く見える席で観戦したくなる。最初の方に出てくるキック処理のシステムの話も、プレー経験のある人にとっては当たり前なのかもしれないけど、観戦オンリーのファンとしては、「なるほどこうなっているのかぁ」という感じ(内容的に本書のなかではやや孤立していて、ここにもやはり構成上の問題を感じるのだが)。

それなりにJ Sportsの解説とか聞いていて、「なんかシェイプとかポッドとかアンストラクチャーとかよく言われているよなぁ」くらいの観戦経験があれば、構成に難があっても何とか対応できるだろう。

それにしても、ラグビーというのは、こうして見るとものすごく頭を使う競技なのだなぁという印象。もちろんレベルが上がれば上がるほど、考えなくても(あるいは考えないほうが)正しく動けるようになっているのだろうけど。

というわけで、お勧めできないようでいて、実はマニアックなファンにはかなりお勧めである。