4月中に読了。
だいぶ前に、第二次世界大戦中にアメリカで強制収容された日本人・日系アメリカ人に関する記事を翻訳したことがあったのだが、そのとき「では、日本にいた外国人はどうなったんだろう?」という疑問を抱き、この本を発見し、いずれ読みたいと思っていた。
それとはまったく関係なしに、先日知人が上演した『メアリー・ステュアート』という芝居を観て、戯曲を図書館で借りて読んだら、作者のダーチャ・マライーニが幼少時に日本で親とともに抑留されていたことを知った。それも、同盟国だったイタリア国民なのに。
そこで、この本を前に気にしたことがあったなぁと思い出して読んでみたら、なるほど、イタリア人抑留の文脈で、マライーニ家に対する言及もあった。
平和な時代においては日本の社会に定着し、日本人との親交も厚かったにもかかわらず、戦争を機に、民間人も自宅や家族から切り離されて不自由な(人によっては健康を害し死に至ることもあった)抑留生活を強いられるという悲劇に遭う……という状況が突きつけられるわけだが、そういう痛切な認識はもちろんのこととして、それ以外にもなかなか興味深い点があった。
この本では抑留された外国人の国籍が詳しく示されているのだけど、アメリカ、イギリスといったまぁ第二次世界大戦における主敵ともいえる国の人たちは(性別や年齢の条件はありつつも)当然ながら最初に抑留されている。それ以外にも、いわゆる連合国側の人たちは抑留されるのだけど、意外に多いのがギリシャ人。どうしてかというと、さすが海運国で、ほとんどが船員関係。たまたま開戦の時期に日本に寄港していた乗船が拿捕されてしまい、そのまま抑留された、と。オランダ人もいて、なかには長崎・出島の商館長の子孫もいるというところが、江戸時代からの連続性を感じさせる。
では、マライーニ家など、同盟国だったはずのイタリア人はなぜ、いつ頃から抑留されたのか……といったあたりは、興味のある人は是非読んでいただきたい。ちなみに、イタリア人でも抑留されなかった人はいる。さらに言えば、これまた同盟国であるドイツの国民でも、戦争初期から抑留(自宅軟禁だったかな?)された人がいる、というのは、これまた痛切な話。
テーマの重さや地味さのわりに、いろいろ話のネタになる面白い本だった。