読んだ本」カテゴリーアーカイブ

永田和宏他『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書)

山中伸弥・羽生善治の対談本が面白かったので、この2人が登場する企画モノであるこの本を図書館で予約してみた。人気があるようでだいぶ待たされたのだが、順番が回ってきて借り出してみたら、先日カンヌでパルムドールを受賞した是枝裕和さんも入っているではないか。もう一人は京大総長の山極壽一さん。

やっぱり山中さんの話が面白かったかな。ラグビーをやっていなかったらiPS細胞の開発もなかったのだ、というのは「風が吹けば桶屋が儲かる」よりは因果関係が濃いと思うよ(笑) 『友情』も読んでみようかな。

で、やはり以前から馴染みがある分、羽生さんの話は別に刺激がないなぁという読後感だったのだが、フレーズとしていちばん印象に残っているのは「様々な種類の物差しを持つ」という奴だなぁと思って、これ言っていたの誰だっけとページを繰ったら、羽生だった(笑)

続編も出ているようなので、いずれ、機会があったら。

 

かこさとし『未来のだるまちゃんへ』(文春文庫)

追悼。

『だるまちゃんとてんぐちゃん』あたりは私も幼い頃に読んだはずで、もう一度読み返してもいいなと思ったのだけど、この、大人向けの自叙伝的エッセイがあるのを知って、図書館で借りて読んでみた。

子どもと真剣に接する機会の多い人、つまり子育て中の人や教師はぜひ読んでおくべき本かもしれない。真摯で誠実なのだけど、どこか森毅さん的な「ええかげんさ」があって良い。こういう大人に接することのできた子どもは幸せだと思うのだけど、実はその分、自分の子どもをけっこうほったらかしにしてしまったことを悔いているところが、世の常という感じで面白い。

そしてやっぱり、彼の絵本作品を読みたくなるなぁ。

 

J. K. Rowling, Harry Potter and the Goblet of Fire (Kindle version)

確か先週土曜日に読了。

前作よりさらに180ページ長くなっているのか……。

以下、ネタバレ。

これはDumbledore先生、ダメでしょう。自分のミス(なりすましを見抜けなかった)で生徒1人死なせちゃったようなものなのだから……。

他国の魔法学校の生徒も英語で話していることになっているのだけど、たぶんイギリス人から見たフランス訛りや東欧訛りのステレオタイプなのだろうなぁと思えるところが興味深い。

次作も読むと思うけど、ちょっと他にも読むべきものが溜ってきてしまっているので、しばらくお休み。次はさらに長くなるのか……。

 

 

平川克美『21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学』(ミシマ社)

確か5月2日に読了。

近所の書店でパラパラとめくったら、借金を返すために全財産を手放したような話になっているから、以前から何冊か著書を買っている身としては、こりゃ応援しないと、と購入。

そういう状況で書かれていることもあって、人間存在にとって何が負債であるのか、といったテーマが非常に面白かった。あとはもちろん、等価交換は関係のリセットであるとか、ITによって貨幣を介さない等価交換を実現する試みの紹介とか……(いま手許にないので言葉づかいが不正確なのはご容赦)。

これまで読んだこの著者の作品のなかでいちばん面白かったかもしれない。たぶん再読する。

J. K. Rowling, Harry Potter and the Prisoner of Azkaban (Kindle version)

3作目。やっぱり一週間くらいかかったけど、Amazonでの紹介だと前作より100頁くらい多いようだから、やはり多少は読むのが速くなっているのかな。

「前2作の展開からして、これが伏線だな」とか思っていると全然違っていたりするので、筋立てそのものは面白いといえば面白いのだけど、少しばかり……飽きてきた(早すぎ?) 理由はいくつかあって、キャラクターが固定化されすぎているのと、基本的に舞台が学校内に限定されていること(これは次作あたりで広がっていくのだろうか)。あと、児童文学としては盛り上がるところなのかもしれないけど、Quidditchの試合のシーンがわりとワンパターンで退屈してしまう……。

例によってDumbledore先生のお話。”The consequence of our actions are always so complicated, so diverse, that predicting the future is a very difficult business indeed. ” と、 “But trust me  …  the time may come when you will be glad you saved his life.” は、モリアでガンダルフがフロドに言ったことを思い出させる。

