月別アーカイブ: 2019年9月

吉賀憲夫・編『ウェールズを知るための60章(エリア・スタディーズ)』(明石書店)

図書館で本を借りるときは、たいていは何かで知った本をネットで予約して近所の図書館で受け取るのだけど、それ以外にも、「新着図書」の棚で目についた本をつい借りてしまうことも多い。今年8月に出たばかりの本書も、当然ながら借りてしまう。

さまざまなテーマについての60章立て、面白く読ませるというよりは教科書的な記述も多いので、さすがに退屈する部分もあるのだけど、何と言ってもラグビーその他のご縁で興味深い地域なので、完読。「ウェールズは唄の国」とされる経緯や、言語を中心とする伝統が破壊&再創造される過程はとても印象に残る。

ラグビーへの言及は1章のみ。やや物足りない(笑)

 

高松晃子『スコットランド 旅する人々と音楽』(音楽之友社)

家人がスコットランド音楽に魅了されているようなので、何か良い本はないかと探してみたら、これが見つかったので図書館で借りて、先に読んでしまった。

う~ん、民謡の世界だ! それぞれの一族に伝わる「バラッド」は「大きい唄」と呼ばれるという。なんかそんな言葉をこちらの世界でも聞いたことがある。返し…じゃない、リフレインの部分を同席した皆で唱和することでコミュニティとしての一体感を確認しつつ、メインの唄の部分についてはそれぞれの家に伝わる歌い方を披露し、個性と先祖との系譜を承認し合う…。

そして、コミュニティのなかで歌い継がれてきた唄が「発見」され、商業化されたステージの世界に進出していき(あるいは取り込まれ)、コミュニティは変質していく…。

音階(旋法)の説明など、音楽の知識が必要な箇所も少しばかりあるが、9割方は、そのような知識なしに楽しめる本。いま家人が読んでいるのだけど、戻ってきたら、紹介されているミュージシャンを手がかりに音源を探してみよう。

羽生善治・梅原猛・尾本恵一『教養としての将棋 おとなのための「盤外講座」』(講談社現代新書)

少し前に読んだのに書くのを忘れていた。

「観る将」(自分は指さないが、観るだけの将棋ファン)を視野に入れた、文化としての将棋をいろんな側面から語る本。

冒頭の羽生・梅原の対談はやや散漫な気もするし、羽生の話については他でも語られていることがけっこう多いのだけど、プロ棋士はAIには勝てないということがもはや当然の前提として語られていることはさすがに感慨深いし(本書は2019年6月刊)、やや唐突に飛び出る梅原の靖国神社考なども、ほほうと思わせる。考古学的なアプローチ(原則として出土品に裏付けられない主張は慎む)から見た日本将棋の誕生に関する考察や、「駒」という点から一点集中的に将棋を考える章も面白い。

Amazonのレビューには「やっぱり少しは指せる人でないとこの本は楽しめないのではないか」という意見もあったが、駒の動かし方を知っている(忘れているかもしれない)程度の家人も楽しく読んだようなので、その心配はなさそう。