ダンス・ダンス・ダンス(上)(下) (講談社文庫) : 村上 春樹

つながりのある文章ではなく、A4の用紙で1枚からせいぜい3枚くらいの単位の「項目」的なものを次から次へと翻訳する仕事をしていると(この2週間で275枚やった)、なんだかきちんとストーリーのあるものを読んで、頭をきちんと回転させたいというか、「流れる」ようにしたい気になってくる。

で、仕事をしながらふと聴いたRay Charlesの歌から思い出した、この小説を。何度か読んだはずだけど、ずいぶん久しぶりに読み返す。

わりと新しい(それでももう数年前だが)『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に至るまで、同じことを繰り返し書いている作家なのだなぁということを改めて実感。「人は成長しなければいけない」「でも成長というのは基本的には悲しいことだ」という、ほぼ、それだけ。

それだけ、なんだけど、それだけでいいじゃん、というのが私の評価。

 

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句集 龍宮 (単行本) | 照井 翠

岩手県立釜石高校の教諭を務める俳人の句集。2013年に出た本なので、今になってこれを知るというのは出遅れ感が否めないけど……。

文芸の迫力と、ああ、やっぱり文芸が必要なんだということを痛感させる本。映像よりも写真よりも多くを伝える言葉がある。今までたくさんの句が詠まれてきたなかで、それでもまだ十七文字でこれほどの叙情・叙景が可能なのだということに驚く。

作者はあとがきのなかで「このような極限状況のなかで、私が辛うじて正気を保つことができたのは、多分俳句の『虚』のおかげでした」と書いている。さもありなん、と思う。

 

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近藤康太郎『おいしい資本主義』(河出書房新社)

何がキッカケでこの本を知ったのか忘れてしまったのだが(そういうことは多い)、かなり面白かった。

市場環境が厳しくなるなかでライターとして書きたいことを書いて食べて行くために、せめて自分が食べる米だけでも自分で作っていけないか、それも朝1時間田んぼで働く程度で(おかずは物書きとして稼ぐ)、という妄想(?)を、文字通り泥まみれになって実現していくおはなし。

このプロジェクト(?)に踏み切ったのが50歳ということは、今の私とほぼ同い年かぁ。

 

おいしい資本主義 | 近藤 康太郎 | 本 | Amazon.co.jp.

「在日特権」の虚構 増補版: ネット空間が生み出したヘイト・スピーチ: 野間 易通

……正直に告白しておきたい。それは、私自身もまた、いくつかの「在日特権」をなんとなく信じていた時期があったのかもしれない、ということだ。

最初に「在日特権」という言葉を聞いたとき、私が即座に「そんなものあるわけないだろ!」と思ったかと言えば、否である。もちろん、ネット右翼言論のいいかげんさは知っていたから、眉唾だなという印象はもったものの、はっきりと全否定していたのではなかった。少なくとも、調べなければわからない、とは思っていた。まあ何らかの利権的なものや優遇措置ぐらいはあるかもしれないとすら、思っていたような気がする。

(本書「おわりに」より)

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失われた時を求めて(3)――花咲く乙女たちのかげにI (岩波文庫) | プルースト, 吉川 一義

あいかわらず特に面白いとも感じないまま読み進んでいる。

が、電車の中で読んでいると、降りるべき駅を乗り過ごしそうになる。

……面白いのか、やっぱり。

梱包材のプチプチを潰していると、別に面白くもないのだが止められなくなるのと似ているだろうか。

この作品をプチプチに喩えたのは私が世界初ではなかろうか(←偉くない)。

引き続き、第4巻へ。700ページもあるんだよなぁ……。

 

 

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パリ同時テロ事件を考える: 白水社編集部: 本

拾い読みのつもりが、結局、すべての執筆者の論文を読んでしまった。

う~ん、座談会の部分も含めて、フランス文化・思想的な部分に軸足を置いているらしき人の言っていることは、どうもしっくりこないというか、リアリティを感じなかった。中東に軸足を置いている人の方にやはり切実感がある(池内恵でさえ)。座談会でも、酒井啓子さんがそのへんに苛立っている感じが伝わってくるような印象。ジャーナリストの人が書いているものもよかった(朝日の論説委員と共同通信のカイロ支局長)。

そういえば、この論集のなかで二人の執筆者が、アントワーヌ・レリスのメッセージを肯定的に取り上げている。日本のメディアでも紹介された、「君たちに私の憎しみはあげない」という文章。

でもあれは、もちろん当人の責ではないにせよ、結果的にテロを煽るひどい文章だと私は思っている。

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ぼくのニセモノをつくるには | ヨシタケ シンスケ | 本

哲学的……と称するにはちょっとシンプルすぎる話ではあるけど、面白い。

ぜんぜん結末が教育的でないところが現代風。

しかし、せっかくロボットを購入するなら、ニセモノを作らずとも、お手伝いとか部屋の片付けとかを代わりにやってもらうだけでよかったんじゃないか(笑) やっぱり「ぼく」がやったという実績にならないとダメなのか。って、マジメに考えるところではないのか。

 

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日本の路地を旅する (文春文庫): 上原 善広

差別の問題が付きまとうだけに、こういう表現をするのがためらわれるのだけど「面白い」。日本の歴史というか、現在も含めた社会の成り立ちが複層的に見えてくる感じ。「日本」を振りかざす人が目立つようになってきている昨今、「あなたの『日本』に、これは含まれていますか?」という問いを投げかけたくなる。

で、まぁ当然と言われれば当然の展開なのだけど、このテーマを探っていくと、エイサーに絡んでくるのだなぁ。

 

 

 

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路地の教室―― 部落差別を考える (ちくまプリマー新書): 上原 善広

何がキッカケでこの本を知ったのだったかなぁ。どこかの書評サイトとかかも。

ちくまプリマ-新書なので、恐らく中学生~高校生くらいを対象として、ごく一般向けに書かれた部落差別についての本。著者はこういう語り口をあまり得意としていないのか、ややまだるっこしい感じはあるし、「それはどうなの」と思う部分もないではないけど、全般的に内容は良かった。昨今のネットでの罵詈雑言をめぐって、「多様性への嫌悪」という捉え方は的確だと思う。というか、何でもそれで説明できてしまう気さえする。

引き続き同じ著者の『日本の路地を旅する』を読んでいて、これはさらに面白い。

 

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バイクとユニコーン (はじめて出逢う世界のおはなし) | ジョシュ, 見田 悠子

図書館の新着図書の棚にあったのがふと目に止まった。キューバの作家の短編集。「はじめて出逢う世界のおはなし」というシリーズ名になっているので、若い人向けの叢書なのかもしれないし、確かに少年・青年が主人公の作品も入っているのだけど、別に大人が読んでも問題ない感じ。

時代設定は完全に現代なのだけど、それだけにいっそう社会の違いが際立って面白く読める。

 

バイクとユニコーン (はじめて出逢う世界のおはなし) | ジョシュ, 見田 悠子 | 本 | Amazon.co.jp.