筒井康隆『日本以外全部沈没 パニック短篇集』(角川文庫)

先日、小松左京『日本沈没』を読んだのだが、そういえばパロディ作品として、これがあったなと思い出して、読んでみた。パロディと言っても、小松左京本人に「書いてみれば?」と言われたという、いわばお墨付きである。この作品の末尾にも、小松がパロディ作品の執筆を認めてくれたことへの謝辞が付されている。

表題作を含め11篇が収録されているのだけど…。

あまりこういう書き方をしたくはないのだが、ビックリするほどつまらなくて意外なほどだった。昔はけっこう面白がって読んでいた記憶があるのだけど…。何というか、露悪趣味な部分が、当時は刺激的だったのかもしれないけど、今となっては単に悪趣味という印象しか与えないように思う。古くさい刺激と言うべきか。

そもそも「ネタ」として取り上げている、たとえば学生運動とか農協とかがすでにリアリティを伴っていないという側面もある。私が年を取ったからこういう作品を楽しめなくなったという部分はあるとしても、そういう一過性の「ネタ」に依存している分、若い読者なら今でも面白がって読むという状況も考えにくい。

そういえば、しばらく前に読んだ『さらば国分寺書店のオババ』の巻末対談で、著者の椎名誠が「思ったほどひどくないよ」「当時はオレも面白かったんだから、それがこんなに印象が違うとは思わなかった」と述べていたのを思い出す。

小松左京『日本沈没』は今も読むべき価値のある作品だと思うが、パロディ作品の方はすでに輝きをすっかり失っているのかと思うと、パロディのあり方というものを考えさせられる。

 

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