2015年に読んだ本」タグアーカイブ

憲法と平和を問いなおす (ちくま新書) eBook: 長谷部恭男

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これは良い本。以前、図書館で借りたのをkindleで再読したのだけど、これだと家人に読んでもらえないから、やはり紙で買うべきだった。

安保法制をめぐって、安倍政権支持者からは「国会で多数決で決めるのが民主主義だろ」という声があったけど、あの問題に関してはそういう主張が的外れであることが、この本を読めば分かる。

裏を返せば、SEALDs他の国会前抗議行動で「これが民主主義だ」と主張するのも、あの問題に関しては的外れなのではないか、とも思える。ただし前者と違うのは、SEALDsの連中(の少なくとも一部)はそういうこともしっかり意識しているだろう、という点なのだけど。

立場の如何を問わず、基本的なところから考えるために必要な本であるような気がする。ま、私自身がそういう「基本的なところ」を分かっていなかったから感心しているだけなのだけど(笑)

ペスト (新潮文庫): カミュ, 宮崎 嶺雄

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少し読書記録をサボっていたのだけど、記憶を掘り起こしつつ。

8月中旬に読んだのが、これ。恥ずかしながらカミュの作品は『異邦人』しか読んでいなかった(『シシュフォスの神話』も読んだ気がするけど記憶が定かではない)。義父とのあいだでこの作品が話題になったので、気になって、読む。

で、これは傑作だと思います。バックグラウンドになっている思想とか哲学はもちろんなのだけど、しちめんどくさい話は置いといても、単に小説として、そのドラマチックな展開という点で、「面白い」のです。

再読必至の一冊になりました。

釜石の夢 被災地でワールドカップを (講談社文庫): 大友 信彦

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何より、「電車のなかでは読めない」話である。今の季節なら、汗を拭くふりで誤魔化すしかない。

「ラグビーのファンで本当に良かった」と思える本だが、必ずしもラグビーの本ではない。前に投げたらダメ程度の話すら出てこない。「ラグビーは好きだけど、昔のラグビーは知らないし」という最近のファンにも、むしろお勧めしたい。

「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」というコピーが、その空虚さを批判された。

まだ仮設住宅から出られない被災者もいるのに、膨大な金を使ってスタジアムを作るなんて論外だ、という意見があった。

巨大なスタジアムを作っても、イベント終了後は赤字が積み上がっていくだけだ、という指摘もあった。

いずれも真っ当な批判だと思う。しかし、それも「時と場合によって」なのだ。

批判に対してきちんと答えを出した例が、これだ。新国立競技場をめぐる迷走に欠けていた要素の、すべてとは言わないまでも、その多くがここにある。そしてこの本は、「コミュニティ/文化にとってスポーツとは何か」という問いへの一つの答えにもなっているように思う。

 

 

 

オフサイドはなぜ反則か (平凡社ライブラリー): 中村 敏雄

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面白かった。この本を読んだ後、ラグビーの試合の録画を観ていると、この本で描写されている19世紀以前の「フットボール」の様相がダブってきて、何だか微笑ましく思えてくる。

しかしこの本の主張は、ラグビーについては、「オフサイド」ではなく「スローフォワード」に読み替えたほうが説得力が増すような気がする。というのも、少なくとも現代のラグビーでは、オフサイドはアタック側よりもむしろディフェンス側が取られることの多い反則のように思えるからだ(そうでもないかな、半々くらいかな?)

……などと書くと、サッカーファンは「なんでディフェンス側がオフサイド取られるのよ?」と面食らうかもしれない。同じルーツから同じ時期に分岐したスポーツなのに、それほどの違いが生じているのだ。

民衆の敵 (岩波文庫 赤 750-2): イプセン, 竹山 道雄

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町の経済を支える某産業の施設が、実は健康に有害な影響を与えることに気づいた医師がそれを発表しようとしたところ、「経済優先」の保守的な町民の反発を買って「民衆の敵」に仕立て上げられてしまう、という、何やら今の日本のどこででもありそうな話。1882年。

「多数が正義なのではない、正義は少数にこそあるのだ」というところまではともかく、「愚昧な大衆こそが諸悪の根源」とまで言い切るのはどうかと思うぞ、ストックマン先生。とはいえ、一読に値する本。

ちなみに、図書館で借りたのだけど、旧仮名遣いでした。子どもの頃からそんな本ばかり読んでいるから、けっこう旧仮名遣い慣れているんだよね。久しぶりだったけど、全然抵抗なかった(笑) 古文漢文が読めるわけではないけど、いわんや崩し字が読めるわけではないけど、旧仮名遣いは大丈夫です。

 

占領史追跡: ニューズウィーク東京支局長パケナム記者の諜報日記 (新潮文庫): 青木 冨貴子

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Facebookでつながっている、どなたかがお勧めしていたので気になって読んでみました。面白かったです。時期的には、連合軍進駐から講和条約、岸内閣成立くらいまで。サブタイトルにあるように、日本生まれ・イギリス国籍の米誌支局長の動きを軸に話は進み、そこで浮かび上がるテーマが「皇室の対米工作」といったところかなぁ。

こういう歴史に関する書物を読んでいると、本来のテーマとあまり関係ないところにビックリしたりするのが常で、たとえばマッカーサー司令官と昭和天皇が並んで写っている写真が有名だけど、マッカーサーの方が20歳も年上だったのかぁ、とか’(マッカーサーは大正天皇と1歳違い)。そして、考えてみたら当たり前なのだけど、終戦当時の昭和天皇って今の私より若かったんだなぁ、とか(当時44歳)。