紙の方ではどうか分からないけど、kindle版だと(翻訳でも)、終った後に次作の冒頭部分が読めるので、つい次も買ってしまいそうだ。

 

清水潔『「南京事件」を調査せよ』(文春文庫)

Twitterなどでも良く名前を見る著者だし(と思ったがフォローしていなかった??)、主題に興味もあるので読んでみた。

本書でも参考文献に挙げられている『南京大虐殺否定論13のウソ』を読んでいたこともあり、事件の解釈自体には(個人的には)新鮮味はないのだけど、歴史修正主義者の論法を「一点突破型」とする説明には膝を打った。

しかしそれより何より、この本の優れたところは、「(後代に)謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」という安倍の言葉に対して、正面から疑問を投げかけるところにあるように思う。そして、その疑問を私も共有する。

 

 

 

岡野大嗣『サイレンと犀 (新鋭短歌シリーズ16) 』(書肆侃侃房)

誰かのSNS投稿で知って、図書館で借りてみた。

現代短歌にはどうもある種の癖というか流行りがあるような気がして、ときどきそれが鼻につく気がするのだけど、とはいえ、よい歌もいくつもあった。音楽と将棋が好きそうなのが良い。6五に桂馬を跳ねる歌が好き。

 

J. K. Rowling, Harry Potter and the Chamber of Secrets

というわけで、二作目は原書で読んでみた。15日に読了。3倍くらい時間がかかるかなぁ(そして日本語で読むのと違って眠くなる…)。

ふだんの時事・実務方面の翻訳では目にすることの少ない、口ごもる、もごもご言う、憤慨する、いきり立つ、みたいな表現がたくさん出てくるのに戸惑うけど、まぁ小説、それも児童文学なら当然か。慣れてしまえば問題ない。

基本的に、事件が解決されたあとでDumbledore先生が大事なことを言う、というのがお約束なのだな。一作目の、 “Always use the proper name for things. Fear of a name increases fear of the thing itself. ” とか、”It takes a great deal of bravery to stand up to our enemies, but just as much to stand up to our friends.” 、この二作目なら、 “It is our choices that show what we truly are, far more than our abilities.” とか。

三作目も原書をkindleで購入。何作目まで読むのだろうか……。

 

 

井上寿一『戦争調査会 幻の政府文書を読み解く』(講談社現代新書、kindle版)

公文書管理に関する政府委員を二つ兼任しているという著者が、あとがきでも昨今の事件について苦々しく触れているのも印象的だが、それはそれとして……。

「第二次世界大戦でもし枢軸国側が勝利していた」という大きなifをもとに書かれたのはフィリップ・K・ディック『高い城の男』だが、この本を読みつつ、ふと「もし真珠湾攻撃が行われず、日米開戦が回避されていたら」という想像をめぐらせずにはいられなかった(この本では、「戦争調査会」の資料などに基づいて、どの時点までその分岐点があったのか、ということが時系列的に語られている)。

小津安二郎の『秋刀魚の味』の、「けど、(あの戦争に)負けてよかったじゃないか」「そうですかね。うん、そうかもしれねぇな。馬鹿な野郎が威張らなくなっただけでもね」というやり取りを思い出す。それは確かにそうかもしれない。しかし戦争そのものが起きていなかったら、その後もしばらくは「馬鹿な野郎」が威張っていたのだろうな。とはいえ「戦争が起きてよかったじゃないか」とは言えないわけで……。

 

J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』(松岡佑子訳、Pottermore from J.K. Rowling)

友人の古書店主が勧めていたのがちょっと意表を突かれる感じだったので、ひとまず1作めを読んでみました(家人もこのシリーズはほとんど読んでいるみたいだし、何しろkindleだとこの1作めはは無料なのです←む、また罠か)。

なかなか面白かったです。ヒットするのもわかる。映画も観たくなりました。さて、続きをどうするかな~。

でも、(比較するものではないかもしれないけど)全作読み終わっても、たぶん自分は『指輪物語』の方が圧倒的に好きなんだろうなぁ、という予感はある……。

しかし、「賢者の石」って、「Philosopher’s Stone」なのか……。philosopherって賢者なのかなぁ……とか思ってしまう(笑)