ダシール・ハメット『血の収穫』(田口俊樹・訳、創元推理文庫)

義妹のパートナーのFacebook投稿に「椿三十郎」への言及があり、そこから芋づる式に辿っていって、そういえば有名な作品なのに読んでいなかった、とこれを手に取る。

新訳なのに「おまえさん」などという二人称が出てきて、今どきそれはないだろうと思ったけど、考えてみたら、この作品の舞台となっている時代だったら、日本でもそういう言葉を使う人はいくらでもいたはずで、その意味では、新訳だろうと今どきの言葉遣いにする必要は必ずしもないのである。

そういえば、この本を読む前にYouTubeで『用心棒』や『椿三十郎』のシーンなどを少し観ていたのだけど、どうも雰囲気がそのあたりの三船敏郎に似ている知人がいて、その知人だったら「おまえさん」という二人称を使っていても不思議はない気がしてきた…。

ま、そういう細かい点は措くとして、作品自体はどうかというと、登場人物一覧には名が挙がっているのに、ろくに登場することなく殺されてしまう領袖がいたり、ちょっと対立関係をややこしくしすぎているような印象もある。銃撃戦が多い分、策略の部分が弱い。そのへんのバランスが、『用心棒』では絶妙だった気がするのだが。

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