言葉が鍛えられる場所 | 平川 克美

つい先日も、この人の別の著書について、単に「読んだ」ことをここに記録するだけで、何の感想も記さなかった。

何の印象もなかったわけでも、理解できなかったわけでも、ない。ただ何となく、感想が書きにくい本を書く人なのである。

この本は「現代詩を読むこと」を中心的なテーマ(全体の3分の2くらいかな)にしているが、私のように現代詩を(というか、そもそも詩というものを)読む習慣がない者にとっても、とても面白く読める本である。

ふと、中学3年の頃、実際には観ても読んでもいない芸術作品に関する評論集を、背伸びして面白がって読んでいたことを思い出した(大岡信『肉眼の思想』)。当時、私が通っていたのは地域でも名うての「荒れる中学」で、授業などろくに成立していなかったので、トイレの個室に籠って読んでいたのである。

というようなことは、特にこの本には関係がない。

現代詩以外の場面(たとえばTwitterとか)における「言葉」に触れた章も、もちろん、面白い。というか、そういう章の方がとっつきやすいかもしれない。

言葉が鍛えられる場所 | 平川 克美 | 本 | Amazon.co.jp.

沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか : 安田浩一

安田浩一の本だからどうせ面白いだろう、私が納得するような結論になるのだろう、と甘く見て(?)いたのだけど、予想を超えて凄い本だった。

沖縄の新聞は本当に「偏向」している、というのが本書の結論……と書いたら誤解を招くだろうか。

何しろ、当の「沖縄の新聞」の一つ、沖縄タイムスの記者は、著者の取材に対して、

「沖縄の新聞は偏向しているのかと問われれば、偏向してますと大声で答えたいです。」(本書108頁)

と答えている。

しかし、その「偏向」は、本書のタイトルがそうなっているように、カギカッコ付きの「偏向」なのだ。その文脈において、「偏向」の反対は「公正中立」ではない。

現在の沖縄2紙に対抗して創刊された保守系の新聞の話なども興味深い(その刊行に携わった中心人物がいま何をやっているのか、は非常に印象的)。

 

沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか : 安田浩一 : 本 : アマゾン.

現代議会主義の精神史的状況 他一篇 (岩波文庫) : カール・シュミット, 樋口 陽一

ナチスの御用学者として知られる著者。

それほど深く読み込んだわけではないけど、なんかこう、わりとよく見る思考パターンが表われているような気がする。

どういうことかというと、ある原理(理想と言ってもいい)が、現実にはうまく適用されていないというだけの理由で、その原理を「使えない」ものとして却下してしまう、というパターン。この本のテーマで言えば、議会主義を支える精神的基盤である「公開性」と「討論」が、現代(というのはつまりワイマール共和国時代だが)の議会ではうまく実現していない、だから議会主義はもうダメなんじゃないか、みたいな考え方(乱暴なまとめ方だけど)。

「独裁」がどのようにして台頭するかみたいな部分は(もちろん独裁を正当化する気味はあるものの)面白かった。

 

現代議会主義の精神史的状況 他一篇 (岩波文庫) : カール・シュミット, 樋口 陽一 : 本 : アマゾン.

呼び覚まされる 霊性の震災学 : 金菱 清(ゼミナール)

「被災地、タクシーに乗る幽霊」の記事が話題になったのは1月。東北学院大学の学部生たちによるものなので、1本1本の論文はさすがに質・量とも物足りない感じがするが、それでも面白い(読み進めていて、なんかこれはしっかりしていると思ったら、指導教官が書いたものが1本入っていた・笑)。

途中、さすがに読むのがしんどいものもあるが、それも含めて、いまのこの社会から抹消されている「死」に正面から向かい合った調査の記録だと言えると思う。

ちなみに「タクシーに乗る幽霊」の話は冒頭の一篇。これももちろん質的には言いたいことはあるが、それでも興味深い。

たぶん私は「幽霊なんて信じない」タイプの人間だと思われているような気がするけど、実はそうでもない。

ややこしい話ですが、「幽霊の存在を信じている」わけではないけど、「幽霊なんて存在しない」とも思わない、ということです。

呼び覚まされる 霊性の震災学 : 金菱 清(ゼミナール) : 本 : Amazon.

民主主義を直感するために (犀の教室) : 國分功一郎

これもコンピレーションもので、冒頭「パリのデモから」など、すでに読んだことのある文章も含まれているのだけど、巻末の「辺野古を直感するために」が気になったので、近所の書店で購入。

政治とはちょっと離れるが、「インフォ・プア・フード/インフォ・リッチ・フード」が面白い。これを読んだ直後に「互閃」の料理をいただいたので、なおさら。あまりにも美味しい料理を食べていると、人はだんだん無口になっていくのではないか。わーわーお喋りをするには、「ほどほど」の店が良い(笑)

 

民主主義を直感するために (犀の教室) : 國分功一郎 : 本 : Amazon.

独裁―近代主権論の起源からプロレタリア階級闘争まで : カール シュミット, 田中 浩, 原田 武雄

國分功一郎が、「こうしたもっともらしい理論に惑わされないためには、その理論についてあらかじめ知っておかなければならない」と書いている(笑) 読んでみたいけど、岩波文庫の別の著作の方が読みやすいかな。

 

独裁―近代主権論の起源からプロレタリア階級闘争まで : カール シュミット, 田中 浩, 原田 武雄 : 本 : Amazon.

憲法の無意識 (岩波新書) : 柄谷 行人

四部構成にはなっているけど、第三部・第四部は「憲法の無意識」というテーマからは離れていくし、なんかまとまり悪いなぁと思っていたら、あとがき(の後半)で、これもコンピレーションものであることが判明。ちょっとムリヤリ感があって印象悪い。

本題の「憲法の無意識」論については……「おはなし」としては、まぁ面白いけど、という感じかな。憲法のような論件について、何ら現実の行動につながりようのない説を立てることに意味があるのか、というと……ちょっと面白いからいいか。

憲法の無意識 (岩波新書) : 柄谷 行人 : 本 : Amazon.

日本会議の研究 (扶桑社新書) : 菅野 完

話題の書。

う~ん、日本会議及びその周辺の人々が、どうやって今の状況を築いてきたのかという分析は興味深いし、リベラル側が参考にすべき点も多々あると思うから、この本の意義がないとはいわない。

でも、さすがに終盤、「これじゃよくある陰謀論になってしまわないか?」という雰囲気が濃くなってくる。最後の「淵源」の部分は、流れとしては自然なのだけど、この本の価値を下げている気がするなぁ。1人のカリスマ的黒幕にたどり着いて終わり(しかもその人物には取材すらできていない)、というのでは……。

というわけで、読む価値はあると思うけど、それなりに割り引いて受け止めた方がいいように思う。

 

 

日本会議の研究 (扶桑社新書) : 菅野 完 : 本 : Amazon.

呪いの時代 (新潮文庫) | 内田 樹

近年、ウチダ先生の本はあまりにもたくさん出るし、何か読んだ記憶のあるブログ記事のコンピレーションだったり、いずれにせよ同じことを繰り返し主張しているだけだし、あまり熱心に追いかけず、文庫になったら買うかぁとか、kindleでいいかぁという感じ。

と、ひどいことを書いているが(笑)、それでももちろん、

読めば得るものがある。ネットを中心に、過度に攻撃的になる人が目立っているのにはどういう背景があるのか、というあたりの話。

 

 

呪いの時代 (新潮文庫) | 内田 樹 | 本 | Amazon.co.jp.