岩手県立釜石高校の教諭を務める俳人の句集。2013年に出た本なので、今になってこれを知るというのは出遅れ感が否めないけど……。
文芸の迫力と、ああ、やっぱり文芸が必要なんだということを痛感させる本。映像よりも写真よりも多くを伝える言葉がある。今までたくさんの句が詠まれてきたなかで、それでもまだ十七文字でこれほどの叙情・叙景が可能なのだということに驚く。
作者はあとがきのなかで「このような極限状況のなかで、私が辛うじて正気を保つことができたのは、多分俳句の『虚』のおかげでした」と書いている。さもありなん、と思う。