寺尾紗穂 『日本人が移民だった頃』(河出書房新社)

基本的に、戦前にパラオに移民した日本人の「その後」を追ったドキュメンタリー。帰国して国内の他地域に改めて「入植」した人もいれば、国内に居所を見つけられず、改めて南米(本書ではパラグアイ)に移住した人もいる。いずれも苦労を重ねている印象が強いが、どこか、郷里や母国を離れた、ある意味で根無し草であってもしっかりと人生を続けていく人たちの、たくましさと言ってしまうとあまりにも陳腐に思えるような強靱さを感じる。

これから「移民」を受け入れていかなければ回っていかないであろう日本社会についての言及・考察は、期待していた分、やや物足りないのだけど、それを補って余りある「厚み」のある労作。

 

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