たぶん政治的な立ち位置としては自分と著者とはけっこう乖離があると思うのだけど、専門領域における識見はもちろん敬意を払うに値する。Twitter(現X)上でのコメントでいろいろ絡まれているのを見ると、逆にこの人が真っ当な知識人であることが浮き彫りになってくるような感じ。
この本は2016年刊行なので昨年来のガザの状況とかにはもちろん触れていないし、地域的にももう少し北寄りに重点があるのだが、もちろん昨今の状況を理解する上でも有益。
クルド人をめぐる歴史や現状(といっても10年近く経っているので変化はあるだろうが)にけっこう比重が置かれていて勉強になった。
地図が豊富に挿入されているのもポイントが高いところで、いちいち前の方に戻って地図を参照するといった手間がかからず、読者に優しい。
ただしもちろん、「なるほど、そうすれば解決に至るのか」という分かりやすいソリューションを提示する本ではない。