良書。
巻末のブックガイドの最初に出てくる石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)などをすでに読んでいるので、私としては「え、そうだったのか!?」という新しい発見はそれほど多くないのだけど、「ナチスは良いこともした」と主張する人たちが挙げる「良いこと」を、よく整理された論点で丁寧に検証している。その意味で、今後、一つのリファレンスとして有益な存在になる本(というか冊子)だと思う。
「おわりに」の部分で、「ナチスは良いこともした」と主張したがる人たちの動機や心理について考察しているのだけど、もちろん批判的な考察ではあるのだが、どことなく、その視線に温かみがあるところも、この本の優れたところだと思う。Twitterで眺めていると、この本を読みもしないで共著者である田野氏に噛みついている人がいるのだけど、そういう人への田野氏の応対も、けっこう穏やかで温かい。