小松左京『日本沈没(上)(下)』(角川文庫、kindle版)

映画も両方観たし(2006年版は俳優が幼すぎて観るに堪えないが)、一色登希彦による『日本沈没』が好きなのだが、そういえば原作は読んでいなかったので、藤岡換太郎の著書を2冊読んだのをキッカケに手に取った。

漫画や映画に比べてスペクタクル性には乏しく、淡々として理屈っぽくなるのは当然だが、それでもさすがに読ませる。難民救出のための空港・港湾施設が軒並み使えなくなるという経緯は真に迫っている。日本難民の海外移住をめぐるあれこれ、特にナミビア関連の状況などが丁寧に描かれているのも印象的。一方で、映画はともかく、一色版に比べて女性の登場人物の比重がゼロに等しいのは、やはり時代かなぁ。また、「沈没」を防ぐための科学技術による抵抗がほとんど描かれないのも大きな違いか。

「世の中」が、どこかでうまくいかなくなりはじめているのではないか、何か、決定的に具合の悪いことが起こりはじめているのではないか、という不吉な予感(第五章「沈み行く国」)

という表現は、今の状況に照らすと、示唆的という以上のものがあるように思う。

そして、この作品も「第一部 完」という形で終っていることを初めて知った。第二部を読むかどうかは思案中。

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