民衆の敵 (岩波文庫 赤 750-2): イプセン, 竹山 道雄

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町の経済を支える某産業の施設が、実は健康に有害な影響を与えることに気づいた医師がそれを発表しようとしたところ、「経済優先」の保守的な町民の反発を買って「民衆の敵」に仕立て上げられてしまう、という、何やら今の日本のどこででもありそうな話。1882年。

「多数が正義なのではない、正義は少数にこそあるのだ」というところまではともかく、「愚昧な大衆こそが諸悪の根源」とまで言い切るのはどうかと思うぞ、ストックマン先生。とはいえ、一読に値する本。

ちなみに、図書館で借りたのだけど、旧仮名遣いでした。子どもの頃からそんな本ばかり読んでいるから、けっこう旧仮名遣い慣れているんだよね。久しぶりだったけど、全然抵抗なかった(笑) 古文漢文が読めるわけではないけど、いわんや崩し字が読めるわけではないけど、旧仮名遣いは大丈夫です。

 

占領史追跡: ニューズウィーク東京支局長パケナム記者の諜報日記 (新潮文庫): 青木 冨貴子

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Facebookでつながっている、どなたかがお勧めしていたので気になって読んでみました。面白かったです。時期的には、連合軍進駐から講和条約、岸内閣成立くらいまで。サブタイトルにあるように、日本生まれ・イギリス国籍の米誌支局長の動きを軸に話は進み、そこで浮かび上がるテーマが「皇室の対米工作」といったところかなぁ。

こういう歴史に関する書物を読んでいると、本来のテーマとあまり関係ないところにビックリしたりするのが常で、たとえばマッカーサー司令官と昭和天皇が並んで写っている写真が有名だけど、マッカーサーの方が20歳も年上だったのかぁ、とか’(マッカーサーは大正天皇と1歳違い)。そして、考えてみたら当たり前なのだけど、終戦当時の昭和天皇って今の私より若かったんだなぁ、とか(当時44歳)。

クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン (講談社現代新書) eBook: 鴻上尚史

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そういえばこの本の記録を忘れていた。

kindleで安くなっているのを知って、軽い気分で買ってみた。「クール・ジャパン」に「!」と「?」が付いているタイトルそのまま、という感じで、「日本すげぇ!」という話もあれば「日本って?」という話もある構成。きちんとした批判精神のある人なので、ヘイトの裏返しでしかないような「日本大好き」本ではもちろんない。

しかし何より笑ったのは、「外国人が見つけ た日本のクール・ベスト20」の第13位に入っている「大阪人の気質」だなぁ。この一節だけでも読むに値する(家人にこの部分だけ読ませたら大受けしていた)。

憲法第九条 (岩波新書 黄版 196): 小林 直樹

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初版が刊行されたのは1982年のようなので、30年前。米ソ冷戦、核戦争の脅威を前提に書いているだけに、今読むとさすがに違和感を抱く部分も多々ある(もちろん、核戦争の脅威がなくなったわけではないけど)。

いま、いわゆる「安保法制」や集団的自衛権に反対している人も、その多くは個別的自衛権の行使&自衛隊の存在については、まぁ認めるという立場なのではないかと思う(実のところ、私もその一人だ)。しかしそういう現実主義がある種の落とし穴に続いているのも確かなのだし、この本を読むと、自分がいかに「理想」から遠く離れてしまったかを痛感する。

この本の感想を一つだけ具体的に書いておくと、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」(日本国憲法前文)とか、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」(同第9条)とかって、性善説に基づく甘っちょろいものだと批判されることが多いような気がするのだけど、実はその正反対なのであって、かなり強い性悪説に立つからこそ、こういう結論なのだなぁということ。

ノンエリート青年の社会空間―働くこと、生きること、「大人になる」ということ: 中西 新太郎, 高山 智樹

知人が紹介していて、「でも読む暇ないかも」と書いていたので暇な私が読んでみた(いや暇じゃないんだけど(^^;)

