大橋泰彦『ゴジラ』(白水社)

『セールスマンの死』(PARCO劇場)に出演していた高橋克実の名で劇団離風霊船を思い出し、その後、映画『シン・ゴジラ』を観たことで、ふと離風霊船の代表作の一つである『ゴジラ』を読みたくなった。この作品の舞台は…観たことあったかな? タイニイアリスあたりで観たような気もするが、記憶違いかもしれない。

『シン・ゴジラ』とは対照的に、こちらは誰もが「ゴジラ」を知っているという前提に立脚した作品。逆に、そこに依存しすぎという嫌いもあるが。

それにしても、この頃(1980年代後半)の小劇場というのは、不条理でありつつ、実にロマンチックなものだったなぁと感じる。ロマンチックというのは、ストーリーとして恋愛を描いているというだけでなく、舞台そのものがロマンである、という意味で。

たとえば「生身の役者が着ぐるみもなしにゴジラを演じて、何か問題でも?」といった態度に、演技や演出の可能性、そして何よりも観客の想像力への信頼感がすごく強いことが窺われる。そこにはもちろん、歌舞伎など伝統芸能や新劇における約束事とは違うものの、やはり観客との共犯関係とでも言うべきものがあって、そこに頼っていた部分ももちろんあるのだけど、「この表現についてこられる?」という挑戦的な態度があるように思える。「よく分からない」という人が一定割合、いや過半数でもかまわない、くらいの開き直りもあったのかもしれない。

本書はむろん新刊では入手できず、電子化もされておらず、図書館で借りたのだけど、蔵書点検や設備工事の関係で休館期間があって返却期限が少し延びているので、少し時間をおいてもう一度読み返したい。

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