「ああ、京都に行きたいなぁ」と思わせるが、観光案内ではない。
市バス206系統の経路に沿って(ときに逸脱しつつも)、京都を語っていく構成。もちろん寺社仏閣の名も折に触れて出てくるのだが、街並みや衣食住を含む文化を語る比重が大きい。
本書で紹介されている諸々の、これといって特にどこに行きたい、何を食べたいという場所やものを挙げていくことはなかなか難しいのだけど(挙げていくと切りがないとも言える)、次に京都を訪れるときに、街を見る目がだいぶ変わってくるような、そういう本である。
末尾近くに、こうある。
「だから京都という街を知るには、味わうには、京都に友人を、あるいは親戚を、ひとり作ることである。これにかぎる」
しかしそればっかりはご縁というもので、その点で自分が恵まれていたことに感謝したい。といっても、まだまだ知る・味わうの域には至っていないのだが。