月別アーカイブ: 2020年11月

吉田徹『アフター・リベラル 怒りと憎悪の政治』(講談社現代新書)

「リベラル・コンセンサス」が支配的だった時期がわりと短命に終り、トランプに代表される権威主義的・排外主義的なオルタナ右翼、著者の言う「ウーバー化」するテロリズム、日韓関係で他人事ではない歴史認識問題、ヘイトクライムが跋扈しつつある時代になってしまった背景と推移を分析する本。

いちおう「リベラル左派」に親近感を抱く自分としても、自分のポジションを捉える見取り図というか、自分はなぜこのポジションを取りたいのか、取りうるのか、取るべきなのか、といった点を考えるうえで、有益な本だった。

ひとまずトランプは敗北したものの、この本の分析がそれなりに的確だとすれば、これにて一件落着ということにはなりそうにない…。

しかし、権威主義的な志向を持つ人がそれなりにいて、そういう人の、いわば「声が大きくなる」傾向はあるとしても、この本の分析に従うならば、数としてそれほど多くなる可能性は低いように思うのだが…。

図書館で借りて読んだのだけど(予約多数)、再読する可能性大と見て、地元の書店で購入。

 

『源氏物語(二)紅葉賀~明石』(岩波文庫)

引き続き、就寝前に少しずつ読み進める。高校3年のときに読んだのが、確かこのあたりまで。そこで受験の本番が到来してしまい、その後はバタバタとして読み続ける余裕がなくなってしまった。

須磨・明石の章は都を離れてむしろ風情がある感じで当時から気に入っていたのを思い出す。実家から古語辞典も回収し、時折引いたりしているのだが、やはり例文には源氏物語が多用されているなぁ。

さて、ここからはたぶん未踏の境地へ。実はストーリー展開もよく知らない…。

西成活裕『渋滞学』(新潮選書)

今年も何度か中央高速で酷い渋滞を経験してウンザリしたということもあって、有名なこの本を読んでみた。

これを読んだからといって渋滞を回避できるわけではないし、なるべく渋滞を引き起こさないような運転を心がけるとしても、そのようなノウハウを持たないドライバーがほとんどなのだから、どれだけ効果があるかどうかは怪しい。とはいえ、渋滞の発生をシンプルにモデル化する試みなどは大変面白い。

この本では自動車の渋滞だけでなく、火災などパニック時の人の動きやアリの行列、インターネットの混雑、神経繊維の信号伝達、お金の動きまで幅広く「渋滞学」の応用が試みられていて愉快なのだが、特に「なるほど」と膝を打ったのが、世の中には「渋滞させることが望ましいもの」もある、ということ。

量的にはあっさりと触れられているだけなのだが、一つは、気候変動ゆえか世界のあちこちで頻発している森林・原野火災。火が燃え移っていくペースに「渋滞」を引き起こすことができれば、自然鎮火につながるし、人為的な消火もたやすくなる。

もう一つは、本当に軽く触れられているだけなのだが、まさに私たちがいま体験している「あれ」である。スムーズに移動させてはダメ、「渋滞」させないといけない…。