西成活裕『渋滞学』(新潮選書)

今年も何度か中央高速で酷い渋滞を経験してウンザリしたということもあって、有名なこの本を読んでみた。

これを読んだからといって渋滞を回避できるわけではないし、なるべく渋滞を引き起こさないような運転を心がけるとしても、そのようなノウハウを持たないドライバーがほとんどなのだから、どれだけ効果があるかどうかは怪しい。とはいえ、渋滞の発生をシンプルにモデル化する試みなどは大変面白い。

この本では自動車の渋滞だけでなく、火災などパニック時の人の動きやアリの行列、インターネットの混雑、神経繊維の信号伝達、お金の動きまで幅広く「渋滞学」の応用が試みられていて愉快なのだが、特に「なるほど」と膝を打ったのが、世の中には「渋滞させることが望ましいもの」もある、ということ。

量的にはあっさりと触れられているだけなのだが、一つは、気候変動ゆえか世界のあちこちで頻発している森林・原野火災。火が燃え移っていくペースに「渋滞」を引き起こすことができれば、自然鎮火につながるし、人為的な消火もたやすくなる。

もう一つは、本当に軽く触れられているだけなのだが、まさに私たちがいま体験している「あれ」である。スムーズに移動させてはダメ、「渋滞」させないといけない…。

 

 

 

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