栗原俊雄『特攻-戦争と日本人』(中公新書)

『この世界の片隅に』を観て以来、「もう一度観たい」という願望は果たさぬまま、「あの頃」に関する本を立て続けに読んでいる。

この本は以前何かで知って「読みたい本リスト」に入っていたもの。

先日読んだ『シベリア出兵』から受けた印象とは全然違って、特攻の方針が決まり、実施されていく過程は、とにかく異常で、愚劣で、気持ち悪い。

「いやいや、だからどうしてそこでそういう結論になるのよ!?」と全力で突っ込みたい衝動に駆られる。「勝つためにはこうするしかない!」「いや、そうしなきゃいけない時点でもう勝ちはないから」みたいな感じ。

『この世界の…』や『小さいおうち』が、平凡ではあるが、そのぶんまっとうな人々の普通の生活を描いていたのとは対照的に、こちらは本当にグロテスク。

というようなことを書くと、「今日の価値観で断罪してはいけない」みたいなことを言う人がいる。そりゃもちろん、当時の人は当時の人なりに、一生懸命考えて、それが最善であると思ってやっていたのかもしれない。でもね、70年分の進歩を経た(応分の進歩であるかどうかはさておき)我々としては、「今日の価値観」で断罪しなきゃダメなんですよ。

でないと、繰り返すから。

まぁもっとも、今の日本には、特攻に至る過程を知っても、それを異常とも愚劣とも気持ち悪いとも思わない人がけっこうたくさんいて、だからこそ、こういう社会になっているのかもしれないけど。

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