『教科書名短編・科学随筆集』(中公文庫)

たぶん中学の国語の教科書だったと思うのだが、桜の花や松の葉が風もないのに音もなく散る情景から書き起こす随筆を読んだ記憶があって、最終的に何を言わんとする文章だったかも、表題も、著者の名前すらも覚えていない。

先日、まさに松の葉が音もなく散り落ちる様子を目の当たりにして、そんな文章があったことを思い出し、また読みたいと思ったのだが、そんなわけで探し当てられない。一つ年上で同じ中学に通っていた姉に聞いてみたのだが(そもそも姉が気に入っていた文章だったように思う)、確かにそういう作品があったことは覚えているが、やはり著者の名は覚えていないという。今も電話をする仲だという当時の国語教師にも問い合わせてくれたのだが、やはり分からない。

私は、詩人・歌人の筆になるものだと記憶していたのだが(すぐに浮かんだ名前は大岡信)、姉は、ひょっとしたら科学者による随筆だったかもしれない、と言う。

という経緯で読んでみたのが、この本(前置きが長い)。

残念ながら探していた作品はこの中には見当たらなかった。とはいえ、科学者による随筆といえばまずこの人、と名の挙がる寺田寅彦に始まり、中谷宇吉郎、湯川秀樹、岡潔以下、錚々たる顔ぶれによる名作揃い。特に中谷宇吉郎の数篇が良かったように思う。中学校の国語の教科書に収録されたものなので、どれも難解というほどではないが、しかし、このあたりをさらさらと読める中学生はなかなかいないのではないか。

 

※ そして巻末の既刊紹介の広告ページを見ていて、ふと、そうか、ドナルド・キーンの文章という可能性もあるかな、などと思いついてしまった。

 

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