しばらく前から、同業というか、翻訳関係の人をTwitterで積極的にフォローするようにしていて、その中のお一人の訳業とのことで、手に取ってみた。
まぁ何というか、自分は世間一般よりは多少はマシなのかもしれないけど、それでもやはり認識をアップデートする必要があるよなぁとも思っていたし。
人は多様であり、しかも変化する、ということ。これに尽きる。
もちろん「実はそれほど多様でもなく変化もしないのではないか」という省察は折々のタイミングで必要だとは思うのだけど、それでも、他の側面について「多様であり、変化する」ことが当たり前のように思われているのと同じ程度には、性的指向や性自認についても考慮されるべきだろう、という気がする。
翻訳については恐らく評価が分かれるのではないか。ただ、原著(こちらはkindleで購入した)の文体の雰囲気を活かそうという意志を強く感じる。そして、私自身もついやってしまいがちなのだけど、文章だけを追って読んでいると、その「ノリ」がしっくり来ない。せっかくそういう作りになっているのだから、しっかりイラストを見つめながら読まないとダメ(そしてその意味では紙の本で読む方がよさそう)。
あと、私が読みやすい/読みにくいと感じる文章を、他の人もそのように感じるとは限らないのは当然なのだが、そういう「読みやすい文章とはどういうものか」という評価軸にも、かなりの程度ジェンダーバイアスがかかってくる可能性はあるよなぁ、という気がする。
そうそう、私自身も翻訳業界の末席を汚す身として、「代名詞」の話はたいへん興味深い。もっとも、当然ながら英語で書かれたこの本では「一人称単数」については触れられていないのだが、日々翻訳の仕事をやっていて悩むのは、一人称単数を何にするか、だったりする。クライアントによってはきっちり基準を示してくれたりするのだけど。