中脇初枝『世界の果てのこどもたち』(講談社文庫)

「満州開拓のために高知の山村から移住」「日本に併合された朝鮮に生まれ生活苦のために満州に活路を求めて移住」「横浜の裕福な商社員の家に生まれ、ふとしたキッカケで満州の開拓地を訪問」という3人の少女の出会いと友情、その後の運命を描いた物語。

戦争で命を落とした人はもちろんたくさんいて、この作品でもそれは描かれているのだが、ふと、いずれ親になっていたかもしれない人がそのようにして死んでいったことで、ついに生まれることのなかった人間も、同じように(あるいはそれ以上に)たくさんいるのだよな、ということを、ふと思った。そう考えると、自分が昭和一桁世代の両親のもとに生まれて、いまこうして生きているのも、考えてみればものすごく幸運なことなのだ。戦争について考えるときに、いわゆる「生存バイアス」を避けるためには、小説ではあるけど、こういうものを読むことが一つの助けになるような気がする。

この作品に不満があるとすれば、というか、ものすごく不満なのだけど、「短すぎる」ということ(笑) 3人の女性の、幼少時からそれなりの高齢者になるまでの人生を描くのに、薄手の文庫本1冊ではいかにも物足りない。上中下くらいの分厚さはほしい。つまりこの世界をもっとたっぷり描いてほしいという趣旨で、要は評価は低くないのです。でもそれだと当節は読んでもらえないんだろうな。

 

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