森田邦久『量子力学の哲学――非実在性・非局所性・粒子と波の二重性』(講談社現代新書)

2019年最後に読み終わったのはこの本ということになった。

かなり読み進むまでは、今ひとつ哲学的な探求(反省)が感じられず、「いや、だからある物理量が実在するかしないかって、実在、存在の意味を問わなきゃ哲学とは言えないでしょ」などと文句を言っていたのだけど、終盤に差し掛かるにつれて、ああ、この著者はなるべく哲学的なタームを使わずに哲学的な内容に触れようとしているのかだなぁということが感じられるようになった。「未来が現在に影響を及ぼす」論に関して(いかにもスピリチュアル系の人が「量子力学で証明されています」みたいな形で持ち出しそうな話だけど、これはもっと真面目な文脈である、もちろん・笑)、因果関係が時系列に拘束されるというのは人間の思考の枠組みがそうなっているというだけであって(表現はこのとおりではなかったと思うけど)……というあたりは、まさに「哲学」の本領発揮という感じ。

面白い本だった。

結局、物理学もこの段階に至るとメタ物理学(metaphysics)を論じることなしには、自然科学の素朴性という限界を超えられないのだろうなぁ、という印象。結局、いくら高度で難解であっても、素朴なものは素朴なままなのだ。

 

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