岸政彦『はじめての沖縄』(新曜社)

Amazonの商品紹介にもあるように「初めて沖縄に行く人のための基本的な情報、その歴史や文化、そして観光名所の解説はありません」。

著者自身も「めんどくさい、読みづらい」(序章)「役に立たない」「めんどくさい」本(巻末謝辞)と書いている。

実際、悪く言えば同じところをグルグルと回ってどこにも行けていないような、そういう逡巡というか手探りというか、そういう印象の本である。

だから、これまで沖縄とご縁がなかった人が読むと何がなんだか分からないままに終るだろう。

が、それなりに沖縄との接点を持っている人にとっては、歯切れの悪さを感じつつも、十分に「後味の残る」本であると思う。

特に終盤の「ほんとうの沖縄、ふつうの沖縄」「ねじれと分断」の2章はよい。そして最終的には、沖縄について(あるいは「内地」について)語ることを通して、「社会とは何なのか」という興味深い問いが現れてくる。

個人的には、もう10年以上も前の話だけど、同じように沖縄に「ハマった」仲間の1人が、「那覇もずいぶん変わった」と言うのを耳にして、「オレもあんたもたかだか10年前くらいからしか知らないのに『変わった』とかいうのは笑止」と感じたことを思い出した。もちろん、その短い間にも確かに変化は生じていたので、彼が口にした「変わった」は事実ではあったのだけど。

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