伊藤邦武『プラグマティズム入門』ちくま新書

少し前に、元ラグビー日本代表の平尾剛史さんが勧めていた『物語 哲学の歴史』(中公新書)を読んだときに、「あ~やはりこの部分に馴染みがない」と特に思ったのが、プラグマティズム(と、論理実証主義)。

せっかくなので、上掲書と同じ著者の本で勉強しようかと思って、これを読んでみた次第。

けっこう面白かったです。特に真ん中の「少し前のプラグマティズム」のところ。クワイン、ローティ、パットナムといった顔ぶれ。私が大学に入った頃、必読書のような扱いを受けていた(でも読んでいない)トーマス・クーン『科学革命の構造』あたりも絡んできて、たいへん興味深い。あと、もっと前(プラグマティズムの源流あたり)だけど、大学の頃にけっこう中心的に読んでいたベルクソンなんかも、この流れと親和性が高い。

その名のとおり、実に現実的・実践的で、いろいろな分野に応用が効く、まさしく「有効な」思想なのだということはよく分かります。

というわけで、今後もこの流れには関心を持っていきたいなとは思います(ひとまずクーンを読むかな)。この本も、図書館で借りて読んだのだけど、買っちゃうかも。

ただ、その有効性ゆえに、なんというか「深淵をふと覗きこんでしまった」ヤバさがないんですな。そもそも出発点としてのデカルト主義への批判という意味では、結局のところ、有効な批判にはなりえていないという気もするし。

世の中に、ネットスラングに近いけど「中二病」という言葉があって、要するに中学二年生前後の、いわゆる思春期の頃に、自己愛をこじらせて空想・妄想が暴走するような状況を指すようです。

私が、『自分で考えるということ』というデカルトの思想を紹介する本を読んで、見事にハマってしまったのも、ちょうどそれくらいの時期。しかしあの頃、その代わりにこういうプラグマティズムの哲学に触れていたら、たぶん、そのようなハマり方はしなかっただろうと思う。そういうヤバさが不足している。不足しているというか、それが無いのが優れたところなのかもしれませんが。

そういえば、冒頭に触れた『物語 哲学の歴史』は、妙に現象学の扱いが軽いのも気になったんだよなぁ……。やっぱり、哲学に中二病的にハマるには、デカルト、カント、ニーチェ、現象学、実存主義ですよ!(何をオススメしているんだか)。

 

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