図書館で久しぶりにブルーバックスの棚を見ていて、目についた本。
よい本なのだけど、私自身にとっては期待外れ。
経験的に知覚される時間から、ニュートン力学的な絶対時間、相対論から量子場の理論、超弦理論へと、「時間」というテーマからときどき大幅に脱線しつつも現代物理学に至る流れが語られるのだけど、そもそも「経験的に知覚される時間」という出発点を問い直す作業がなされていないので、「え、そこはもう前提にしてしまっていいの?」という戸惑いを感じざるをえない。
要は、私が本当に求めているのは哲学(人間の知性に対する問い直し)であって、物理学ではないのだなぁというだけの話なのだけど。
とはいえ、上述のような物理学の流れを把握するという点で、この本はとても説明が分かりやすいように思う。もっともそれは、末尾に参考文献として挙げられている吉田伸夫『素粒子論はなぜわかりにくいのか』を含め、関連の本をすでにいくつか読んでいるというベースがあるからかもしれない。参考文献といえば、この本では「なぜこの文献がお勧めなのか」を著者がきちんと書いてくれているので、「あ、次はこの本を読んでみたい」というのが分かりやすい。