臼杵陽『世界史の中のパレスチナ問題』(講談社現代新書)

古くは古代ユダヤからキリスト教の誕生、そして現代に至るまでの歴史の中に中東・パレスチナ問題を位置づけるという、新書サイズでそれをやるか、という野心的な内容。いちおう知っている内容が多かったけど、平易さをめざして「ですます」調で書かれているせいで、却って読みにくくなっている印象もある。

本書の出版は2013年なので、今まさに展開中の事態について直接的な手がかりになるとは限らないが、かつてはアラブ(諸国)対イスラエルという構図だったのが、どのような経緯で「パレスチナ」に凝縮されていったのかは伝わってくる(何しろ情報量が多いので消化不良にはなるが)。

結局のところ、問題の大半はキリスト教国、もっとはっきり言えば欧米諸国の責任だよな、という話になってしまうのは必然なのだけど、それも数百年にわたる話なので、現代の欧米諸国がきちんとその責任を取るというのも現実的には無理筋。一方で、もちろん、イスラエルのここ数カ月の行為が許される理由は皆無である。

今回のイスラエルによるホロコーストで、問題の解決はさらに30年、あるいはそれ以上先送りされてしまったと思うのだけど、ひとまずは、できるかぎり流血の事態を防ぐ対症療法に徹して、新たな英知が芽生えるのを待つしかない、という気がする。たぶん、国民国家という枠組が有力なままであるあいだは解決できないのだろう。

 

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