先月、京都の古書店で購入。
美しい本。
「I」に収録された9編は、「今、……を旅しています」みたいな書き出しで始まる、まるで誰かに送った少し長めの書簡のような体裁。これは誰かに宛てた手紙なのか、それとも雑誌の連載か何かで読者に語りかけているという形なのか。巻末で初出を確認しようという誘惑に駆られるが、ふと「自分宛てに書かれた手紙だと思えばいい」と思い至り、そのように読めば、ひときわ味わい深い感じ。
「II」以下は通常の文体で書かれたエッセイなのだが、いずれも噛みしめて味わうに値する文章。もちろん若いうちにこれを読んでいれば(アラスカを訪れるかどうかはさておき)影響される点も多々あったかもしれないが、今さら夢を追うでもない年齢で読んでも、何とはなしに得るものの多い本だと思う。
しかし、著者が体験したようなアラスカの自然がこれからも残っていくのかというと、恐らくそれはかなり難しいのだろうな…。
解説は著者と親交あった池澤夏樹。彼は小説家で、エッセイの類いも多いが、文章は星野道夫の方がいいのではないか…。