ジェフリー・ディーヴァー『コフィン・ダンサー(上)(下)』(池田真紀子・訳、文春文庫)

「リンカーン・ライム」シリーズ2作目。

前作『ボーン・コレクター』の感想で書いたように、殺害方法が陰惨で猟奇的なので、シリーズを読み進めるのはやめようかなぁと思っていたのだが、つい手を出してしまった。

軸になるのが鑑識というマニアックな分野なので、その分、前作を読んでいることは大きなアドバンテージになり、すいすい読み進められる感じ。登場人物もおなじみの顔ぶれが多いし。この作品ではそれに加えて航空関係の蘊蓄もけっこう出てきて、なかなか新しい世界が開けている。

が、肝心のプロットに関しては、矛盾とまでは言わないまでも、「ちょっとそれはさすがに無理なんじゃないの」という印象を受けた。容疑者から命を狙われる可能性がきわめて高く、しかもいったんは警察の保護下に入った重要な証人(と思われる人物)から警察が簡単に目を離してしまうことは考えにくいし、その人物が改めて警察の保護下に戻った経緯も描かれていない(どうせすぐ戻ってくるだろうという希望は語られるが)。その空白の時間のあいだに、それほどのことができたとも考えにくい。その意味で、この手の作品としてはちょっと欠陥があるのではないかと思う。

とはいえ、せっかくこの世界に馴染みができたので、これに続くシリーズ作品も読んでしまうような予感があるのだけど。

 

 

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