河岡義裕・編『ネオウイルス学』(集英社新書)

ウイルスを、疾病をもたらす悪玉としてのみ捉えるのではなく、「ウイルスを地球生態系の構成要素として理解」し(本書299ページ)、究極的には「偏見のない視点で地球環境に生存するウイルスの全体を自然科学的にとらえる」ことを目標とする「ネオウイルス学」と称するプロジェクトを紹介する本。

編者の他18人の研究者(馴染み深い存在となった西浦博さんも含まれている)が、自分がどのような経緯と動機に基づいてどのような研究に取り組んでいるのかを紹介していく構成。

たいへん分かりやすく興味深いのだけど、何というか、これから自分の専門を決めようという大学の新入生が「どの先生のお世話になろうかなぁ」と考えるときの進路資料としては好適であるように思うのだけど、一般の読者が一冊の本として読むにはむしろ物足りないというか、「あ、この人の研究は面白そうだ!」と思っても、すぐに次の人の節に移ってしまうので、だいぶもったいない感じ。西浦博さんのように一般向けの単著を出している人なら、それを読めばいいのだけど。

そうだ、出版関係の人がこの本を読んで、「よし、この人にこのテーマで一般向けの本を書いてもらおう」といった具合に企画の参考にすると良いかもしれない。そして、出来上がった本を我々が読む、と(笑) というわけで、出版関係の知人の皆さま、ぜひ一読をお勧めします!

 

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