先日翻訳した記事に「魔女」の話が出てきたと書いたら、知人の女優からこの作品を勧められた。
舞台は17世紀アメリカなのだけど、執筆された20世紀半ば、マッカーシズムによる「赤狩り」の嵐が吹き荒れていたころのアメリカ社会を想定している、とされている。
そういえば西部開拓時代の米国では、手つかずの自然という厳しい相手に直面する中で、ひときわ信仰に頼る部分が強くなったことが、原理主義的な教派が拡大する原動力になった、みたいな話を何かで読んだ。17世紀にもなって(あるいは20世紀にもなって)、この種の集団的狂信が生じてしまうというのは、そうした背景があるのだろう。
そういう時代設定だけに、最初のうちはけっこう違和感を抱きつつ読んでいくのだけど、第三幕・第四幕はまさに息もつかせぬという感じ。少女たちも、最初は悪戯心だったり計算高い部分があったのだろうけど、第三幕後半のあたりになると、自己暗示にかかって、本当に「悪魔」を見ていると信じ込んでしまう集団錯乱に陥っているようだ。舞台で観たらけっこう怖いと思う…。
『セールスマンの死』に続いて、アーサー・ミラーは2作目。リアリズム演劇と呼んでいいのかどうか自信がないけど、こういう作風というのは、日本の作家だと誰あたりになるのだろう。清水邦夫とか? ハヤカワ演劇文庫にはいろんな作家が収録されているみたいだから、機会を見つけて読んでみよう。