吉野源三郎『同時代のこと-ヴェトナム戦争を忘れるな』(岩波新書)

『飛ぶ教室』を読んで『君たちはどう生きるか』を連想し、そういえば吉野源三郎の文章って他に読んだことがないなぁと思って、これを図書館で借りる。

1970年代、つまりソ連崩壊も中国の市場主義経済大国としての台頭もはるか先の頃なので、もちろん、その時代の条件に制約された文章ではあるのだけど、誠実さとか真摯さという意味では、そういうのってあまり関係がない。

本編は、当時進行中だったヴェトナム戦争についての文章・講演録なので、さすがに今日性はじゃっかん薄れているが、冒頭に置かれた「同時代のことー序に代えて」は、今でも切々と訴えるものがある文章だ。

「実際に日常の生活に衝撃を与えるような事件が起こるとか、そのような状況が発生しない限り、大多数の人々は自分たちの日常に直接かかわりのないことに眼を配ろうとはしないのが常である」(p23)

「この危険は、日本の場合には、国民が無知の状態に置かれるという危険だけに留まらなかった。国民を無知の状態に置こうと努める者自身が、いつのまにか恐るべき無知に陥っていたのである。」(p24~25)

 

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