ノーム・チョムスキー、ロバート・ポーリン他『気候危機とグローバルグリーンニューディール』(早川健治・訳、那須里山舎)

TwitterでDeepLについて面白い考察を書いていらっしゃる方がいて、その方が翻訳されたのが本書。なかばお付き合いで購入したようなものだが(失礼!)、これがけっこう良かった。

グリーンニューディールについては昨年11月に岩波新書の1冊を読んでいて、そちらの方が手軽といえば手軽なのだけど、本書の方が財源の話などいろいろ具体的で、その分、希望を抱かせる内容になっているように思う。手に取るとけっこうなボリュームがあるように感じるが、そこまで難渋はしなかった。岩波新書を先に読んで一通り予備知識を得ていたからだろうか。しかし、どちらか一冊だけ読むなら、本書の方がいいかもしれない。

翻訳は、少し気になるところはあったものの、重たい真面目な内容のわりに、総じて読みやすい。しかしチョムスキーの文体というか語り口というのは、誰が訳してもこういう感じになるものなのかなぁ(笑) 原文で読んだことがないので確言はできないのだけど、そもそも当人の毒舌ぶりがあまりセンスがいいとは思えないので、しかたがないのかも。本来の言語学の著作だと、また違うのだろうが。

訳注が親切で、そこから得られる情報もかなり良い。訳者あとがきの後半部分は、本書の主題から少しばかり外れて機械翻訳(DeepL)の考察に充てられていて、そこももちろん面白い。それにしても、上に書いた「少し気になるところ」の一つはexistential crisisを「実存的危機」と訳す点で、個人的には「存亡の危機」の方が優るのではと思うのだけど、訳者あとがきで紹介されるDeepLの訳がまさに「存亡の危機」になっていて、何となく悔しい(笑) しかし、人類とか社会とか、そういう大きな主語について「実存」という言葉を使うのは、哲学科出身としては少し違和感があるのだよね…。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください