ジョン・ウィンダム(中村融・訳)『トリフィド時代(食人植物の恐怖)』

いやはや、面白かった。

実はこの作品、40年近く前に読んだことがある。恐らく小学校高学年から中学1年生くらいまで、まぁそれくらいの年頃の読書好きの子供にはありがちな話だけど、SFに強く惹かれた時期があった。古今東西の名作を紹介した本を参考に、面白そうだと思ったものを読んだなかの一つが、この作品。当時は『トリフィドの日』というタイトルだった(恐らく1960年代の峯岸久氏の訳)。

この新訳には、「食人植物の恐怖」という、いかにもB級っぽい副題がついているし、たぶん子供の私もそういう分かりやすさに惹かれて選んだのではなかろうか。確かに、人間の天敵となる植物(=トリフィド)のことしか覚えていなかった。

しかし今回読み返してみたら、確かにトリフィドも印象的ではあるのだけど、それよりもむしろ、「人類ほぼ滅亡」の状況のなかで生き残ったわずかな人々がどのように文明/社会を再建していくか、というのがメインテーマであり、そこで文明観/社会観が分岐・対立していく様子が面白い作品だった。

これは小松左京『こちらニッポン』にも共通する要素で、やはり私はSFとしてはこういう設定が好きなのだなぁと再確認。確か『こちらニッポン』の解説で誰かが「小松左京のすごいところは、大きな嘘(架空の設定)を一つだけついておいて、あとは徹底してリアリズムを貫くところ」と評していたのだが、この作品もそんな感じ(まぁこの作品では「人類ほぼ滅亡」と「トリフィドの存在」と、二つの大きな嘘があるのだが)。

著者自身は続編を書いていないのだが、2001年にこの作品の発表50周年を記念して、別の作家が遺族公認の続編を著したとのこと。こちらは翻訳がないので、原書をkindleで買ってしまった。

 

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