つい先日も、この人の別の著書について、単に「読んだ」ことをここに記録するだけで、何の感想も記さなかった。
何の印象もなかったわけでも、理解できなかったわけでも、ない。ただ何となく、感想が書きにくい本を書く人なのである。
この本は「現代詩を読むこと」を中心的なテーマ(全体の3分の2くらいかな)にしているが、私のように現代詩を(というか、そもそも詩というものを)読む習慣がない者にとっても、とても面白く読める本である。
ふと、中学3年の頃、実際には観ても読んでもいない芸術作品に関する評論集を、背伸びして面白がって読んでいたことを思い出した(大岡信『肉眼の思想』)。当時、私が通っていたのは地域でも名うての「荒れる中学」で、授業などろくに成立していなかったので、トイレの個室に籠って読んでいたのである。
というようなことは、特にこの本には関係がない。
現代詩以外の場面(たとえばTwitterとか)における「言葉」に触れた章も、もちろん、面白い。というか、そういう章の方がとっつきやすいかもしれない。