これまで想定さ れていた学校を卒業→企業に就職→終身雇用→結婚して家庭を持って……みたいな標準的なライフコース(※)から「外れ」、非正規労働者として離転職を繰り 返す今どきの青年/若者のあり方を、標準からの逸脱としてではなく、「普通」の一つのあり方として捉えなおす、という感じ。もちろん「これも普通なんだからいいじゃん」で終わるわけではなく、そこできちんと「成長」や「幸福」を生み出していくためにはどうすればいいのか、という問題提起があるのだけど、こ の本では、これまでの青年/若者論の不備の指摘と、現実の状況の観察・記述が中心で、制度設計や政策提言はこれから、という印象(それが悪いと言っている のではなく、第一歩である、という意味で)。

(※ もちろん、それを標準的と見なす想定がそもそも正当なのかということも問われている)

ま、そういう難しい話はさておき、自転車愛好者の端くれとしてはメッセンジャーの状況を調査した章は面白かったし、引っ越し業の状況を調査した章も、単純に「やっぱ彼らはすごい」というレベルでも興味深かった、ということも書いておこう。

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チャイナ・リスク (シリーズ 日本の安全保障 第5巻): 川島 真

安っぽい反中嫌韓本のたぐいのようなタイトルだけど、岩波書店の論文集(笑) 「中国が攻めてきたらどうする」とか言う前にこれくらいは読んでおいてほしい、というのは要求が高すぎるかな?

一読して思うのは、当たり前のことなのだけど、どんな国にも、それが歩んできた歴史というものがあり、それぞれに内在的な論理がある、ということ。中国の場合、その論理はもちろん日本やアメリカのそれとは相容れない部分も大きいわけだけど、「こっちの論理が正しいのだから、そのようにやらせればいい」で済むという単純な話ではない(そもそも「こっちの論理が正しい」かどうかは確言できない)。この「単純な話ではない」というのが、ナイーブに反中意識を露出してしまう人たちに決定的に欠けている認識ではないかと思う。

要するに、この本はもちろん巷で見かけるような粗悪な反中本ではないのだけど、「中国というリスク」に多面的かつ本格的に取り組んだ本であって、「中国は、問題である」という結論には変わりはない。ただし、それは排除すれば済むtroubleやnuisanceではなくて、解かなければいけないproblemなのだ。そしてそれは非常に難問である、というのが読後の感想(それに比べれば北朝鮮ははるかにスケールの小さい容易な問題だと思えてくる)。

特にお勧めは第2章:党の安全保障と人間の安全保障、第3章:「革命の軍隊」の近代化、かな。

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民族という名の宗教―人をまとめる原理・排除する原理 (岩波新書): なだ いなだ

『権威と権力』の続編というか、「二十年後」のお話。

タイトルどおり民族主義/国家主義(ナショナリズム)が主なテーマだけど、類人猿と人間の分岐点にまで遡って説き起こすスケールの大きさ。民族/国家という枠組みを超えるモーメントを持っていた「社会主義インター」を粗大ゴミのように捨ててしまっていいのか、という、昨今で言えばウチダ先生あたりが展開しているような話に着地する。

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権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)| なだ いなだ

「英雄」として挙げられる名前や、終盤の「革命」論議にはやや時代を感じさせるが、それはそれとして、戦後の日本に息づいていたはずの個人主義・理想主義を謳う好著。といっても、この本が書かれた頃(1972年?)にはそういう価値観が伸び悩み/衰えはじめていたからこそ、この本が書かれる必要があったのだろうけど。続編として20年後に書かれた『民族という名の宗教』に読み進める。

 

Amazon.co.jp| 権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)| なだ いなだ| 社会学概論.

モンテ・クリスト伯〈7〉 (岩波文庫): アレクサンドル デュマ, Alexandre Dumas, 山内 義雄

全7巻を読了。

19世紀中頃にフランスの新聞に連載された、要するに当時の大衆小説なのだけど、その頃の「富豪」のイメージが、今の感覚からするとあまりにも鼻につくというか成金趣味というか……。爵位がハク付けのために金で買えたりする、その一方で勃興するブルジョア=産業/金融資本家はこれまた成金っぽくて…という印象。

筋立てとしては復讐譚なのだけど、うまくできているとはいえ、さすがにやりすぎというか、倍返しにもほどがある(笑)

まぁ有名な作品ではあるけど、必読とは言い難いかなぁ。デュマだったら『ダルタニャン物語』(『三銃士』に始まり『鉄仮面』で終わる大河小説)の方が優ると思います。

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