筒井康隆『家族八景』(新潮文庫)

先日、『日本以外全部沈没』を読んで、どの作品もかなりつまらなかったのだけど、そういえば『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』は、名前をよく知っているのに読んだことがないなと思い、まず、その前物語とも言えるこの作品を読んでみた。

これはなかなか傑作。読心能力を持つ主人公・火田七瀬が目にする「家族」の心の内は、やはりきわめて猥雑で下劣であり、露悪趣味を感じる部分もあるけど、『日本以外…』のように誇張されて鼻につく印象はない。

それにしても、主人公はこの八篇の中で、直接一人を発狂させ、二人(あるいは三人)の死を間接的にもたらすのだから、なかなか罪深い存在である。

いずれ続篇二つも読むことになりそう。

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