先日読んだ『幻の漂泊民サンカ』と同じ著者。同書で書名だけ触れられていたので気になった。
「海彦・山彦」の物語や『竹取物語』など、子どもの頃~高校生くらいまでに触れた物語に深く突っ込んでいるのが面白い。そしてやはり、サンカや被差別部落も含めて、賎民史というのは、ある意味魅力的なんだよなぁ。
何がキッカケだったのか忘れたけど「読みたい本」にリストアップしていたことに先日気づき、図書館で借りてみた。
Amazonの紹介によれば、
一所不住、一畝不耕。山野河川で天幕暮し。竹細工や川魚漁を生業とし、’60年代に列島から姿を消した自由の民・サンカ。「定住・所有」の枠を軽々と超えた彼らは、原日本人の末裔なのか。中世から続く漂泊民なのか。従来の虚構を解体し、聖と賎、浄と穢から「日本文化」の基層を見据える沖浦民俗学の新たな成果。
という本。
著者がすでに採取した、かなり重要な証言が最終章まで伏せられているので、何だかズルい構成という気がしなくもない。とはいえ、なかなか面白い本ではあった。結論はつまらないと言えばつまらないのだけど、しかしそうやって差別や蔑視の感覚というのが生まれていくのだなぁという点では意義深い。
読み終わったのは5月中。
大筋としては著者の主張に賛同するし、紹介されている事例はどれも素敵なものなのだけど、いずれも、小さなコミュニティの範囲での「エネルギーの選びなおし」に限られているのが気になる。もちろん、そういう小さいコミュニティの実践も積み重なれば大きな違いを生むのかもしれないけど……たとえば東京などの大都市の営みや、鉄道などのインフラを支えるエネルギーを賄うには、やはり大規模集中タイプの発電(原発でなくてもいいけど)が不可欠なのではないか、という気がする。
まぁ突き詰めれば、そういう大都市とか大規模インフラを必要としないような生活が理想なのかもしれないけど、それにはたぶん百年~数百年スケールでの文明観の転換が必要になるだろうな……。
しばらく前に話題になっていたので気にしていたのだけど、文庫化されたので読んでみました。
「イスラム主義政党がフランスで政権を取る可能性」という想定の、近未来政治小説とでも言おうか。舞台になっているのは2022年なので、「次」ということになります。国民戦線のマリーヌ・ルペン、フランソワ・オランドといった政治家も含め、実在の人物の名もたくさん出てきます。
しかし、設定というかアイデアはたいへん面白いのだけど、残念ながら、小説としては出来が悪い。
このあいだ終わった2017年大統領選の展開・結果がこの小説の想定とはまったく違ってしまったのはもちろんしかたないとして、そもそも、この小説のなかで設定された状況が、後半になってかなりの程度なおざりにされてしまっているのです。なんか、面白い設定を思いついて書き始めたのだけど、途中で面倒くさくなって放り出しちゃった感じ。
というわけで、興味深い点がなくはないけど、あまりお勧めはしません。