佐藤さとる『豆つぶほどの小さないぬ』(講談社文庫)

続いてシリーズ第2作。

語り手がコロボックルの若者に代わり、「せいたかさん」「(おちび先生改め)ママ先生」「えくぼう」など人間も出てくるが、基本的にはコロボックルのコミュニティ内の話。

その分、正統派ファンタジーではあるのだろうが、やや子供向けというか、物足りない感じはする。しかし「あとがき」によれば、作者自身が本来書きたかったのはこういう作品で、ただ、いきなりコロボックルを登場させても「不自然でおさまりが悪い」ので、しかたなく(?)先行する物語として第1作を書いたのだという。

もっとも、「理屈抜きの面白い小人物語」(あとがき)とはいえ、そこかしこに「作中の時代を証言する」(同)部分があって興味深い。特に、沖縄民謡とご縁のできた身として印象的だったのが、南米(本作ではブラジル)への移民とその子孫(つまり今で言う日系ブラジル人だ)の話。「親たちは、日本からの手紙を、とてもとても喜びます。(略)できましたら、お写真も、送ってください」というところに胸を打たれる。

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